ハブ 自転車 探険!

ハブの種類 ハブの構造及び材質 クイックリリース 工具
スポーク穴 ロックナット間距離 ハブオフセット計算器 ハブ回転数計算器

  ハブは車輪の中心部にあって、スポークを取り付ける回転体で玉軸受によって回転する。ハブは中心という意味。
ハブの左右には、スポークを取り付けるためのつば(フランジ)が付いている。フランジには取り付けるスポークの数だけのスポーク穴が開いている。
  ハブのフランジ高さによって、高フランジハブ(大フランジハブ)および低フランジハブ(小フランジハブ)があるが、現在は大部分のハブが低フランジハブとなっている。
 
ハブの種類

  ハブはハブと別の機能が一体になっているか、あるいはなっていないか等によって次のような種類がある。

普通ハブ フリーハブ クイックリリースハブ 大フランジハブ 小フランジハブ
ハイローハブ ハブギア ハブダイナモ ディスクハブ コースターハブ
偏心ハブ トラックハブ ストレートプルハブ フリップフロップハブ 貫通軸ハブ
フリーコースターハブ サスペンションハブ Eハブ エアーハブ 抵抗ハブ

普通ハブ

  ハブ以外の機能が組み込まれていないハブ。前ハブおよび後ハブがある。

フリーハブ

  右ハブフランジ外にフリーホイールを組み込んだハブ。ユニットハブとも呼ばれる。後ハブのみ。
  フリーホイールは爪車(ラチェット)とばねの付いた爪の組み合わせによって、ペダルが正回転の時のみ動力を車輪に伝える機構。
これがないと、例えば下り坂でペダルを止めると、車輪の回転によって逆にペダルが回される。
  フリーホイール部はスプロケットと一体になっている(単段)か、またはスプラインになっていてスプロケット群(カセット)が入るようになっている(多段)。

クイックリリースハブ

前ハブ後ハブ
  クイックリリースを組み込んだハブ。クイックリリース(後記)は工具を使わずに、速やかに車輪(ハブ)を外す機構。輪行またはパンク修理に役立つ。
  開か閉が一目で分かるよう、レバーは人差指を少し曲げたように曲がっている。レバーはその軸に対して180度回転し、回転端において指先(レバー端)が車輪に向いていれば閉(CLOSEの文字が外に向く)そして指先(レバー端)が外に向いていれば開(OPENの文字が外を向く)。

大フランジハブ

  スポーク頭を付けるスペース以上にフランジ外径が大きいハブ。複数の軽量化穴をスポーク穴の下方に開けているものもある。 車輪の横方向の力が大きくなるトラック競技車に使われている。フランジの高さが高いことから高フランジ(ハイフランジ)ハブとも言う。 スポーク穴PCDがスプロケットより大きいので、スプロケットを外すことなくスポーク交換ができる。 小フランジに比べて大フランジは、スポークのプレース角が幾分大きくなるため車輪の横方向の剛性が幾分大きくなる。

小フランジハブ

  フランジの大きさがスポークを取付けるのに必要なだけの大きさしかない小さいフランジのハブ。
フランジの高さが低いことから低フランジ(ローフランジ)ハブとも言う。
現在は大部分のハブが軽量化のために小フランジハブとなっている。
スポーク穴と穴の間にはフランジの強度上、穴径の2倍弱のスペースを必要とする。
最小フランジ径は、およそ 0.8 x スポーク穴径 x 片側のフランジのスポーク穴数。

ハイローハブ

  後輪ハブにおいて、スポーク穴のPCDを左右で違えるために、右側のフランジを左側のフランジよりも大きくしたフランジを持つハブ。カセットスプロケットの存在によって小さくなる右スポークのプレース角を大きくして、車輪の横強度を大きくする意図がある。 左右のスポークの張力差は少なくなる。

ハブギア

  変速機を組み込んだ後ハブ。ギアハブ又は内装変速機とも言う。
変速機は一般に遊星歯車が使われる。変速段数は3段、4段、7段、8段、
11段及び14段など。 防塵、防水性があり、またグリス又は潤滑油が封入されているので注油の必要がなく、外装変速機より磨耗が少ないので寿命が長い。 チェーンラインが真直ぐになり、外装変速機のようにチェーラインが斜めになることがないので、チェーンの伝動効率が良い。
保全(メインテナンス)の必要性が少ないのでシティ車および通勤車などに使われることが多い。停止時に変速できるので、テクニカルトレイルを走るマウンテンバイクに使われることもある。 外装変速機よりやや質量が大きい。チェーンが伸びたときは張り調整が必要。クイックリリースの付いたものもある。
ディスクブレーキのローターの付いたものもある。

