自転車のフレーム(骨組)は、軽量化のために管(パイプまたはチューブと呼ばれることもある)又はモノコックとして作られている。
自転車の種類に対応じたフレームがあるので、フレームの種類は多種多様であるが、主なものとしてはロード車フレーム及びマウンテンバイクフレームがある。
注文フレームは、フレームの種類、管の種類、フレーム寸法および塗装色などを客の仕様に合わせて作る。カスタムフレームとも呼ばれる。
参考資料 「自転車の種類」
部材(自転車のフレームの部材は管)を組み合わせて構造物を作る場合、その基本構造を三角形とすると、構造物の強度が大きくなることは良く知られている。
自転車のフレームもこの原理に準拠している。
すなわち、前三角と後三角の2つの三角形で構成されている。
前三角を構成している管は、頭管(ヘッドチューブ)、上管(トップチューブ)、下管(ダウンチューブ)および立管(シートチューブ)の4本であり、厳密には四角形であるが、頭管は短管で肉厚が大きいため構造上は三角形と見なしてよい。上管は頭管と立管の上部を連結している。
下管は頭管の下部とボトムブラケットシェル(底ブラケットシェル、BBシェル)を連結している。
後三角を構成している管は、立管、シートステイおよびチェーンステイと呼ばれる管である。立管は前三角と共用となっている。
シートステイおよびチェーンステイは後輪取り付け上、それぞれ左右一対の2本構成となっている。
前三角と後三角を合わせると、その形状は菱(ダイヤモンド)形となるので、菱形フレームまたはダイヤモンドフレームと呼ばれ、強い構造体であるという意味合いがある。
シティサイクル(ママチャリ)は、女性が上管をまたいで乗れるよう上管を立管に向かって下げてあるので、前三角が三角形の形状をしておらず構造的には弱い。
そのため太めで肉厚の厚い管を使う必要があり重くなる。
シートステイ上部においてシートステイを連結している管または平板などの部品。その目的は(1)後輪を外したとき、タイヤが上部の狭いシートステイ間に挟まれないようにするため、(2)横方向およびねじれに対する補強並びに剛性の向上のため、(3)泥よけまたは後輪キャリパーブレーキの固定具として。
なおブレーキはシートステイに固定する方式もある。ブレーキブリッジまたは上ブリッジとも言う。 一般に、後輪軸芯から上ブリッジまでの距離は、後輪軸芯下からチェーンステイブリッジまでの距離に等しい。これは、タイヤと上下のブリッジのすき間を等しくするため。
泥よけ取り付けおよび補強のために、チェーンステイ前方において左右のチェーンステイを連結している管または平板などの部品。
タイヤ交換時に、タイヤが左右のチェーンステイ間に不注意に挟まれないようにする機能もある。下ブリッジとも言う。
一般に、後輪軸芯から下ブリッジまでの距離は、後輪軸芯下から上ブリッジ(シートステイブリッジ)までの距離に等しい。
これは、タイヤと上下のブリッジのすき間を等しくするため。チェーンステイブリッジ が付いていないフレームもある。
ボトルケージを取り付けるためのダボをフレームに付けている自転車がある。
ダボは、溶接又はろう付けによって取り付けた座(5mmの雌ねじ付きが多い)。
取り付け位置は、下管の上(1)、立管の前方(2)及び下管の下(3)(右図)。
2個の場合(デュアルケージ)は(1)及び(2)そして3個の場合は(1)、(2)及び(3)であることが多い。
ダボは、ブレーズオンともいう。
広義には、フォークを含めてフレームと呼ぶことがあるが、フレームとフォークを合わせたものはフレームセットと呼ばれる。
フレームの中に変速アウター(及びロープ)又はブレーキアウター(及びロープ)を通すこと。右図のアウターの入口及び出口位置は一例。
美観のために行われるが、フレームの外をロープ(ケーブル)を通すのに比べて、アウターの質量が大きくなりかつロープ摩擦が大きくなる。
ロープ又はアウターの交換などの整備もやりにくい。
アウターを交換するには、ロープはフレームに残したままアウターだけを引き抜く。残したロープに新しいアウターを通す。ロープも交換する場合は、古いロープを抜き新しいロープを通す。
インターナルケーブルルーティングともいう。
伝統的なロード車の上管(トップチューブ)は水平であるのに対し、立管(シートチューブ)を短くして上管を頭管から立管に向かって下方に傾斜させたフレーム(右図の赤色)。
フレームを上から押しつぶしたような形でコンパクトとなっている。
立管、上管およびチェーンステイが短くなるので、少し軽くなりかつメーカーは少ないフレームサイズで多くの身長の人に対応できる。
一方、サドル支柱が長くなるため、剛性が低下する。空気抵抗上の利点はない。
管を組み合わせて作るのではなく殻構造とした一体構造フレームは、モノコックフレームと呼ばれる。殻で全て又は大部分の荷重を受ける。タイムトライアルバイクなどに使われることがある。
炭素背繊維強化樹脂(CFRP)などで一体成型している。モノ(mono)は1そしてコック(coque)は殻の意味。軽量かつ空気抵抗の小さいフレームを作ることができるが、菱形フレームでないと、国際競技には出らでない(UCIの規定)。
上管(トップチューブ)が後下がりの2本の細い管でできており、頭管(ヘッドチューブ)の上部に連結して、さらに立管(シートチューブ)中間の両横に連結後、
チェーンステイ後端の後つめまで達しているフレーム。
一般の自転車のステイ(ステー)は、シートステイおよびチェーンステイであるが、
ミキストは上管と一体になった第3のステイが追加された形となっているので強度はある。上管高さ(スタンドオーバー)はやや低い。
外装変速機の付いた形もある。
米国では主にシティ車として使われる女性用の自転車とされているが、仏語のmixte(ミクストと発音する)は、男女共用という意味。
自転車は男性が乗るものとして作られていたので、男女共用とは女性用という意味でもある。欧州では男女共に使っている。日本では女性が町中で乗っているのを稀に見かける。
英語の発音はスタガード。
スタガーは、食い違い、千鳥配置またはジグザグ配置などの意味。
上管(トップチューブ)を立管(シートチューブ)の中間部あるいはそれより下に付けたフレーム。
女性などが上管をまたいで乗れるようにしたもの。
シティ車の多くは、このフレーム形式。
菱形フレームより強度および剛性で不利。
菱形フレームと同等の強度と剛性を持たせようとすると、管を太くするかまたは肉厚を大きくしなければならず、質量が大きくなる。
頭管(ヘッドチューブ)から上下2本の
上管(トップチューブ)が出ているフレーム構造。
一般の菱形フレームの上管の下にもう1本の上管がある。
頭管は幾分長くなっている。
