種類および構造
寸法および質量
性能および試験
チェーンたるみ
チェーン互換性
チェーンライン
ドライブトレイン
チェーンの連結
連結ピン
チェーン工具
マスターリンク
チェーン噛み込み
チェーンの柔軟性
チェーン張力
チェーンガード
チェーン案内
チェーンケース
チェーン引き
チェーンディバイス
チェーンテンショナー
チェーングリップ
チェーン洗浄機器
脱脂剤
潤滑剤
チェーン速度 計算器
速度変動率
振動数計算器
応力繰返し数
チェーンは駆動軸(クランク軸)と距離の離れた軸(後輪軸)に動力を伝達できるという機能がある。また変速機(ディレイラー)でチェーンを移動させて駆動軸および被駆動軸のスプロケットの歯数を変えることによって、変速が出来るという機能もある。
» チェーン
種類および構造
自転車のチェーンにはローラチェーンおよびブッシュレスチェーンがある。ディレイラー用のチェーンは、ブッシュレスが多い。
ローラチェーン
チェーンは内リンクと外リンクで構成されている。 内リンクは内プレート(板)を穴の開いた前後(横から見ると左右)2個のブッシュで結合した構造となっている。ブッシュにはローラがはまっている。 ブッシュはチェーンを分解しないと見えない。ローラはブッシュを軸にして自由に回転する。このローラーはスプロケットの歯の溝に入って噛み合う。 外リンクは外プレートを左右2個のピンで結合した構造となっている。内リンクは内プレートを左右2個のブッシュで結合した構造となっている。 外リンクのピンは内リンクのブッシュの穴に入り、外リンクと内リンクを結合している。この一対のリンクは駒(こま)と呼ばれることがある。 1リンクの部品点数は、内プレート2個、ローラ2個、ブッシュ2個、ピン2個および外プレート2個の合計10個となっている。
ブッシュレスチェーン
内プレートのブッシュ穴の部分をプレスで押出して片方のブッシュを作る。左右の内プレートが合わさると左右の半ブッシュが合わさって、ブッシュができる。右図に内プレートおよびローラの断面を示す。1リンク当たりの部品数が2点(ブッシュ2個)だけ減り、8個となっている。左右の内プレートが一体となっていないので、横方向の柔軟性は少し良くなる。
雨に合うと、左右の半ブッシュ間のすき間から潤滑油が流出しやすい。
半こまチェーン
半こまだけを連結して作ったチェーン。チェーンの長さ調節が半こま(1ピッチ)単位でできる。一般のチェーンに比べて、質量はやや大きくなる。左写真の半こまチェーンは、軽量化のために中空ピンを使っている。単速であるBMX車に使われることがある。
半こま
チェーンは内リンクおよび外リンクを一対(駒)として作られている。この一対を1こま(2リンク)とすると、その半分のこま(1リンク)を半こまという。半リンクまたはオフセットリンクとも呼ばれる。チェーンのリンクの一端は内リンクの幅そして他端は外リンクの幅を持つ。半こまのピン間のピッチは内リンクおよび外リンクと同じ12.7mm。チェーンを1リンク分だけ増減するために使われる。ディレイラーの付いた自転車にはチェーンの張り調整の機能があるので必要ないが、チェーンの張りの範囲の狭い単速の自転車(BMX車など)に使われることがある。
中空ピン
軽量化のためにピンを中空にした中空ピンを使ったチェーンもある。
面取り
プレートの端面を面取り(角を取ること)しているチェーンもある。一方はクランクスプロケットで変速しやすいよう、他方は後輪スプロケットで変速しやすいように面取りがされており、左右非対称となっているので刻印のある側を外に向けて取り付ける。
カラーチェーン
着色したチェーン。着色したテフロンのコーティングなどで行われる。BMXバイクなどのチェーンに使われることがある。
寸法および質量
寸法
JIS D9417(自転車用チェーン)の寸法を表1そしてシマノの多段用チェーンの寸法を表2に示す。
(表が見切れるときは横にスクロールできます)
チェーン呼び (ピッチ x 内幅 inch) |