ハブダイナモ (ハブ発電機)

機構
  前輪ハブに組み込んだ発電機のこと。ハブの回転によって交流電力を発電する。
利点
  ローラー発電機と比べてペダルが軽く騒音がない。
欠点
  発電していないときも、わずかであるが動力を必要とする。ただし、発電機負荷を切ることのできるものもある。
新しく取付ける場合はスポークの組み換えが必要。
  ただし、ホイールにハブ発電機を組み込んだダイナモホイールがある。
ハブ発電機定格
区分 電圧[V]  出力[W] 
 1灯用 2.4
3.0
6.0
2灯用3.2
定格
  JIS C9502(自転車用灯火装置)に規定するハブ発電機の定格電圧及び定格出力を右表に示す。
OLD
  ロックナット間距離(OLD)は100mmなど。
スポーク穴数
  フランジのスポーク穴数は32穴及び36穴など。
発電効率
  72~84%。
ブレーキ
  リムブレーキ用及びディスクブレーキ用がある。ディスクブレーキ用はブレーキローターを取り付ける座が付いている。
質量
  クイックリリース付の質量は490~750g。写真の形はクイックリリースレバー付き。
特殊仕様
 (1) キャパシタを内蔵して、停止時も5分間程度点灯しているものもある。
 (2) 発電しないときは、6歯スプロケット状のクラッチ板を手で回して磁力(負荷)を切ることが
      できる形もある(上段右端図)。
 (3) 発電しないときは、側壁のダイヤルでスイッチを切ることができる形がある。
       発電負荷が発生しない。
 (4) 前輪のハブ軸に取り付ける形がある。前照灯及び尾灯が付属している(右図)。
       発電機はハブの回転によって内蔵の歯車で駆動する。
 (5) 点灯させないときは電気を付属の蓄電池に蓄えておき、i Phoneなどの充電に使える形がある。
 (6) 後輪車軸に取付ける発電機がある。発電した電気は付属の着脱式蓄電池に蓄え、USBケーブルでiPhoneなどの充電に使う。
充電キット
  i Phone(DC5V)などに充電ができるように、ハブ発電機の出力電圧(AC6V)及び出力をDC5Vに平準化するキットがある(右図)。

ディスクハブ (ディスクブレーキハブ)

  ディスクブレーキの円板(ロータ)を取り付けられるようにしたハブ。
さらに、フリーハブボディおよびクイックリリースを取付けられるようにした形もある。
  円板をハブに取付ける方式にはセンターロックおよびボルト取付がある。 センターロック(シマノ特許)はハブに設けたスプラインボスにスプライン穴のある円板を入れてロックリングで固定する。
ボルト取付はPCD44mmで6個設けたねじ穴にボルトで固定する。
ディスクブレーキ付きのマウンテンバイクなどのハブとして使われる。

コースターハブ (コースターブレーキハブ)

  コースターブレーキを組み込んだハブ。後ハブのみ。コースターブレーキハブともいう。写真はいずれもコースターブレーキおよび7段内装変速機を組み込んだハブ。右はシマノ製そして左はSRAM製。 コースターブレーキから出ているブレーキアームはその端をチェーンステイに固定する。 コースターブレーキはブレーキとフリーホイールの役目をするコースター(滑るという意味)を組み込んだブレーキ。シュー式およびディスク式がある。 ペダル(クランク)を逆回転させるとブレーキが作動する構造となっているのが大きな特徴。手でブレーキを操作する必要がないという利点がある。雨の影響を受けない。また、握力の小さい子供用の自転車にも向いている。
  前進するようにペダルを漕ぐと、スプロケットの回転によってドライバーをクラッチに入れる。クラッチはハブシェルを回転させて前進する。ペダルの回転を止めると、クラッチはハブシェルから離れる。 ペダルを逆回転させると、クラッチはブレーキシューに入る。シューは左側のコーンを回転させ、シェル内の摩擦が増大してフレームに固定したブレーキアームは、左側のコーンの回転を止める。

偏心ハブ

  ハブの芯とハブをチェーンステイのつめ(爪)に取付ける軸の芯をずらしている(偏心させている)ハブ。
軸心を回転させることによって、ハブの芯位置が変わりチェーンの張り調整ができる。
垂直つめの付いた単速の自転車に使われることがある。