下側の上管を下管(ダウンチューブ)に付けた形もある。
レトロな構造となっている。
左右のシートステイが立管(シートチューブ)を挟んで
上管(トップチューブ)後部まで伸びたフレーム。
シートステイ、上管および立管で形作られた第3(トリプル)の小さな三角形ができている。
フレームの剛性および強度を上げる意図があるが、質量はやや大きくなる。
輪行、運搬又は保管などのために、分割できるようにしたフレーム。一例は、BTCと言う管継手を使う方法がある。
継手はフレームの上管および下管の後部にラグと同じ要領でロウ付けして取り付け、前三角と後三角を分離して小さくする。
前三角と後三角の共通の管である立管の長さ(立管長)は、フレームの大きさを代表しており、その長さはフレームサイズと呼ばれる。具体的には、メーカーによって次の三つのフレームサイズが使われているが、そのうちのC-T(センターからトップまで)を単にフレームサイズと呼ぶことが多い。
- フレームサイズ(C-T)
ボトムブラケット芯から立管の上端までの距離。Tはトップの意味。測定しやすいので、よく使われるが、次の(C-C)では同じ寸法でも、立管が上管からどれだけ突出しているかによって数値が変わる。
- フレームサイズ(C-C)
ボトムブラケット芯から立管中心線と上管中心線の交点までの距離。Cはセンターの意味。
- フレームサイズ(C-TT)
ボトムブラケット芯から立管と上管上端の交点までの距離。TTは上管上部の意味。この寸法を使っているメーカーは少ない。
身体サイズに合ったフレームサイズの自転車を選定することが望ましい。同一の身体でも自転車の使用目的によって、適したフレームサイズは異なってくる。
メーカーは1つの形の自転車に対し、4~7種類のフレームサイズをそろえている。そして、平均身長の人がほぼ中央のフレームサイズとなるようにしている。
なお、日本人の青年の平均身長は、男子が約171cmそして女子が約158cm。一方、欧米人の平均身長は男性が約178cmそして女性が約163cm。
頭管および立管は、垂直線に対してそれぞれ傾いている。
- 頭管の傾き
自転車が安定走行できるためには、50~75 mmのトレイルが必要となる。適切なトレイルががあると、車輪は進行方向へ向こうとする。頭管を傾けることによって
トレイルを作り出すことができる。頭管の中心線が水平と作る角度はヘッド角またはキャスター角と言い、60~75度とするとトレイルが得られる。
参考資料 「フォーク及びトレイル」
- 立管の傾き
立管が垂直だと、底ブラケットまたはクランク軸、従ってペダルがサドルの真下に来て、ペダルを効率よく漕ぐ事が出来ない。
立管を傾けることにより、ペダルがサドルの前方へ移動して、効率よく漕ぐ事が出来る。
|
 |
|
シート角 |
立管の中心線が水平と作る角度は、シート角または立管角と言う。
フレームサイズにもよるが、シート角が1°きつく(大きく)なると、ペダル位置は
約10mm後方へ移動する。逆に、シート角が1°ゆるく(小さく)なると、ペダル位置は約10mm前方へ移動する。
結合ペダルまたはトウクリップ付きのペダルは、ペダルの戻り工程においても力をペダルに加えるので、サドルとペダルの水平距離が短い(シート角がきつい)方が、
戻り工程での力の伝達効率が高い。一方、SPDやトウクリップの無いペダルに対しては、シート角が緩やかな方が力の伝達効率は高い。
シート角計算器におけるセットバック(サドル後退)は、例えば次のようにして測定する。
フレームサイズの上端に下げ振りの糸を固定する。BB(底ブラケット)芯(クランク軸心)と糸の水平距離を測る。
表1 フレームに使われる材料の特性
材料 |
引張強さ
[MPa] |
縦弾性係数
[GPa] |
密度
[kg/m3] |
縦弾性係数/引張強さ
[-] |
縦弾性係数/密度
[MPam3/kg] |
引張強さ/密度
[MPam3/kg] |
耐食性 |
低炭素鋼 |
510 |
206 |
7,800 |
404 |
26.4 |
0.065 |
不可 |
高張力鋼 |
860 |
203 |
7,800 |
236 |
26.0 |
0.110 |
不可 |
クロムモリブデン鋼 |
980 |
206 |
7,800 |
210 |
26.4 |
0.125 |
不可 |
アルミ合金 |
570 |
73 |
2,700 |
128 |
27.0 |
0.211 |
可 |
マグネシウム合金 |
280 |
45 |
1,800 |
161 |
25.0 |
0.156 |
優 |
スカンジウム合金 |
730 |
74 |
2,800 |
101 |
26.4 |
0.261 |
優 |
チタン合金 |
950 |
110 |
4,400 |
116 |
25.0 |
0.216 |
優 |
炭素繊維強化樹脂 |
900 |
120 |
1,400 |
133 |
85.7 |
0.643 |
優 |
- 特性
材料上、重要な特性は強度の指標となる引張り強さ、剛性の指標となる縦弾性係数、軽さの指標となる密度および耐疲労性の指標となる疲労限度および耐食性など。
これらの具体的な数値を表1に示す。耐食性に劣る管は塗装によって保護する。
- 引張強さ
引張強さを見ると、クロムモリブデン鋼が最も大きい。
チタン合金および炭素繊維強化樹脂も比較的に強度が高い。クロムモリブデン鋼と比較すると、低炭素鋼の強度は約1/2そしてアルミ合金の強度は60%程度である。
材料の強度が大きいと、肉厚を薄くしても管としての強度は得られるため、軽いフレームを作ることが出来る。
フレームを構成する管には曲げ荷重が働くので、曲げに対する強度が重要となる。管の曲げ強度は材質だけでは決まらず、管の外径および肉厚も影響する。
- 縦弾性係数
縦弾性係数を見ると、低炭素鋼、高張力鋼およびクロムモリブデン鋼はほぼ等しく、かつ他の材料より大きい。すなわち、これらの鋼材は剛性が高い。
チタン合金は炭素鋼の1/2強、アルミ合金は炭素鋼の1/3強そして炭素繊維強化樹脂(CFRP)は炭素鋼の約60%でチタンよりやや大きい。
つまり、アルミ合金は剛性が非常に小さい。アルミフレームの剛性を高めるには、管を太くする必要がある。
- 密度
密度を見ると、低炭素鋼、高張力鋼およびクロムモリブデン鋼は等しくかつ大きい。これらの鋼材と密度を比較すると、炭素繊維強化樹脂(CFRP)は1/6強、マグネシウム合金は約1/4、アルミ合金およびスカンジウム合金(スカンジウムアルミ合金)は約1/3そしてチタン合金は1/2強と軽い。
特に、炭素繊維強化樹脂は軽量化のために導入されたが、欠点は高価なこと。価格に見合うだけ軽量化されているかは、購入する人の価値観で判断する。