1/2 x 1/8 | 1/2 x 3/32 | 1/2 x 3/32 |
---|---|---|---|
形式 | ?(ローラ) | ?(ローラ) | ?(ブッシュレス) |
ピッチ | 12.7 | 12.7 | 12.7 |
内リンク内幅(最小) | 3.3 | 2.38 | 2.38 |
ピン長さ(最大) | 10.2 | 8.2 | 7.4 |
ローラ外径(最大) | 7.8 | 7.8 | 7.8 |
ピン外径(最大) | 3.66 | 3.66 | 3.66 |
ブッシュ内径(参考) | 3.68 | 3.68 | 3.68 |
内外プレート高さ(最大) | 9.9 | 9.9 | 8.7 |
用途 | 単段 | 多段 | 多段 |
チェーンのピンの芯間距離(ローラの芯間距離に等しい)をチェーンのピッチと言う。ピッチは3.175mm(1/8インチ)を基準寸法にして、その何倍かになっている。自転車用チェーンは、基準寸法の4倍になっている。従って、自転車用チェーンのピッチは、4 x 3.175 = 12.7mmとなっている。チェーンのピッチはスプロケットの歯のピッチと合致しなければならない。同表の内リンク内幅はスプロケットの歯厚と関係する。外リンク外幅はチェーンと隣のスプロケットの隙間に関係する。チェーンの長さはリンク数で表す。外装変速機のない自転車はリンク数が少なくてよい。
ナローチェーン
スプロケット間の間隔が狭くなった多段のスプロケット群(カセット)に適応するよう外幅を狭めたチェーン。デイレイラー用のチェーンは全てナロー(細幅)チェーンとなっている。次の2つの方法で外幅を狭めている。
(1) 標準のチェーンはピンがリンクより外に出た部分をかしめて、ピンとリンクの連結強度を上げているが、ナローチェーンはピン幅(長さ)をリンク外幅と等しくして、ピンが外リンクから突き出ないようにしている。
(2) リンクの板厚を薄くしている。
(表が見切れる場合は横にスクロールできます)
メーカ | 段数 | ピッチ | 内リンク内幅、a | 外リンク外幅、b | 質量[g/114リンク] |
---|---|---|---|---|---|
シマノ | 6,7,8 | 12.7 | 2.4 | 7.1 | 308 |
9 | 12.7 | 2.2 | 6.6 | 295 | |
10 | 12.7 | 2.2 | 5.88 | 275 | |
カンパニョーロ | 9 | 12.7 | 6.8 | 300 | |
10 | 12.7 | 5.9 | 255 | ||
11 | 12.7 | 5.5 | 242 |
リンク数
市販品のリンク数はメーカーによって異なり、116リンク、114リンク及び112リンクがあるが、114リンクが多い。
質量
各メーカーのディレイラー用のチェーンの質量を、使用するカセットスプロケットの段数に応じて右図のグラフに示す。メーカーによって質量を表しているリンク数が異なるので、110リンク当たりに換算してある。
1リンク当たりの平均質量は、1.9~2.8g。ここに、平均質量 = チェーン質量 / リンク数。例えば、116リンクの質量が304gなら、1リンクの平均質量は、304g/116リンク = 2.62g/リンク。
プレートおよびローラーがチタン合金製で中空ピンのチェーンが軽い。ピンもチタン合金にすればより軽くなるが 耐摩耗性を得るために、表面硬化処理したステンレス鋼を使っている。チタン合金は耐摩耗性に優れない。
性能および試験
JIS D9417(自転車用チェーン)に規定のある性能および試験を次に示す。
引張強さ
有効部分(つかみ装置に取付けていない部分)が5リンク以上の継手リンクを含まないチェーンの両端を、つかみ装置に取付け、破断に至るまで除々に引張り、そのときの最大張力を測定し、これを引張強さとする。 引張強さは8,000N以上のこと。
ピン抜け強さ