トラックハブ

表1  スプロケット及びロックリングのねじ寸法
規格スプロケットねじロックリングねじ
 ISO、シマノ 1.375" x 24 TPI 1.29" x 24 TPI
 Campagnolo  1.370" x 24 TPI 1.32" x 24 TPI
 フレンチ 34.7 mm x 1.0 mm  33 mm x 1.0 mm 
  トラックレーサーなどに使うフリーホイールのないハブ。固定ハブともいう。固定スプロケット(トラックスプロケット)を使い単速となる。固定スプロケットを付ける雄の右ねじを右側のみに付けた形および左右に付けた形がある。 左右付けの形は歯数の異なる固定スプロケットを左右に付け、車輪を左右反転してギア比を変えられる(フリップフロップハブ)。ハブのねじは右ねじの固定スプロケット用と後漕ぎ時にも緩まないよう左ねじの固定ナット(ロックリング)用の2段となっている。 スプロケット及びロックナットのねじの寸法を表1に示す。
スポーク穴数は28、32および36穴がある。 ロックナット間距離(OLD)は、前輪ハブが100mmそして後輪ハブが110mm(競輪ハブ用)、120mm(一般的)、126mm及び130mm。フランジは低(小)および高(大)がある。スポーク穴のピッチ円直径(PCD)は47mmなど。

ストレートプルハブ

  真直ぐスポーク(ストレートプルスポーク)を使う特殊ハブ。 エルボ付きの一般のスポークを使うことはできない。真直ぐスポークは、エルボが無く一端には鍛造で作った頭があり、他端にはニップルを付けるねじがある。 真直ぐスポークを使う前ハブおよび後ハブの写真(一例)を右に示す。
ハブの質量が大きくなること及び特定のスポーク組に対してスポーク穴を開けなければならないという欠点がある。

フリップフロップハブ

  ハブの左右にスプロケットまたはフリーホイール付きスプロケットを取付けできるようにした後輪ハブ。フリップフロップは逆にするという意味。ロックナット間距離(OLD)は120mmが一般的。 (フリー - 固定)および(固定 - 固定)の2種類がある。
フリー  -  固定
  片方に単速のフリーホイール付きスプロケットを付け、他方に固定スプロケットを付けて逆にすると、フリー及び固定の機能を使うことができる。
左右の歯数は同じにするか又はフリーホイール側のスプロケットの歯数を多くする。 フリーホイールの歯数は、16T、17T、18T、20Tおよび22Tがある。
固定  -  固定
   ハブの左右に歯数の異なる固定スプロケットを付けて逆にするとギア比を変えることができる。 歯数が変わるとチェーンの軸間距離が変わるために、
後輪つめはそれを吸収できる切込みが必要。固定スプロケットの歯数は、13T、14T、15T、16T、17T、18T、19T、20Tおよび21Tがある。

貫通軸ハブ

 後輪軸径  ハブOLD 
 10  135
 12 135 
 15 150
 前輪軸径 ハブOLD主用途
 15  100 クロスカントリー 
 20 110、120  ダウンヒル
 24 118 ダウンヒル
  貫通軸(スルーアクスル)を使うハブ。貫通軸は、ダウンヒル競技用マウンテンバイクの車輪強度及び軸受寿命を上げるために、前輪ハブ軸を9mmのクイックリリースではなく、直径20mmの貫通軸としたのが始まり。 その後、直径15mmおよび24mmの貫通軸も出現している。
前輪(フォーク)用及び後輪用の貫通軸径の一例を上表に示す。
  同表のOLD(ロックナット間距離)が150mmの後輪ハブは、リム中心から左右のフランジハブの距離が等しくかつ長くなるようにして車輪の強度を上げるようにしたもの。

フリーコースターハブ

  フリーホイールの機能を持っているが、自転車を後退させてもペダル(クランク)は動かないのが特徴。
  一般のフリーハブは自転車を後に動かすと、ペダルは逆回転する。
曲乗り用BMX車(フラットランドバイク)の後輪ハブとして使われることがある。

サスペンションハブ

  緩衝機構(弾性体)を組み込んだハブ。小径車、折り畳み自転車およびリカムベントなどの道路の凹凸の影響を受けやすい小径の車輪を備えた自転車に使われることがある。 トラベルは12mm及び24mm。OLDは前輪ハブが100mmそして後輪ハブが130、135および145mm。ハブのスポーク穴数は20、24、28、32及び36穴。ハブの質量は前輪ハブは250gそして後輪ハブが450g。 緩衝の動きによって、リムはリムブレーキのブレーキシューに対して相対的に動くため、リムのパッド当り面はトラベルに対応した高さが必要。写真は前輪ハブでトラベル12mmのもの。