- 縦弾性係数/密度比
縦弾性係数と密度の比(縦弾性係数/密度)を見ると、炭素繊維強化樹脂を除いてほぼ一定の値となっている。これは密度が大きいと縦弾性係数も大きいことを示している。
- 引張強さ/密度比
引張強さと密度の比(引張強さ/密度)が大きいと軽くかつ強度が大きいこととなる。炭素繊維強化樹脂が最も大きく、アルミ合金とチタン合金がほぼ等しい。
参考資料 「管の曲げ強度比 計算器」、 「フレーム管の剛性」
フレームを構成する管を結合する方法としては、ラグ式、溶接式、ラグ・溶接併用式および一体構造(殻構造)式がある。
- ラグ式
ラグと呼ばれる継手で管と管を結合する方式。ラグで結合したフレームはラグフレームと呼ばれる。
ラグに管を差込み、そのすき間をロウ付けして固定する。
フレームにおいて大きな力の働く管端をラグで補強できるので、薄肉管を使うことができて軽くなる。溶接より耐疲労性に優れる。溶接の熱ひずみが無い。
右図のAは頭管上ラグ(頭管と上管を連結)、Bは頭管下ラグ(頭管と下管を連結)そしてCは立管ラグ(立管、下管及びチェーンステイを連結)。
炭素繊維強化樹脂(CFRP)製の管に対するラグは、同じく炭素繊維強化樹脂製を使い、強力な接着剤で固定する。
アルミ合金及びチタン合金はクロモリ鋼などに比べてロウ付けが難しいので、これらの材質の管に対するラグフレームは一般には作られていない。
- 溶接式
管と管を溶接で結合する方式。溶接で作ったフレームは溶接フレームと呼ばれる。ラグを使わないフレームという意味で、ラグレスフレームとも呼ばれる。
溶接技術の進歩および経済性(安価)のため、1981年頃から市場に出始めた。 1990年代に入って、ラグの伝統のないマウンテンバイクが安価な溶接技術を採用し、ロード車にも使われるようになった。
溶接の設計および施工が適切でないと、溶接箇所の強度が弱いフレームができる。
アルミ合金管は溶接による熱ひずみが問題になるので、溶接アルミフレームは、溶接による残留応力を除去するため、かつ強度特性を向上させるため、
熱処理をするのが一般的。具体的には、加熱炉で535゛C 前後に加熱後、液体冷却槽に入れて冷却する。熱処理をしないと、溶接箇所で破損する危険がある。
- ラグ・溶接併用式
ラグ結合と溶接結合を併用した方式。
- 一体構造式
炭素繊維強化樹脂を使って一体構造(モノコック)として作る方式。フレームの大きさの生産設備が必要になるので、生産原価が高くなる。
フレームを構成する管は大きく分けて、プレーン管およびバテッド管に分かれる。フレームを構成している管はその端部(結合部)に最も大きな力が働く。そこで、端部の肉厚はそのままとし、それ以外の肉厚は薄くして軽量化を計った管はバテッド管と呼ばれる。
バテッド管には片バテッド管、両バテッド管および三段バテッド管がある。
バテッド管は内部で肉厚が変化しているので、外観からは分からない。バテッド管は価格が高いので、使っておればメーカーは仕様に記載している。
管長に渡って肉厚が等しい管。価格は相対的に安く、最も一般的に使われている。
管の一端のみ肉厚を厚くした管。
ダブルバテッド管とも呼ばれる。中間部よりも両端の肉厚を厚くした管。端部肉厚は0.9~2.8mmそして中間部肉厚は
0.5~1.6mm。
管内面で肉厚を大きくした内バテッド管および管外面で肉厚を大きくした外バテッド管がある。
内バテッド管は段付き部が内部にあるので、外観はすっきりしている。
外バテッド管は同じ強度で軽く(肉厚を薄く)できるが生産原価は高くなる。
両バテッド管は両端の肉厚は等しく、中間部の肉厚t0が薄いが、三段バテッド管は両端の肉厚(図のt1およびt2)が異なるため3種類の肉厚となっている。
フレームの上管(トップチューブ)および下管(ダウンチューブ)に使われる。
断面が楕円形の管。剛性および強度は、長径方向に大きいが短径方向には小さい。マウンテンバイクなどのフレームに使われる。
|
A:有効上管長 |
B:頭管長 |
C:ホイールベース |
D:BB下がり |
E:チェーンステイ長 |
F:フレームサイズ(C-T) |
G:フレームサイズ(C-C) |
寸法図 |
H:フロントセンター |
|
h:ヘッド角 |
|
i:シート角 |
寸法図はフレームの部材を太い線などで書いて、フレームの各部の長さ、高さ及び角度を記入した図面。
ジオメトリー(幾何図形)又はスケルトン(骨格)ともいう。フレームの基本設計に使う。
まともな自転車なら、メーカーのカタログおよびホームページに記載されている。
長さとしては、頭管長、上管長、立管長、フロントセンター(前中距離)、リアセンター(チェーンステイ長)、ホイールベース(車軸間距離)およびフォークオフセットなど。
高さとしては、上管高さ、ボトムブラケット(BB)高さおよびBB下がりなど。角度としては、ヘッド角(頭管角)およびシート角(立管角)など。
右図は、フレーム寸法図の一例。記号に対応する寸法はメーカーのカタログの表に記載されている。寸法図によって自分に合う自転車かどうか判断する。
フレームの前端にある頭管の長さは頭管長と呼ぶ。一般にはヘッドセットの高さを含まない。
頭管長が長いと、フォーク操縦管を支持する上下の軸受(ヘッドセット)の間隔が大きくなり、フォークを安定して支持することができる。
各メーカーの寸法図の頭管長のデータを打点したグラフを右図に示す。グラフの横軸はフレームサイズそして縦軸は頭管長としてある。グラフの黒点はロード車、緑点はクロスバイクそして赤点はマウンテンバイク(MTB)を示す。
同図を見ると、フレームサイズが50cmまでは頭管長とフレームサイズはあまり比例していないが、50cmを超えると頭管長はフレームサイズに比例した長さとなっている。
頭管長の平均はロード車が約150mm、クロスバイクが約145mmそしてマウンテンバイクが約130mmとなっている。クロスバイクの頭管長はロード車とマウンテンバイクのほぼ中間的な値となっている。
立管長は上管高さ、ボトムブラケット高さおよび立管角によって決まる。マウンテンバイクは股下と上管の隙間(股すきま)および
ボトムブラケット高さを大きく取るので、立管長はロード車より短くなる。立管長(C-T)は、ロード車で400~650mmそしてマウンテンバイクで400~560mm。
立管径は25.4mm(1)、28.6mm(1.125)、31.8mm(1.25)および34.9mm(1.375)の4種類がある(括弧内はインチ呼び)。
このうち、28.6mmおよび31.8mmが一般的である。これらの外径は、塗装前の外径であるから現実の外径は塗装厚さだけ厚くなっている。
立管の外径は紙を立管に巻きつけてその長さを測り3.14で割ると得られる。立管径は、バンド(クランプ)式ディレイラーのクランプ内径と関係する。