多段用チェーンは、片側の外プレートを外した試験片を受け具に置き、押し具でピン端に除々に力を加え、外プレートからピンが抜けるまでの最大力をピン抜け強さとする。ピン抜け強さは800N以上のこと。多段用チェーンにはスラスト力が働くが、単段用チェーンには働かないので規定はない。
部品 | ビッカース硬さ HV |
ロックウエル硬さ HRA |
---|---|---|
ピン | 520以上 | 76以上 |
ブッシュ | 520以上 | 76以上 |
ローラ | 380以上 | 70以上 |
硬さ
表面硬さは、表3のビッカース硬さまたはロックウエル硬さに適合しなければならない。
長さの許容差
リンク数が49リンク以上の塗油していないチェーン(両端は内リンクとする)の一端を固定し、他端に125Nの荷重をかけて測定したときのチェーン長さの許容差は、基準長さ(12.7mm x リンク数)の-0.08% ~ +0.24%のこと。
伝動効率
規定はないが、潤滑油を使用した状態での市販チェーンの伝動効率は、メーカー及び型式によって異なり、95~98%。例えば、動力が250Wの場合、250Wx(0.05~0.02)=12.5~5.0Wの伝動損失が生じる。
チェーンたるみ
停止時に、クランクスプロケット上部と後輪スプロケット上部を結ぶ直線の中央部よりもチェーンが垂れ下がっていること。
チェーンはピンの所でしか曲がれないのでスプロケットに於いて多角形運動をするため、それを吸収するためにチェーンにはたるみが必要。ディレイラーのない自転車は、チェーンの中央を押し上げたとき、1~2cm上がるたるみがあるのが適当。ディレイラー付きは、そのばねで張りを自動調整するようになっている。
ディレイラーのないチェーンのたるみ(張り)調整をする方法は、次の通り。
(A) チェーン引きを使う。
(B) チェーンテンショナーを使う。
(C) 偏心ボトムブラケットを使う。
(D) アジャスタブル ドロップアウトを使う。
チェーン互換性
シマノの8段用のチェーンは、9段、8段、7段、6段および5段のカセットスプロケット(後輪スプロケット)に使うことができる。8段用のチェーンは7段用のチェーンと同じ。9段用および10段用のチェーンは幅が狭いため他の段のカセットスプロケットには使えない。
チェーンライン
概要
チェーンを真上から見たときの、チェーンの中心線。一般には、フレーム芯からスプロケット群の中心までの距離をチェーンラインとよぶ。チェーンの斜め掛けを少なくするために、公称のチェーンラインはクランクスプロケットと後輪スプロケットで等しいことが望ましい。単速の自転車では前後スプロケットのチェーンラインを完全にあわせることが重要。
クランクスプロケット
チェーンラインは、前2段変速の場合は、2枚のスプロケットの中間までの距離(上図のC)。前3段変速の場合は、中間スプロケット芯までの距離(上図のC)。公称チェーンラインは、自転車の種類と変速機によって異なるが、40.5~50mm。
一般にロード車よりもマウンテンバイクのチェーンラインが大きい。マウンテンバイクはフレームの立管が太いこと及びタイヤが太いことなどがその原因。
ディレイラーのチェーンラインはスプロケットのそれと合っていることが必要。
シマノの部品のチェーンラインの例は、ロードバイクの2段は43.5mm、3段は45mmそしてマウンテンバイクは47.5mmまたは50mm。
現実のチェーンラインは変速によるチェーンの移動によって変わる。
後輪スプロケット
後輪つめ(ドロップアウト)間の中心をフレーム芯と見なす。チェーンラインはこのフレーム芯とスプロケット群(カセットスプロケット)の中心との距離。チェーンラインCLは、次式で求めることができる。
CL = d/2 - w/2 - c
CL: チェーンライン
d: つめ間隔
w: カセットスプロケット幅(下表)
c: つめと最小スプロケット間の距離
段数 | シマノ | カンパニョーロ |
---|---|---|
7段 | 31.9 | - |
8段 | 35.4 | 36.9 |