Eハブ

  力を吸収して放出するコイルばねを入れたハブの商品名。2008年にEkstundo社(スロベニア共和国)が製造販売を始めた。 左図はブレーキロータの付いたマウンテンバイク用のEハブ。ロード車用もある。中図はハブを透明にして、コイルばねを赤色にして見せている。
  ペダルに大きな力が加わった時はばねが圧縮されて力を蓄え、力が小さくなった時はばねが伸びて力を放出する。 そのため、ペダル押下げ及び引上げ行程ではばねを圧縮して力を蓄え、前方押し(上死点)及び後方引き(下死点)行程ではばねが伸びて力を放出する。 メーカーによれば、動力は最大で10%増加する。上死点及び下死点においても力を加えることのできる人には効果は限られる。欠点は太いコイルばねを使うので質量が大きくなること。 右端図はクランク角とトルクの関係グラフ。

エアーハブ

  ハブの回転により圧縮空気を発生させるロータリー式ポンプをハブに内蔵した、
タイヤ自動空気補充装置の商品名。
ハブとタイヤのチューブのバルブは、圧縮空気を送る細いチューブでつながっている。
タイヤ圧力が適正値になると、余分な空気は系統に付いた逃がし弁から排出される。
タイヤ圧力が保たれているので、パンクをしにくいと言う。
前輪用および後輪用がある。
後輪用は外装変速機用および内装変速機付きがある。
  メーカーは、中野鉄工所。
エアハブを搭載した自転車は、ブリヂストンサイクルが出している。

抵抗ハブ

  遠心力及びクラッチの働きを利用して、車輪の回転負荷を複数段階(機種によって3段階または7段階)に変えられるようにした前ハブ。
トライアスロンなどの自転車に負荷を掛けた訓練などを意図している。
訓練のときは、クイックリリースを使って前輪を抵抗ハブの付いた車輪と交換する。
ハブの質量は、カセットスプロケットの付いた一般の後輪ハブとほぼ等しい。
図はハブの外観及び内部機構。


 
ハブの構造及び材質

構造 軸受 主要寸法 フリーハブボディ フリーホイール
スターラチェット ローラークラッチ マルチプルフリーホイール 材質 質量
  • 構造
      中に軸受があって車軸が通り、両側にはスポークを付けるためのフランジが付いている。
    軸の端から玉押し(コーン)の付く部分までは、玉押しおよびロックリング(ロックナット)がねじ込めるようにねじが切ってある。 右図には、後輪ハブにフリーハブボディおよびカセットスプロケットを組み付けた構造例を示す。朱色はハブおよびそのカップアンドコーン玉軸受を示している。
      ディスクブレーキの付く車輪は、ディスクハブを使う。車軸にクイックリリースの付いたハブもある。

  • 軸受
      種類
      ハブ軸受としては、カップアンドコーン軸受(右図)またはカートリッジ軸受が使われる。
    カップアンドコーン軸受は、カップ、玉およびコーン(円錐のこと)で構成されている。カップとコーンの間で玉が回転する。わんはハブ側にあり、一方玉押しは軸にねじ込まれて、ロックリングで固定されている。
    ロックリングと玉押しの間にはスペーサーがある。 玉押しという名称は、玉押しを回して玉に遊びがないように調整することから来ている。最後の微調整は、1/10 回転程度となる。

      軸受位置
      フリーハブボディにはカセットスプロケットが付くので、動力を伝達するチェーンにより大きな力が働く。 その力はハブ軸受に対する負荷となる他、軸受の配置によってはハブ軸の曲げ力となる。車軸における軸受の位置はメーカーによって異なり、次の4例がある。その4例について、ハブの模式図で軸受の位置を示す。図においてハブは青色、フリーハブボディは茶色そして軸受は赤色で示してある。 この図は単に軸受の位置を模式的に示しているだけで、ハブ等の構造は示していない。

    • (A)カップアンドコーン軸受又はカートリッジ軸受2箇所
        軸受が左はハブフランジ部にあり、右はフリーハブボディ部にある形。スプロケットの荷重は軸受bで受け、軸の曲げ荷重は小さい。シマノの方式。

    • (B)カートリッジ軸受3箇所
        軸受が左右のハブフランジ部およびフリーハブボディ部にある形。軸受bの右の軸に曲げ応力が働く。

    • (C)カートリッジ軸受4箇所
        軸受が左右のハブフランジ部および左右のフリーハブボディ部にある形。チェーンが左端のスプロケットに掛かっているとき、軸には最大の曲げ荷重が働く。軸を太くして対応している。カンパニョーロの方式。