上管長は、上管中心線が頭管中心線および立管中心線と交わる交点間の距離。実際上管長とも言う。
有効上管長は、頭管中心線と傾斜上管中心線との交点から水平に引いた線とサドル支柱中心線の交点間の水平距離。有効上管長は乗車姿勢に影響する。
有効上管長は、傾斜上管フレームまたはコンパクトフレームの上管長(有効)と伝統的な水平上管フレームの実際上管長とを比較するために使われる。
一般に、傾斜上管の有効上管長はその実際上管長より長い。
水平上管の有効上管長はその実際上管長と等しい。有効上管長は乗車姿勢に影響する。
メーカーの寸法図のデータを使って、有効上管長を打点したグラフを右図に示す。横軸はフレームサイズそして縦軸は有効上管長としてある。
赤点はマウンテンバイク(MTB)、緑点はクロスバイク、青点は傾斜上管のロード車そして黒点は水平上管のロード車を表している。
有効上管長の平均はマウンテンバイクが約590mm、クロスバイクが約570mmそしてロード車の傾斜上管および水平上管いずれも約550mmとなっている。
グラフにおいて黄色の斜め45°の直線上に乗っている点のフレームは、フレームサイズと有効上管長が等しい一般的なフレームである。この黄色の直線より上方の点(フレーム)は、
フレームサイズよりも有効上管長が長い。一方、黄色の直線の下方の点のフレームは、フレームサイズより有効上管長が短い。
フレームサイズが大きくなると、有効上管長は長くなる傾向が見られる。このフレームサイズに比例させて上管を長くするというやり方は、1980年代初期に米国に輸出を始めた日本のメーカーの方式で、
それまでの米国メーカーはフレームサイズにかかわらず上管長は変えず、ステムの突出しを変えて対応していたと言われる。
ドロップハンドルのロード車に関し、有効上管長はフレームサイズの何倍になっているかを調べるため、
(上管長/フレームサイズ)比を計算して打点したグラフを右に示す。 縦軸は(上管長/フレームサイズ)比そして横軸はフレームサイズを表している。 グラフおよび以下において上管長は有効上管長のことである。点の色はメーカーを示している。すなわち、Ca、Co、De、Fu、KlおよびTrは何れもメーカー名の最初の2文字を表している。
(上管長/フレームサイズ)=1ということは、上管長はフレームサイズと等しい長さであることを示している。グラフを見るとフレームサイズ約55cmにおいて、上管長はフレームサイズと等しい。
フレームサイズ55cm以下においては、(上管長/フレームサイズ)比は1を越えている。すなわち、上管長はフレームサイズよりも長い。
一方、フレームサイズが55cmを超えると、(上管長/フレームサイズ)比は 1未満である。すなわち上管長はフレームサイズよりも短い。
フレームサイズが55cmを超えても上管長をフレームサイズに比例させて長くすると、コクピット長が長くなって、前のめりで腕の伸びた乗車姿勢となる。
ハンドルの中心からサドル中心(サドル上面とサドル支柱中心線の交点)までの水平距離。主に有効上管長およびステム長で決まるが、ヘッド角およびシート角も少し影響する。
コクピット長は乗車姿勢に影響する。胴長および腕長の長い人は長いコクピット長が向いている。
同じ胴長の男女を比較すると女性は腕長が短いので、女性は男性に比べて短いコクピット長が向いている。
トライアスロン車のコクピット長は、ロード車よりも短い。なお、コクピットは飛行機などの操縦室のこと。
上管高さ
上管高さは、上管(トップチューブ)上面の地面からの高さ(右図)。
上管が傾斜している傾斜上管の高さ位置はメーカーによって異なり、次の2つの場合がある。
上管の前後方向の中央。
ボトムブラケット芯(クランク軸芯)の真上。
現実には上記2点の中間点あたりに立つことが多く、その場合の上記2点との高さの差は5mm程度。
各メーカーの寸法図のデータを使って、上管高さ(スタンドオーバー)を打点したグラフを右図に示す。
横軸はフレームサイズそして縦軸は上管高さとしてある。赤点はマウンテンバイク、緑点はクロスバイク、黒点は水平上管のロード車そして青点は傾斜上管のロード車を表している。
フレームサイズが大きくなると、上管高さが高くなる傾向が見られる。しかし、同じフレームサイズでも自転車種類およびメーカーによって、上管高さはばらついている。
上管高さの平均は、マウンテンバイクが約770mm、クロスバイクが約770mm、水平上管のロード車が約780mmそして傾斜上管のロード車が約770mmとなっている。
上管高さの平均は車種によらずほぼ等しいが、その平均が現れるフレームサイズを見ると、
マウンテンバイクでは約48cm、クロスバイクでは約51cm、傾斜上管のロード車では約53cmそして水平上管のロード車では約55cmと異なっている。
フレームサイズ、シート角、上管長、頭管長およびヘッド角により決まる。
チェーンステイ長はBB芯と後輪軸心の距離。後中距離(リアセンター)ともいう。後輪および泥よけが入る長さが必要。 パニアを乗せる旅行車は、チェーンステイが長いとかかと隙間が大きくなるので望ましい。
チェーンステイの傾き(水平との角度)は、チェーンステイ長、後輪外径およびボトムブラケット高さによって決まる。
次にチェーンステイ角度およびBB下がりの計算器を示す。 チェーンステイ角度はチェーンステイ中心線(底ブラケット芯と後輪軸心を結ぶ線)が水平線となす角度。
BB下がりはBB芯と前後輪の軸心を結ぶ直線との距離。BB下がりは60~70mmのものが多い。
参考資料 「チェーンステイ」(最短チェーンステイ長の計算など)
前輪軸心とボトムブラケット(BB)軸心との距離は前中距離(フロントセンター)と呼ばれる。前中距離には有効上管長が大きく影響する。その他、立管長、シート角、ヘッド角、フォークオフセットおよびBB下がりも影響する。
前中距離は所定のつま先すき間(89mm以上)が得られる寸法であることが望ましい。
ヘッド角が小さい場合およびシート角が大きい場合は前中距離は長くなる。
各メーカーの寸法図の前中距離のデータを打点したグラフを右図に示す。グラフの横軸はフレームサイズそして縦軸は前中距離としてある。グラフの黒点はロード車、緑点はクロスバイクそして赤点はマウンテンバイク(MTB)を示す。
フレームサイズが大きくなると、前中距離も大きくなる傾向が見られる。ただし、クロスバイクはデータ数が少ないため、その傾向が見られない。ロード車はばらつきが少ないが、マウンテンバイクは各種の用途があるため大きくばらついている。丘下り用などは前中距離が大きい。
前中距離の平均はロード車が約590mm、クロスバイクが約620mmそしてマウンテンバイクが約680mmとなっている。