9段 | 36.3 | 38.2 |
10段 | 37.2 | 38.8 |
例えば、d=130mm、w=35.4mmそしてc=4.5mmの場合、CL = 130/2 - 35.4/2 - 4.5 = 42.8mm
ドライブトレイン
駆動列はドライブトレインと呼ばれることがある。駆動列はペダルで車輪を駆動するための一連の部品群のこと。ペダル、クランク、前スプロケット、チェーン、後スプロケットおよび後ディレイラーのプーリなどで構成されている(右図)。 トレインには列車の他に、列という意味がある。駆動列には潤滑が必要な部品が多い。
馬は左側から乗馬していたので、自転車も左側から乗るようにした。そのため、邪魔にならないようチェーンは自転車の右側にしたという説がある。
説とは関係なく、乗るときは足を上げるので右足が利き足の人は右からが乗りやすい。
チェーンの連結
チェーンの伸びによる新品との交換などのチェーン取付けの場合は、チェーンの外リンクがチェーンの進行方向の先頭となるようにスプロケットおよびディレイラーに通し、末尾の内リンクを差し込んで連結ピンで固定する。シマノのテストによれば、内リンクを先頭とするよりも耐久性及び信頼性が向上する。連結位置は、チェーンがクランクスプロケットから後輪スプロケットへ行く弛み側(下側)とする。チェーン向きは、刻印された記号が外側となる向きとする(下図)。
ピンの引き抜き及び押し込みにはチェーン工具を使う。工具を使わない連結リンクであるマスターリンクで連結することもできる。
連結ピン
1本のチェーンの両端を連結して、環状のチェーンとするためのピン。チェーンの外リンクと内リンクを連結することになるが、外リンクがチェーンの進行方向の先端となるように連結する。そうすると変速時に他のピンより小さな力が働き、相対的にピンが抜けにくい。工場生産されたピンよりも連結ピンが相対的に幾分抜けやすい。
シマノの連結ピン(写真)はリンクの穴に差し込みやすいよう案内部が付いているので、取り付け後、案内部は折って取る。
取り付け後、連結ピンは外リンクの両側からの出っ張りは均等であることを確認する。
連結ピンの本体幅は、5.6mm(10速)、6.5mm(9速)そして7.1mm(6,7,8速)。連結ピンはコネクティングピンまたはコネクターピンとも呼ばれる。
チェーン工具
チェーンのピンの着脱をする工具。チェーンを外すときはチェーンのピンを押して抜き、組み立てるときは連結ピンなどを押し込む工具。ねじ形およびプライアー形がある。ねじ形は工具のハンドルを回すと、チェーンのピンを押す工具ピンが動きチェーンのピンを押す。工具にはピンの位置決めのためにチェーンのローラを入れる谷(みぞ)のある山が付いている。外山および内山の付いた形および外山のみの形がある。外山はピンを抜くとき及び押し込むときに使う。一般にピンはチェーンの外リンクに付いている。ピンを抜いてしまうと新しいピンの取り付けが困難なので、ピンの一端はプレートに残しておき新しいピンで押し出す。ピンを押し込んだとき外リンクが内リンクに押し付けられて、リンク間の動きがかたくなる。その場合はローラを工具の内山の谷に入れて、ハンドルを約1/4回転だけ回して外リンクと内リンクの間にわずかなすき間を作って軽く動くようにする。チェーン切り又はチェーンカッターとも呼ばれる。チェーン切りの付いたマルチ工具もある。
» チェーン工具
マスターリンク
マスターリンクは、チェーン端同士を連結するためのリンク。(A)保持クリップ、(B)連結ピン及び(C)クイックリリースがある。
(A) 保持クリップ
伝統的なマスターリンクは(保持)クリップをラジオペンチでピンの溝に差込んで保持する。シティ車、単速車及びBMX車などに使われる。 外装変速機のカセットスプロケットを使っている自転車は、クリップとピンが隣のスプロケットと接触する可能性があるので使われない。
(B) 連結ピン
連結ピン(コネクティングピン)で連結する方式。マスターリンクと呼ばれるものはない。