    • (D)カップアンドコーン軸受又はカートリッジ軸受2箇所
        軸受が左右のハブフランジ部にあって、フリーハブ部にはない形。チェーンが右端のスプロケットに掛かっているとき、軸には最大の曲げ荷重が働く。

      点検
      軸受を点検するには、手でリムの上部を持って左右に動かし、感じられる遊びがないか調べる。タイヤを地面から浮かせ、手で軽く回るか調べる。

  • 主要寸法
      ハブの主要寸法を右図に示す。
    • フランジ間隔
          左右のフランジの厚みの中心間の距離。間隔が大きい方が、車輪の強度が大きくなる。

    • ロックナット間距離(OLD)
          左右のロックナットの外面間の距離で、チェーンステイのつめ間隔に対応する。

    • フランジ外径
          フランジの外径の大きいもの(大フランジまたは高フランジ)および小さいもの(小フランジまたは低フランジ)がある。
          稀に、右フランジの外径が左フランジの外径より大きいものがある(ハイローフランジ、右図)。
          ハイローフランジは、カセットスプロケットの存在によって小さくなる右スポークのプレース角を大きくして、車輪の横強度を大きくする意図がある。

    • ピッチ円直径(PCD)
          スポーク穴のピッチ円の直径。スポーク長に関係する。

  • フリーハブボディ
    フリーハブボディ
      フリーホイールの組み込まれた部品。この部品の外殻にスプラインがありカセットスプロケットが付きトルクを伝達する。 スプラインの断面形状および数はメーカーによって異なるために互換性はない。 内端につめ車またはつめそして外端にハブ軸受け用の軸受が組み込まれている。外殻の材質はアルミ合金およびチタン合金など。

  • フリーホイール
    • 概要
        つめ車(ラチェット)とつめばねの付いたつめの組み合わせによって、ペダルが正回転の時のみ動力を車輪に伝える機構はフリーホイールと呼ばれる。
        トラックレーサーのハブにはフリーホイールが付いていない。

    • 機能
        正回転のときはつめ(ポール)がつめばねによってつめ車の歯に引っかかり回転を伝えるが、逆回転のときはつめがつめ車の歯の上を滑って回転が伝わらない(つめがつめ車の歯の上を滑っている音がする)。 これがないと、例えば下り坂でペダルを止めると、車輪の回転によって逆にペダルが回される。

    • 構造
      つめ車 (ラチェット)つめ3個つめ4個
        構造の一例を写真に示す。写真例では、つめはカセットスプロケットの付くフリーハブボディ(フリーハブシェル)に付いて、つめ車はハブ本体に付いている。 それとは逆に、つめ車はフリーハブボディに付いて、つめはハブ側に付いている形もある。右上の図の形では、つめ車およびつめ共にフリーハブボディに収めている。 いずれもカセットスプロケットの付いたフリーハブボディの回転をフリーホイールで連結してハブに伝える。
      JIS D9418(自転車-フリーホイール及び小ギヤ)によれば、「フリーホイールは工具などを使用してハブから取外しができる構造でなければならない。」

    • つめ車・つめ
        つめ車の歯の数が多いほどつめと噛み合うまでの回転角が小さくなるため、駆動までの時間が短くなる。 例えば、つめ車の歯の数が18なら
      360°/18=20°より、最大で20°回転すればかみ合う。つめ(爪、上写真の赤矢印)の数は3個または4個が多いが6個もある。

    • 耐摩耗性
        JIS D9418によれば、「フリーホイールの玉当たり部の耐摩耗性は、毎分250回転の速度で50,000回転したとき、玉当たり部に玉の直径の25%以上の光沢面、くぼみ、その他の有害な欠点を生じてはならない。」

    • 歴史
        フリーホイールは、1869年にアンデンが特許をとり、1898年にサックスが商品化した。

  • スターラチェット
      後輪ハブのフリーホイール用のラチェット機構の一種。環状円板の表面全体に断面が鋸歯状の鋸歯がある一対の円板(スターラチェット)を、ばねで押し合わせたラチェット。駆動方向に回すと鋸歯がかみ合いトルクを伝達する。逆方向に回ると鋸歯が滑る(独特のラチェット音が出る)。円板の外周にはフリーハブボディからハブへトルクを伝達するスプラインが付いている。1個はフリーハブボディに組み入れ、もう1個はハブに組み入れ、合体させる。歯数は18歯又は36歯など。18歯の形は20°そして36歯の形は10°の回転で噛み合う。大きな伝達力を必要とするタンデム車用に作ったが、ロード車用及びマウンテンバイク用などもある。