クロスバイクはロード車とマウンテンバイクを合せた雑種自転車であるが、前中距離もそれらの中間的な値となっている。
前中距離の短いロード車のなかには、つま先すき間が小さいために、つま先が前輪タイヤに当たる機種があるから要注意。
参考資料 「つま先すき間」
シートステイ長はフレームサイズ、シート角およびチェーンステイ長で決まる。後輪および泥よけが入る長さが必要。
ボトムブラケット下がりは、前輪と後輪の軸心を結ぶ直線とボトムブラケット(BB)芯の距離。ボトムブラケット下がりはコーナリングにおいて、ペダルが地面に接触するときの傾き角に影響する。BB下がりとBB高さとの関係は、次式の通り。
BB高さ = タイヤ外径/2 - BB下がり
BB下がりが大きいということは、BB高さが低いということである。右図に車種による各社のBB下がりの違いを示す。車種名を付けた横線上の点は、その車種の各社のBB下がりを示している。例えば、マウンテンバイクは赤点で示しており、BB下がりはメーカーおよび機種によって大きくばらついている。
そして、岩などの地上の障害物にペダルが当たらないようにするためにBB下がりは負の値であるものもある。負の値はBB芯が前輪と後輪の軸心を結ぶ直線の上にあることを表している。負の記号をつけないで、ボトムブラケット上がり(BB上がり)と呼ばれることが多い。
ロード車(黒点)のBB下がりの平均は68mmとなっている。トライアスロン車(青点)はBB下がりが大きい。
ボトムブラケット高さは、路面からボトムブラケット(BB)芯までの距離(高さ)。コーナリングにおいて、ペダルが路面に接する自転車の傾きに影響する。
コーナリングのあるロードレース用自転車のボトムブラケット高さ(BB高さ)は、やや高めの275mm前後が多い。
一方、コーナリングのあまり無い、旅行、タイムトライアルおよびトライアスロン用などの自転車の底ブラケット高さは、やや低めの265mm前後が多い。
なお、曲がりすき間(コーナリングクリアランス)を確保するためのボトムブラケット高さを求める経験式は、次の通り。
ボトムブラケット高さ = 後輪外径/2 + クランク長 - 240
参考資料 「コーナリングの傾き」
サドルのセットバック(後退)はフレームサイズとシート角で決まる。セットバックは、サドルがボトムブラケット芯からどれだけ水平後方にあるかの指標となる。
次にセットバック計算器を示す。この計算器のセットバックは立管芯と上管芯の交点と底ブラケット芯間の水平距離(右図)。
表2 BBシェル幅およびねじ
シェル幅[mm] |
ねじ径 x ねじ山数/25.4mm |
左側 |
右側 |
規格 |
68 |
1.370 inch x 24山 |
右ねじ |
左ねじ |
ISO、JIS |
70 |
36 mm x 24山 |
右ねじ |
右ねじ |
イタリアン |
73 |
1.375 inch x 24山 |
右ねじ |
左ねじ |
オーバーサイズ |
主なBB(ボトムブラケット)シェル幅を表2に示す。
シート角は、立管(シートチューブ)が地面となす角度。この角度は幾何学上、立管が水平の上管となす角度と等しい。
シート角によって、クランク軸に対するサドルの前後位置関係が決まる。その関係は脚力が最も効率よくペダルに伝達される位置関係とする。緩やかなシート角はサドルを後方に移動させ、きついシート角はサドルを前方に移動させる。
フレームサイズにもよるが、シート角が1°きつく(大きく)なると、サドル位置は約10mm前へ移動する。逆に、シート角が1°ゆるく(小さく)なると、サドル位置は約10mm後へ移動する。
ロード車およびマウンテンバイク(MTB)に関し、各社の寸法図のシート角のデータを打点したグラフを上図に示す。あまり明確ではないが、フレームサイズが大きくなると、シート角が小さくなる傾向が見られる。
フレームサイズの大きい自転車には身長の大きい(足の長い)人が乗るため、シート角を小さくしてペダルを前に出す必要がある。
このデータではロード車のシート角は72~75°そしてMTBのシート角は72~74°である。シート角の平均はロード車が73.3°そしてMTBが73°である。
ヘッド角は、頭管(ヘッドチューブ)が水平と作る角度(右図)。 ヘッド角の起源は、路面の凹凸などからくる衝撃を緩和しようとしてフォークを傾けるために頭管を傾けたもの。
路面の突起の大きいオフロードを走るマウンテンはバイクは、小さいヘッド角を必要とする。ヘッド角はトレイル、前中距離(フロントセンター)、ホイールベース及びつま先接触に影響する。
ヘッド角を73°~75°にすると、路面からくる衝撃荷重の向きは操縦管の軸方向となる。従って、クラウンにおいてフォークブレードに働く曲げ応力は最小となる。
グラフの縦軸にシート角そして横軸にヘッド角を取って、各社の寸法図のデータを打点したグラフを右図に示す。青点はタイムトライアル(TT)車、黒点はロード車そして赤点はマウンテンバイク(MTB)を表している。
ヘッド角を見ると、ロード車は70°~74°、マウンテンバイク(MTB)は67°~74°そしてタイムトライアル(TT)車は71°~76°となっている。ロード車のヘッド角は73°が多い。
マウンテンバイクは用途が多いので、ヘッド角がばらついているが、71°が多い。
丘下り(ダウンヒル)用は、ヘッド角が小さい。タイムトライアル車のヘッド角はロード車のそれとほぼ等しい。
参考資料 「フレーム寸法記入表」
- 定義
前輪タイヤの接地面と後輪タイヤの接地面間の距離をホイールベースと言う。前輪と後輪の大きさが等しい場合は、前輪軸芯と後輪軸芯の距離(軸間距離)に等しい。
フレームの形状、寸法によってホイールベースが決まる。
- 特性
ホイールベースが大きい方が、乗り心地および走行安定性が良い。
そのため、サイクリングや旅行に使う自転車は、ホイールベースが大きいほうがよい。
次の場合にはホイールべースは長くなる。ヘッド角が緩やか(小さい)、上管が長いそしてチェーンステイが長い場合。
- 実例
各メーカーの寸法図のデータを使ってホイールベースを打点したグラフを右に示す。縦軸はフレームサイズで、横軸のフレームサイズ(C-T)に対応させて打点してある。赤色の点はマウンテンバイク(MTB)、黄色の点は旅行車(ツアーリングバイク)、青色の点はシティ車、緑色の点はクロスバイク(ハイブリッドバイク)そして黒色の点はロード車を示す。
同一フレームサイズでもホイールベースはメーカーによって異なっている。
フレームサイズが大きいほどホイールベースも大きい傾向にある。ロード車よりもマウンテンバイク、旅行車、クロスバイクおよびシティ車のホイールベースが大きくなっている。