(C) クイックリリース
工具を使わずにチェーンの内リンク同士を比較的容易に連結および取外しができるようにしたマスターリンク。チェーンを外して清掃および洗浄をしたい場合などに使われる。外装変速機のチェーンに使う場合は、多段のスプロケットをこすらないリンク幅であること。汚れおよび腐食などでマスターリンクを手で外すことが難しくなったときは、マスターリンクプライヤーという工具で外すことができる。メーカーは、独自の商品名を付けて販売しており、例えば、次のような名称のものがある。
クイックリンク
シマノの10速チェーン用のマスターリンク。片側の外プレートに左右のピンが付いているのが特徴。他社のマスターリンクは、左右の外プレートにそれぞれピンが付いている。連結の手順は、1.クイックリンクの外プレートを立てて外リンクの右のピンに入れて上に引く。2.外プレートを左に回して左のピンに入れる。3.チェーンを両側に引くと連結が完了する。
コネックスリンク
ウイッパーマン社(Wippermann、独)製チェーンのクイックリリースの外リンク。ピン穴は取付け用(ピン側の穴)と作動用があり、そのためV字形になっている。連結する2つの内リンクのそれぞれのブッシュにコネックスリンクのピンを左右から通し、ピンの溝をそれぞれ相手の取付け用の穴に入れてチェーンを引っ張ると、ピンは作動用のピン穴(外側の穴)に移って固定される。取外しは取付の逆であるが、取付けほどは簡単でない。
ミッシングリンク
台湾のチェーンメーカーであるKMC Chain Industrial社のチェーンの連結リンク(外リンク)。
連結する2つの内リンクのブッシュ穴にミッシングリンクのピンをそれぞれ差し込み、ブッシュを出たピンの溝に外リンクの穴を入れて、ピンと外リンクをペダルを踏んだ力で結合する。
ただし、結合および解体を容易に行うために、KMC社製のミッシングリンク プライヤーという工具もある(右図、プライヤーの柄は省略)。リンク(ピン)幅は、7.4mm(6,7速用)、7.1mm(8速用)、6.6mm(9速用)及び6.2mm(10速用)の4種類ある。
» ミッシングリンク
パワーリンク
SRAM社製チェーンのクイックリリースの外リンク。連結する2つの内リンクのそれぞれにパワーリンクのピンを左右から通し、それぞれ相手の取付け用の穴(内側の穴)に入れてチェーンを引っ張ると、ピンは作動用のピン穴(外側の穴)に移って固定される。SRAM社が買収したSachs社の名称。
パワーロック
SRAM社製チェーンのクイックリリースの外リンク。上記のパワーリンクの穴形状を少し変えている。連結する2つの内リンクのそれぞれにパワーロックのピンを左右から通し、それぞれ相手の取付け用の穴(内側の穴)に入れてチェーンを引っ張ると、ピンは作動用のピン穴(外側の穴)に移って固定される。8速、9速および10速用がある。
スマートリンク
BBBバイクパーツ社製チェーンのクイックリリースの外リンク。連結する2つの内リンクのそれぞれにスマートリンクのピンを左右から通し、それぞれ相手の取付け用の穴(内側の穴)に入れてチェーンを引っ張ると、ピンは作動用のピン穴(外側の穴)に移って固定される。8段チェーン用は銀色、9段チェーン用は金色そして10段チェーン用は黒色となっている。10段チェーン用はスマートロックとメーカーは名づけている。
チェーン噛み込み
チェーン噛み込み(チェーンサック)は、クランクスプロケット下方のチェーンがスプロケットから離れず持上げられて、スプロケットとチェーンステイの間にチェーンが噛み込まれる現象。 次の2つの場合がある。
- 小スプロケットで駆動しているときに起こる。
- 中間スプロケットから小スプロケットへチェーンを移動している時に起こる。
いずれも上り坂などの負荷の大きい状態でチェーンに泥などが入るなどして、チェーンとスプロケット間の摩擦力がチェーンの重さ及び後ディレイラーのばね力より大きくなり、スプロケットの下部でチェーンが歯から外れず持上げられて起こる。マウンテンバイクは歯数が少なく力が集中しやすいため起こしやすいが、ロード車でも起こる。