  • ローラークラッチ
      一般的なラチェットの代わりに、複数のローラー及びそれらと同数の傾斜突起と組合わせたクラッチの機構を使ったフリーホイール。
    ハブのスプロケット正回転の時はローラーと傾斜突起が噛み合って動力を伝達するが、逆回転の時はローラーは回転して噛み合わない。特徴は噛み合いが早く、かつ静かなこと。 右図はローラークラッチの一例。ローラークラッチを使ったアリーハブは、ローラークラッチフリーハブと呼ばれ、マウンテンバイクのフリーハブとして使われることがある。シマノはサイレントクラッチと呼んでいる。

  • マルチプルフリーホイール
      スプロケットとフリーホイールを一体にしたフリーホイール。対応するハブのボスの雄ねじにねじ込んで取付ける。ペダルを漕ぐとチェーンによってねじは締まる。 外すときは、マルチプルフリーホイールリムーバーを使う。
    シティ車およびマウンテンバイクなどの5、6および7段のスプロケットとして使われる。1980年代後半までは、
    この形式しかなかったが、シマノがカセットスプロケットを出してからは、カセット式が一般化した。
    カセットスプロケットはハブとフリーホイールを一体にしたフリーハブボディに取付ける。

  • 材質
      ハブの本体材質はアルミ合金。冷間鍛造または機械加工によって作られている。チタン合金製および炭素繊維強化樹脂製もある。軸はCrMo鋼など。

  • 質量
      ハブ質量を打点したグラフを右に示す。赤点は前輪ハブ(OLD=100)そして緑点は後輪フリーハブ(OLD=130,135)を示す。
    いずれもクイックリリースは含まない。平均質量は、前輪ハブが約140gそして後輪ハブが約300g。

密閉カム 開放カム
  • 概要
      工具を使わずに、レバーによって速やか(クイック)に車輪を開放(リリース)する機構。ハブ軸として使われる。
    輪行またはパンク修理に役立つ。クイックリリースレバーまたはスキュアー(串)とも言う。 前輪と後輪ではロックナット間距離が異なるので、それに合った長さのスキュアー(串)を使う。軽量化のために中空にしたスキュアーもある。

  • 歴史
      サイクリストのカンパニョーロが1930年に発明した。発明の動機は次のようなことであった。当時、後輪の両側に歯数の異なるスプロケットが付いていて、後輪を外して左右の向きを変えて変速(2速)していた。 競技では、この変速の時間も含まれるので、
    時間短縮のためにクイックリリースを発明した。競技には長距離の坂があり、変速が必要であった。

  • 種類
      密閉カムと開放カムの2つの形がある(右上図)。密閉カムはカンパニョーロの時代からある形で、カムがキャップの中にあり注油してもカム部が粉塵の付着で汚れない。 開放カムは1980年代に出現した形であり、カムとレバーが一体となっているため生産原価は少し安く質量はやや小さい。

  • 使い方
      開か閉が一目で分かるよう、レバーは人差指を少し曲げたように曲がっている。 レバーはその軸に対して180度回転し、回転端において指先(レバー端)が車輪に向いていれば閉(CLOSEの文字が外に向く)そして指先(レバー端)が外に向いていれば開(OPENの文字が外を向く)。 中間位置で止めてはならない。
      レバーの180度回転によって、カムで押し付けて固定する。ナットのように、ねじで固定するのではないので、レンチを回すようにレバーを車軸に対して回してはならない。
      開→閉または閉→開のレバー操作の終始端近くにおいて、カム作動によるかなりの抵抗を感じるのが正常。 この抵抗すなわち固定力の調整は、ハブに対してレバーと反対側にある調整ナットを指で回して行う。右に回すと強くなり、左に回すと弱くなる。

  • レバー位置
      レバー位置は伝統的に左側が多い。車軸に対してどのような回転位置に持って行っても良い。一般には、フレームと一緒に握れるようまた邪魔にならないよう、閉でフレームに沿う位置とする。

  • ロッキングスキュアー
      車輪の盗難防止のために、鍵または専用のレバーを使わなければ開放できないようにしたスキュアー。
    串(スキュアー)の長さは、前輪のつめ間隔、後輪のつめ間隔およびサドル支柱クランプによって異なるが、鍵または専用のレバーは共通となっている。 レバーを使わずに、六角レンチで開閉する形式もある。

  • ロックナット間距離
      ロックナット間距離(OLD)は、100、130、135、140および145mmなど。
  • 材質
      スキュアーの材質は、クロモリ鋼およびチタン合金など。レバーの材質は、アルミ合金およびCFRPなど。