- 平均
打点したメーカーの範囲に限れば、平均的なホイールベースは、マウンテンバイクでは約1,100mm、旅行車では約1,080mm、シティ車では約1,060mm、クロスバイクでは約1,050mmそしてロード車では約980mmとなっている。
ロード車のホイールベースが短いのは主に軽量化のため。クロスバイクはマウンテンバイクとロード車の特徴をあわせ持つ自転車であるが、ホイールベースもそれぞれの値を足して2で割ったような値になっている。
チェーンステイの後端には車軸を取り付けるためのつめ(爪)と呼ばれる金属製の板が付いている。つめには車軸が入るよう、かつチェーンを外さずに車輪を外せるようによう切込み(溝)がある。
つめには垂直つめ及び水平つめがある。水平つめには、正つめ及び逆つめがある。つめはドロップアウトとも呼ばれる。
- 垂直つめ
後輪軸が付くつめの切り込みが垂直または垂直に近い形。車軸を前後に動かしてチェーンの張りを調節できないので、ディレイラー付の自転車に使われる。
車軸位置が確定しているので車輪の取付けは行いやすい。右つめにディレイラーを付けるハンガーが付いている。独立のハンガーをボルトで固定する形もある。立つめとも呼ばれる。
車軸のクイックリリースを使うことができる。
- 正つめ
後輪軸が付くつめの切り込みが水平または水平に近い形でつめの開口が後方に向いている形。車軸を前後に動かしてチェーンの張りを調節できる。ディレイラーの付いていない自転車に必要。ディレイラーハンガーは付いていない。
一般に、チェーン引きが付く。シティ車、内装変速機付き及び単速の自転車に使われる。トラックエンドも正つめの一種。
後輪を外すためには、ナットを緩めて車軸を前方に押すことによってチェーンの弛みを作り、後輪スプロケットからチェーンを外す。
逆つめ
後輪車軸を取付けるための開口部が水平または水平に近いく前方に向いているつめ。車軸を前後に動かしてチェーンの張りを調節できる。右写真はディレイラーを付けるハンガーが付いている。
車軸のクイックリリースを使うことができる。
表3 車種および変速段数に対応したロックナット間距離(OLD)
ロックナット間距離[mm] |
ロード |
オフロード及び旅行用 |
トラック等 |
タンデム |
110 |
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|
1速 |
|
120 |
5速 |
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126 |
6速、7速 |
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130 |
8速、9速、10速 |
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|
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135 |
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8速、9速 |
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|
145 |
|
|
|
8速、9速 |
- エンド幅
チェーンステイの左右の爪(フォークエンド)の内幅をエンド幅という。エンド幅は装着する車軸のロックナット間距離(OLD)に合わせる。
- ロックナット間距離
 |
ロックナット間距離 |
ハブ軸の左右のロックナット外面間の距離。後輪スプロケット(カセットスプロケット)の個数(段数)が多いとロックナット間距離は大きくなる。
クイックリリースレバーの付いた車軸に対しては、
エンド幅 = ロックナット間距離 + 1~2mm とする。
後輪のロックナット間距離を表3に示す。後輪中心部を後ろから見た時、スポークが作る三角形の底辺の長さ(ハブフランジ幅)が大きいほど、車輪の強度は大きくなる。
この三角形の斜辺であるスポークが垂直に近いと、強度が弱いことは想像できる。
- 車種とロックナット間距離
表3を見ると、車輪に大きな荷重がかかる車種は、 ハブフランジ幅(従ってロックナット間距離)が大きくなっていることが分かる。
オフロードの悪路を走るマウンテンバイクは、ロード系よりも大きな衝撃力が車輪に働く。旅行の荷物を積んだ旅行車も車輪に大きな荷重が働く。
2人が乗るタンデム車は、ロード系に比べて車輪に2倍の荷重が働く。ロックナット間距離が大きくなると、Qファクターは不利になる。
フレームを構成する各管に働く応力を、定速走行、登坂およびブレーキ掛けの場合について右図に示す。
それぞれの場合について、各管に働く応力の割合[%]で示してある。 例えば、定速走行の場合を見ると上管に最も大きな応力が働き次に立管に大きな応力が働いている。
登坂の場合は、下管に最も大きな応力が働き、次に立管に大きな大きな応力が働いている。ブレーキ掛けの場合の応力は、下管が最も大きく次に上管が大きい。いずれの場合も、シートステイに働く応力は小さいので、シートステイ管は細くてよい。
上管及び下管は頭管と連結しており、頭管にはいずれの場合にも大きな応力が働くことを示している。
表4 フームの耐振性試験条件 (JIS D9401)
車種 |
フレームの種類 |
荷重 (重り質量[kg]) |
振動数
[Hz] |
加速度
[m/s2] |
加振回数
[回] |
ヘッド部 |
シート部 |
ハンガー部 |
合計 |
一般用自転車 |
菱形 |
5 |
50 |
20 |
75 |
5~12 |
19.6 |
100,000 |
その他 |
5 |
45 |
15 |
65 |
5~12 |
17.6 |
70,000 |
マウンテンバイク類形車 |
菱形 |
10 |
50 |
25 |
85 |
5~12 |
22.0 |
150,000 |
JIS D9401(自転車-フレーム)に規定するフレームの耐振性試験条件を表4に示す。一般用自転車には、スポーツ車およびシティ車が含まれる。
同表の試験条件で垂直な上下振動を与えたときに、フレームの各部に破損、著しい変形又はゆがみを生じてはならない。
前後ハブ軸の位置が水平になるように、振動試験機に取り付ける。後ハブ軸は回転できるように固定し、前ハブ軸を上下に加振する。前ハブ軸は前後方向に自由に移動できるように保持する。
 |
 |
 |
荷重落下衝撃試験 |
エネルギー吸収性試験 |
耐前倒し衝撃試験 |
JIS D9401(自転車-フレーム)に規定する衝撃試験を以下に示す。
- 荷重落下衝撃試験
