Qファクターとは
実感する方法
小Qファクターの利点
影響する寸法要因
ハイとロー
Qファクターの測定法
Qファクターの一例
ペダルエクステンダー
Qファクターとは
定義
Qファクターは左右のクランクのペダル取付け部の外面間距離(右図のQ寸法)のこと。ファクターとは名ばかりで、単に距離を表しているにすぎない紛らわしい用語。ただ、曲がり(コーナリング)時にペダルが路面に接地しやすいかどうかなどの要因(ファクター)になるという意味合いがある。
背景
Qファクターという用語が作られる以前には、クランクのペダル取付け部の外面間距離はトレッドと呼ばれていた(現在も使われている)。タイヤのトレッドと紛らわしいので、導入されたといういきさつがある。
ペダル間距離
Qファクターは左右のペダル間の距離を代表的に表している。Qファクターが小さいと、左右のペダル間距離も小さい。逆に、Qファクターが大きいと、左右のペダル間距離も大きい。長脚の人より、短脚の人のほうがQファクターの影響が大きい。
参考: コーナリングの傾き
Qファクターを実感する方法
Qファクターの意味を実感する1つの方法は、左右の足の間隔(進行方向の間隔でなく、横の間隔)を広げて歩いてみること。まず普通に歩く。次に左右の足の左右間隔を普通の歩行より20cm程広げて歩いてみる。アヒルが歩いているような感じになるかもしれない。Qはクワック(アヒルなどがガーガー鳴く泣き声)の頭文字。なお、普通歩行のときは脚のQファクターは小さいか零である。
小さいQファクターの利点
小さいQファクターには次のような利点がある。
- 小さい空気抵抗
- Qファクターが小さいと、脚に対する空気抵抗が幾分小さくなる。
- 大きい脚力伝達効率
- Qファクターが小さいと、ペダルに自然に脚力を加えることができ、力のクランクへの伝達効率が幾分良くなる。
- 立ちこぎのしやすさ
- Qファクターが小さいと、自転車の余計な振りが少なく、立ち漕ぎがしやすく効率も良い。
Qファクターに影響する寸法要因
クランク外面間距離(Qファクター)に影響する寸法要因には、次のようなものがある。
タイヤ幅
タイヤ幅が広いと、チェーンステイの間隔を大きくする必要があり、広がったチェーンステイにクランクが当たらないよう、Qファクターが大きくなる。一般に、マウンテンバイクはタイヤ幅が広いためロード系自転車に比べQファクターが大きい。
クランクスプロケット枚数
スプロケット枚数(段数)が多いと、クランクがフレーム芯から離れるため、Qファクターが大きくなる。使わないスプロケットが無いことが望ましい。
後輪スプロケット枚数
後輪スプロケット(カセットスプロケット)枚数(段数)が多いと、チェーンラインがフレーム芯から離れるため、Qファクターが大きくなる。使わないスプロケットが無いことが望ましい。
前ディレイラーのケージ幅
前ディレイラーのケージ幅が大きいと、チェーンとのすき間確保のため、Qファクターが大きくなる。
クランク形状
アルミクランクの中には、強度確保のため幅が厚くなっているものがあり、Qファクターが大きくなっている。
ポトムブラケット幅
ポトムブラケット(BB)幅は、直接Qファクターに影響する(表1参照)。
ハイとロー
大きいQファクターはハイQそして小さいQファクターはローQと呼ばれることがある。一般に、マウンテンバイクのQファクターは、ロード系自転車のそれより20~30mm程大きく、マウンテンバイクはハイQそしてロード系自転車はローQであることが多い。ハイQのクランクの使用者の中には、極めて稀であるが、ひざの内側に痛みを感じる人がいる。
Qファクターの測定法
左のクランクを外し、180度回転させた位置(右のクランクと並ぶ位置)に取り付けて測定する。左右のクランクが同一方向を向いて並んでいるため測定しやすい。
Qファクターの一例
Qファクターの一例を表1に示す。
クランク | BB幅 [mm] |
Qファクター [mm] |
---|---|---|
シマノ 105sc | 107 | 151 |
シマノ 105sc | 96 | 141 |
シマノ 105sc | 61 | 105 |
Odyssey Black Widow Euro | 107 | 130 |
Odyssey Black Widow Euro | 96 | 119 |
Odyssey Black Widow Euro | 61 | 84 |
Odyssey Black Widow Euro | 53 | 76 |
Campagnolo MTB | 107 | 171 |
ペダルエクステンダー
Qファクターを実質的に大きくする方法として、ペダル軸とクランクの間に入れて、クランクとペダルの距離を大きくする部品がある。ペダル軸を受け入れる雌ねじおよびクランクに付ける雄ねじが切られている。取付はペダルレンチで行う。左右一対となっている。有効幅(長さ)は20mm、25mmおよび30mmなど。材質はステンレス鋼およびチタン合金など。
例えば、次のような人を対象としている。(1)つま先が外に向いていて、かかとがクランクに当たる人。(2)足の大きい人。または、(3)骨盤が広いために支障のある人(骨盤が広いから必要とは限らない)。なお、正しい発音はペダルイクステンダー。