  • マルチ工具
      マルチ工具をレバー部に組み込んだクイックリリースがある(右図)。組み込まれている工具は、六角レンチ(4、5、6および8mm)、十字ねじ回し、チェーン切りおよびニップル回し(3.0および3.2mm)。 ロックナット間距離は、130mmおよび135mm。
  •  ロックリング工具
      カセットスプロケットのロックリングを外す工具。ロックリングリムーバーとも呼ばれる。カセットを固定しているロックリングのめすスプラインに工具のおすスプラインを入れてスパナで左に回すと、ロックリングが外れてカセットスプロケットが外れる。 その際フリーホイールが回らないよう、カセットスプロケットをスプロケット抜き(チェーンウイップ)で回り止めをする。 ロックリングを取り付けるときは、ねじにグリースを塗り工具(リムーバー)を右に回す。固定トルクは40Nm程度。フリーホイールは回らないのでスプロケット抜きは必要ない。工具の芯出し用の案内ピンが付いている形(左)および付いていない形(右)がある。

  •  スプロケット抜き
      カセットスプロケットのロックリングを緩めるときに、スプロケットの歯に掛けてカセットがフリーホイールで回らないよう保持しておく工具。握りの先に歯に掛ける両端を固定した5リンクほどのチェーン及び1端を固定した15リンクほどのチェーンが付いている。柄に樹脂またはゴムの握りの付いたものもある。 ボトムブラケットのロックリングスパナの付いた形(シマノ)およびペダルレンチが付いた形もある。一端固定のチェーンはむち(ウイップ)のような形をしているのでチェーンウイップとも呼ばれる。

  •  コーンレンチ
      カップアンドコーン形のハブ軸受のコーン(玉押し)を回すレンチ。軸受を分解してグリース交換する場合および玉当たり調整をする場合に使われる。レンチの当たるコーンの平坦部に合わせて、レンチの厚みは約2mmと薄い。 片口および両口(ダブル)がある。玉押しのサイズは、前輪ハブが13mmそして後輪ハブが15mmであるものが多い。 玉押しの当たり調整には、2つのレンチがあると片方はロックナットに使って早く容易に調整できる。

表2 スポーク穴(通し穴)の寸法 (JIS D9419)
 穴径d  面取径D  面取角α 板厚t材料 用途  スポーク径 
 2.3 3.5105 2.3又は2.5 前輪1.8
 1.8/1.6 
 - 3.0又は3.4 アルミ合金 
3.51052.3又は2.5 鋼後輪
 -3.0又は3.4アルミ合金
2.53.5 105 2.3又は2.5前輪2.0
1.8/1.6
 - - 3.0又は3.4アルミ合金
 4.01052.3又は2.5後輪
 -2.3又は2.5アルミ合金
2.8 4.0105 2.3又は2.5前輪2.3
 - - 3.0又は3.4アルミ合金
 4.01052.3又は2.5後輪
 -3.0又は3.4アルミ合金
3.14.5105 2.3又は2.5前輪2.6
 -  3.0又は3.4アルミ合金後輪
  ハブの左右のフランジにはスポーク取り付け用のスポーク穴がある。

スポーク穴は通し穴および引掛け穴の2種類がある。
(「JIS D9419 自転車-ハブ」)

  • 通し穴
      通し穴の寸法を表2に示す。
    前輪ハブ及び後輪ハブに使われる。
    通し穴の穴径はスポークのねじ外径より0.2mm強大きくなっており、スポーク径に応じて、2.3mm、2.5mm、2.8mmおよび3.1mmの4種類がある。
    鋼製フランジの穴には105°の面取りがあるがアルミ合金製には面取りがない。面取りはスポークをよく支持するよう、かつスポークを穴に入れやすくするため。
    アルミ合金製はエルボで穴の角が変形して支持する。
    なお、フランジ板厚は、鋼製は2.3mm又は2.5mmそして
    アルミ合金製は3.0mm又は3.5mm。
    スポーク径の1.8/1.6は段付きスポーク。