フォークエンドに外径55mm質量1kg以下のローラーを取付ける。ローラーがチェーチンステイエンドの真上に来るようにフレームを垂直に立て、チェーンステイエンドを固定する。
質量22.5kgのおもりを180mmの高さからローラーに落下させたとき、車軸間距離の永久変形寸法が40mm以下で、かつ、フレーム各部に破損を生じてはならない。
- エネルギー吸収性試験
1kg以下の軽量ローラーをフォークに取り付け、固定台に後車軸で固定し垂直に立て後車軸方向に負荷を加えて40J(ジュール)のエネルギーを吸収させ、
試験前後の車軸間距離を測定し、永久変形寸法を求める。
- 耐前倒し衝撃試験
フオークエンドにローラーを取付けたフレームが後車軸を中心にして、鉛直面内で回転できるように取付台に装着する。
質量70kgで支持管の付いたおもりを、その重心位置が立管上端から立管中心線の延長線上75mmになるように立管に差し込んで固定する。
ローラー高さが300mmとなるまでフレームを引き起こし、金床上に2回繰返し落下させたとき、各部に破損を生じてはならない。
概要
フレームのさび止め及び美観を目的として塗装する。炭素繊維強化樹脂(CFRP)フレームは、日光の紫外線による劣化を防止するための塗装をすることが多い。
塗装には液体塗装および粉体塗装がある。
液体塗装
液体塗装はスプレーガンで塗料を吹き付ける。ガンには圧縮空気のホースを接続し、塗料を噴霧する。
液体塗装は一般に、下地処理、下塗り及び上塗りで構成される。
- 下地処理
油脂および錆びなどの除去並びに下塗り塗料との密着性の向上を目的として、サンドブラストなどにより下地処理を行う。
- 下塗り
上塗り塗料は金属との密着性が悪いので、金属との密着性を良くした下塗り塗料(俗にさび止め塗料と呼ばれることがある)を2回(2層)塗る。
- 上塗り
上塗り塗料を2~4層塗る。上塗り塗料は金属との密着性は良くないが、下塗り塗料との密着性は良い。より光沢を出したい場合は、その上に透明塗料を2層塗る。塗装による自転車質量の増加は、塗膜の厚さにもよるが、80~150グラムである。
粉体塗装
粉体塗装は、静電ガン(右図、電圧30~90kV)で、樹脂(エポキシまたはポリエステルなど)および着色のための顔料の微細な混合粉体に静電気を与え、地面にアースを取ったフレームに噴射すると、静電気の作用で全面に付着する。
加熱炉に入れて約200°Cで約10分間加熱すると、樹脂粉体は溶けてフレームの表面に均一に付着する。膜厚は50~80µmとなる。液体塗装に比べて、硬くかつ剥離しにくい。
塗装の規定
JIS D9401(自転車-フレーム)にある塗装の規定を次に示す。
- JIS D0202の規定によって、芯の種類Fの鉛筆を用いて鉛筆引っかき試験を行ったとき、試験面の塗膜に破れを生じてはならない。
- JIS B1501に規定する呼び1/2の鋼球を1,500mmの高さから塗膜表面に垂直に落としたとき、その衝撃面に、はく離、ひび割れなどを生じてはならない。
タイヤとフレームなどとの間のすき間。具体的には、次のような部分にすき間がある。
(1) フォークのブレード及びクラウン(又は泥よけ)(フォークすき間)。
(2) チェーンステイ及びチェーンステイブリッジ(又は泥よけ)。
(3) シートステイ及びシートステイブリッジ(又は泥よけ)。
(4) 立管(シートチューブ)。
現在より太いタイヤと交換する時は、タイヤすき間があるか検討する。
オフロードを走るマウンテンバイク及びサイクロクロスバイクの中には泥詰まりを起こさないよう、タイヤすき間を大きくしている形がある。
フレーム質量は自転車の質量に大きく影響する。自転車質量が小さいほど、軽く早く走ることができる。しかし質量を小さくするほど高価になり、効果費用比は悪化する。
軽量化しても、強度、剛性および耐久性は確保しなければならない。その程度は自転車の用途(競技、サイクリング、通勤および旅行など)によって異なる。
UCI は、それが公認するロード(ツール・ド・フランスなど)、トラックおよびサイクロクロスに使う自転車の質量下限を6.8kgとする規定を、2000年に設けた。
この値を下回る質量の自転車は競技に参加できない。質量7kgを目標に製作すれば、0.2kgまでの下方誤差が生じても合格するとの考えのようである。
「等しい条件で競技する」というUCIの憲章に基づいて、特別に質量の小さい自転車に乗るものが有利にならないようにする規定となっている。
しなやかさ
しなやか(弾力性がある)と剛性がある、は対極にある。しなやかさが大きいと剛性は小さく、しなやかさが小さいと剛性が大きい。その間にいろいろな状態がある。
表1の縦弾性係数/引張強さの比によって、材料のしなやかさを比較することができる。この値が小さいほど、しなやかと見なせる。
小さい順に並べると、チタン合金、アルミ合金、炭素繊維強化樹脂、クロムモリブデン鋼、高張力鋼、低炭素鋼となる。
通説ではアルミ合金フレームはしなやかとはされていないようである。フレームのしなやかさは材料の特性だけでは決まらないことを示している。
フレームを構成する管の外径(太さ)、肉厚、長さおよびバテッドの有無などが大きく影響する。
これらの要因を適切に設定することによって、管材にかかわらず所定の剛性を持ったフレームを設計できる。
アルミ合金材は強度が低いので、フレームの強度を確保するためかつ疲労による破壊を防止するために管を太くしなければならず、しなやかさはその程度に応じて失われる。剛性は管径の3乗に比例するので、例えば同じ肉厚の管の太さを2倍にすると、剛性は8倍(=23)になる。
しなやかなフレームは乗り心地が良いとされているが、サドルおよびタイヤなどが乗り心地に与える影響に比べると、その影響は大変小さい。フオークまたはリムとスポークが乗り心地に与える影響よりもやや小さい。具体的には、
サドルを取り外し、立管に垂直荷重を加えて測った各部の縦方向変位データは次のようになっている。合計変位を100%とすると、フレーム2%、ホイール(リムとスポーク)3%、フォーク4%そしてタイヤ91%である。
この測定データではしなやかさに対するフレームの影響は2%であるが、全体として感じる違いをフレームの違いと錯覚することがある。
しなやかさと剛性の大きさは相反するもので、自転車の用途および好みによっていずれを重視するか選択する。
しなやかなフレームはエネルギー損失が生じるので、競技用の自転車は剛性の大きい(しなやかさのない)ものが好まれる。
参考資料 「フレーム管の剛性」、 「金属疲労」
フレームサイズと剛性
一般に三角形の剛性は、構成部材が同じであれば三角形が小さいほど剛性は大きくなる。フレームサイズが小さいと前三角及び後三角が小さくなるので、剛性は大きくなる傾向にある。
各社のフレームをボトムブラケットシエル部で固定し、チェーンステイつめにハブ軸を取り付け、それに22kgの重りを吊るしたときの変位をダイヤルゲージで測定したデータを打点したグラフを右に示す。
グラフの縦軸は変位そして横軸はフレームサイズとなっている。点の色はフレーム材質を表しており、赤点はクロモリ鋼、青点はアルミ合金、黄点はチタン合金そして黒点はCFRPとなっている。
管径、肉厚及びバテッドの有無などが全て異なるため、フレームサイズ大よりも小が変位が小さい(剛性が大きい)という明確な傾向は見られない。後三角は前三角より剛性が大きい。
剛性試験装置
右図は自転車メーカーであるLapierre社のフレーム剛性試験装置。
フレームの3箇所に同時に荷重を加えている。
試験データは自動的にデータベースに記録される。
振動数にもよるが、縦弾性係数が大きい方が振動吸収性がある。「材料」の項の表1(フレームに使われる材料の特性)にある素材について、縦弾性係数の大きい順に並べると、低炭素鋼(シティ車に使われる)、クロムモリブデン(クロモリ)鋼、高張力(ハイテン)鋼、炭素繊維強化樹脂(俗に言うカーボン)、チタン、アルミ合金の順になる。
ただし、炭素繊維強化樹脂(CFRP)は金属に比べて、約10倍の振動吸収性がある。
フレームの振動吸収性は、フォーク、スポークおよびリムのそれに比べて小さい。また、サドル、タイヤまたはサスペンション(付いている場合)に比べると極めて小さい。
フレームの頭管(ヘッドチューブ)の前方に付ける金属製の飾り。
頭管にはリベットで取付けるための穴を開けておくことが多い。
材質は加工しやすいアルミ、銅または銀など。
ブランド(商標)を示すために、独自のデザインのヘッドバッジを付けている自転車メーカーがある。
デザインを示すとそれに合わせて作る業者もある。日曜大工として自分で作って付ける人もいる。
1976年から現在まで、デザインを9種類(上図)も変えてきた自転車メーカー(Trek)がある。
デザインによって生産年代がわかる。例えば、1997~2002年製の如く。
自転車事業の125周年を祝って、新しいロゴのバッジを限定版の自転車に付けたメーカー(Raleigh)がある。
自転車を片手で持ち上げて運ぶために、フレームの下管(ダウンチューブ)及び立管(シートチューブ)に取付ける皮製のバンドの商品名。
自転車を持って階段を上がるときなどに使う。
フレームの溶接又は加工を行うために、それらの構成要素を正確な位置に固定する装置。
治具(じぐ)という当て字が使われる。
フレームの両側から作業ができるよう垂直に固定する形が一般的であるが、水平に固定する形もある。
単純なものから複雑なものまであり、その構成は多種多様。
ほとんどは、フレーム製作業者が独自に作ったものであるが、市販品もある。
右写真はフレームジグの市販品。各種のフレーム仕様に合わせた、フレームを構成する管などの位置決めのための固定並びに寸法および角度の調節ができるようになっている。
自転車メーカーのCanyon社はフレームなどの断層撮影を行うために、CTスキャナー(コンピューター断層撮影装置)を所有している(右図)。
CTスキャナーは、断層撮影X線装置とコンピューターを組み合わせた機器。
一般のCTスキャナーはX線を360度回転しながら照射して人体などの横断面を撮影、各方向からの像をコンピューターで処理して、その内部の3次元画像を得る。
右図の装置では撮影する物体(右図ではフレーム)の方を回転させている。
同社は製品の研究開発(R&D)及び品質管理(QC)に利用している。
左図は操作卓及びディスプレーそして右図はスキャナー室でフレームを撮影している状況。
X線照射器などは操作卓の操作によって上下移動できる。
フレームなどは回転テーブルに置く。
回転テーブルは操作卓の操作によって、回転及び左右移動ができる。
概要
クランク軸及び軸受またはボトムブラケット(BB)を取り付ける円筒形の部品。
一般的な意味での、シェルは殻、筒のこと。
フレーム連結
フレームにおいて下管、立管およびチェーンスティと連結している。
これらの管とシェルを連結する方式には、溶接式(ラグレス式)およびラグ式がある。
ラグ式
ラグ式シェルはシェルとラグが一体になっている。
ラグ式は管端がラグで補強される上、溶接による熱ひずみがない。
ねじ
ボトムブラケットの仕様
規格 | シェル幅 | ねじ | 左側 | 右側 | 用途 |
ISO、JIS |
68mm |
1.370in x 24山 |
右ねじ |
左ねじ |
ロード車、MTB |
イタリアン |
70mm |
36mm x 24山 |
右ねじ |
右ねじ |
ロード車、MTB |
オーバーサイズ |
73mm |
1.375in x 24山 |
右ねじ |
左ねじ |
MTB |
BB30 |
68mm |
圧入 |
なし |
なし |
ロード車、MTB |
シェル内側にはボトムブラケットを付けるねじが切ってある。
イタリアン以外は、右側が左ねじとなっているので右側は右に回すと緩む。
なお、左側は左に回すと緩む。
ただしBB30などは圧入するので、ねじはない。
工具
ボトムブラケットシェルの端面を加工する工具として、BBフェーシング工具がある。
ねじを修正加工する工具として、BBタッピング工具がある。
概要
駐車時に自転車が倒れないよう路面で支持する支持脚。使わないとき(走行中)には、ほぼ水平となる。
車輪寸法に合ったものを使う。足で蹴って操作するのでキックスタンドと呼ばれる。
種類
一本足(1本スタンド)が多いが、2本足(ダブルレッグスタンド)もある。脚の長さが調節できる(アジャスタブル)ものもある。
取付
チェーンステイに取付ける形が多い。
シティ車は後輪軸に取付けている。
外部ボトムブラケットに取付ける形もある。
後輪のクイックリリースのスキュアーに金属片を付け、カーボン製キックスタンド端の磁石で付着させる形がある。
2分割できるようにしているのでバッグなどに入れて持ち運ぶことができる。
材質
鋼、アルミ合金又はチタン合金など。
保管時の立てかけ及び自分又は他人の自転車のハンドル、ブレーキレバー、チェーン錠又は自分の靴などで、
上管(トップチューブ)に傷が付くのを防止するために付けるカバー。
上管全長を保護する長い形及び部分的に保護する短い形がある。
裏返しても使える形(リバーシブル)がある。
トップチューブカバー及びトップチューブプロテクター とも言う。
トップチューブの装飾として使われることもある。
水玉模様がある。
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