  • 引掛け穴
    表3 スポーク穴(引掛け穴)の寸法 (JIS D9419)
     穴部a  穴部b 板厚材料 用途  スポーク径 
     4.5 2.02.3又は2.5後輪1.8
    2.0
     2.0/1.8 
     3.0又は3.4  アルミ合金 
    2.32.3又は2.5
    3.0又は3.4アルミ合金
    4.72.52.3又は2.52.3
    3.0又は3.4アルミ合金
    5.42.82.3又は2.52.3
    3.0又は3.4アルミ合金
      引掛け穴の形状を右図にそして寸法を表3に示す。
    A-A断面の形状は、通し穴の図による。
    後輪ハブのみに使われる。
    スポークの頭を通す中央の直径aの穴の両横に、
    その穴と続く幅bのU字形の穴が左右ともU字の底を外に向けて開いている。
    スポークのエルボを引掛けるU字溝の幅bはスポーク径に応じて、
    2.0mm、2.3mm、2.5mmおよび2.8mmの4種類がある。
    なお、フランジ板厚は、鋼製は2.3mm又は2.5mm
    そしてアルミ合金製は3.0mm又は3.5mm。
    スポーク径の2.0/1.8は段付きスポーク。

  • スポーク穴数
    表4  スポーク穴数及び用途例
     スポーク穴数  28 32 36 40 48
      用途例    競技車   ロード車   オフロード車、旅行車   タンデム車   タンデム車 
      スポーク穴数及び用途例を表4に示す。
    ハブのスポーク穴数はにはスポーク数に対応している。
    スポーク数が多いほど車輪の強度が大きい。
    荷重及び衝撃の大きい自転車は多くのスポークを必要とする。
    2人で乗るタンデム車、荷物を積む旅行車は荷重が大きい。オフロード車は衝撃が大きい。
 
ロックナット間距離

表5  後輪ハブのロックナット間距離(OLD)
 ロックナット間距離[mm]    トラック等     オンロード    オフロード及び旅行   タンデム 
110 競輪1速      
114   3速、4 速    
120 1速 5速    
126   6速、7速    
130    8速、9速、10速     
135     7速、8速、9速  
145        8速、9速 
160        7速、8速 
ロックナット間距離  
  • 定義
      ハブ軸の左右のロックナットの外面間の距離は、ロックナット間距離(OLD)と呼ばれる。

  • 実例
      前輪ハブのロックナット間距離(OLD)は100mm。
    後輪ハブのロックナット間距離(OLD)の実例を表5に示す。

  • 段数とロックナット間距離
      ロックナット間距離は左右のハブフランジ間の距離および後輪スプロケット(カセットスプロケット)の枚数(段数)によって決まる。
    フランジ間距離は車輪を後方から見たときのスポークの傾き角を決める。
    フランジ間距離が大きいと、垂直線に対するスポークの傾き角が大きくなり、コーナリングなどにおける横荷重に対して車輪は強靭になる。

  • 車種とロックナット間距離
      オフロードの悪路を走るマウンテンバイク、荷物を積む旅行車およびタンデム(二人乗り)車は、車輪に大きな荷重が働くので、フランジ間距離(従ってロックナット間距離)が大きくなっている。
 
ハブオフセット 計算器

ハブオフセット 
  ロックナット間距離の振り分け中心(緑色)とフランジ間隔の中心(青色)との距離(赤色)は、ハブオフセットと呼ばれる。
  ハブオフセットはおちょこの形状(下図の灰色)およびスポーク長に影響する。
  前輪は左右対称のためハブオフセットは零なのに対して、後輪は右側にスプロケットが付くため、軸の右側が長くハブオフセットがある。
  ロックナット間距離の振り分け中心(緑色)は、右下図のようにリム中心線およびフレーム中心線と一致する。

  所定の距離を半角数字で入れて、[計算]を押して下さい。
ハブオフセットが出ます。
 ハブオフセット 
計算器
 フランジ間距離   ロックナット間距離   右フランジ・右ロックナット間距離   ハブオフセット 
  mm   mm  mm  mm
[ 計算例 ] フランジ間距離60mm、ロックナット間距離135mmそして右フランジ・右ロックナット間距離45mmのとき ハブオフセットは7.5mmとなる。
 
ハブ回転数 計算器

  後輪ハブの回転数を求める計算器です。ハブ回転数は車輪の回転数と等しい。一般に、前輪と後輪の外径は等しいので、回転数も等しい。

  ペダル回転数および前後スプロケット(クランクスプロケットおよび後輪スプロケット)の歯数を半角数字で入れて、[計算]を押して下さい。
ハブ回転数が計算できます。
 ハブ回転数 
計算器
 ペダル回転数   前スプロケット歯数   後スプロケット歯数   ハブ回転数 
  rpm   T  T  rpm
[ 計算例 ] ペダル回転数70rpm、前スプロケット歯数52Tそして後スプロケット歯数15Tのとき ハブ(車輪)回転数は243rpmとなる。

   参考資料  「ハブ軸受寿命 計算器