噛み込みを起こしにくくするために、プレートの形状を工夫したチェーンもある。マウンテンバイク用の各種の形のチェーン噛み込み防止板はあるが、完全に防止できるものはない。一例は、防止板にスプロケットの1段、2段および3段のチェーン位置に対応した切込み(赤の矢印)を設けている。チェーンステイを挟んでボルトで固定する。左右の穴列は軽量化穴。
チェーンの柔軟性
チェーンの横方向の柔軟性は、汚れ防止のために床に新聞紙などを置き、その上にチェーンの軸が水平になるように置いて、チェーン全体を水平面内で手で軽く曲げられるだけ曲げて、その直径を測ると分かる。剛性の大きいチェーンは直径が大きく、柔軟性のあるチェーンは直径が小さい。目安としてのチェーンの曲げ直径は、柔軟性の少ないチェーンでは800mmそして柔軟性の大きいチェーンでは300mmである。
前ディレイラーでは柔軟性の大きいチェーンが良いが、後ディレイラーではある程度の剛性がないとシフト時に所定のスプロケットにチェーンが掛からない可能性がある。一般には、ブッシュレスチェーンはローラチェーンよりも、柔軟性が大きい。
横方向の柔軟性の違いにより、スプロケット間のチェーンの移行(変速)特性が変わることがある。そのため、チェーンを交換したときは、ディレイラーの調整が必要なことが稀にある。新品のチェーンは磨耗したチェーンよりも柔軟性が小さい。
チェーン張力
チェーン張力
ペダル漕ぎによって、チェーンには張力が働く。チェーン張力はチェーンの張り側において、リンクを引っ張り合う力又は応力。チェーン張力はボトムブラケット(BB)軸受およびハブ軸受に対する負荷となる他、ハブ軸受の配置によってはハブ軸の曲げ力となる。
一般に、同一の動力を同一のケイデンスで伝達する場合、クランクスプロケットの歯数が多い(スプロケットが大きい)ほどチェーン張力は小さくなる。チェーン張力が小さい方が伝動効率は向上する方向となる。かつ、チェーン及びスプロケットの磨耗が減る方向となる。同一のギア比で比較すると、コンパクトクランクは標準クランクよりスプロケットが小さいためチェーン張力は大きくなる。
チェーン張力計算器
ペダル1回転における平均張力を求める計算器です。実際の張力は、ペダルの押し行程では平均より大きい。どの程度大きいかは、人によって異なる。
ペダル回転に与えた動力、ケイデンス(ペダル毎分回転数)およびクランクスプロケット歯数を半角数字で入れて、計算を押して下さい。入力した条件に対応したチェーン張力が計算できます。
- 計算例1
- 与えた動力が250W、ケイデンスが70rpmそしてクランクスプロケット歯数が39Tの場合、チェーン張力は431N(ニュートン)となっている。
- 計算例2
- 与えた動力が250W、ケイデンスが70rpmそしてクランクスプロケット歯数が42Tの場合、チェーン張力は400N(ニュートン)となっている。
この計算例でも分かるように、クランクスプロケットが大きいと張力は小さくなる。
チェーンガード
ズボンやスカートの裾などがチェーンに接触することによる汚れおよび噛み込みを防止することを意図したスプロケットおよびチェーンの覆い。クランクスプロケット下部から後輪スプロケットへ向かって出て行くチェーンも覆わなければ、チェーンの潤滑油による一般の長ズボンの裾のよごれは防止できない。円盤状でスプロケットに取り付ける形式もある。
材質は、アルミ合金、鋼およびクロモプラスチックなど。チェーン全体を覆うものはチェーンケースと呼ばれる。
チェーン案内
チェーン案内は、前ディレイラーの変速において、チェーンが脱落しないように案内する部品。メーカーは独自の商品名を付けており、例えば次のようなチェーン案内がある。
チェーンキャッチャー
Aceco Sport Group社の商品名。Paris-Roubaixなどの悪路のあるロード競技で、チェーンが振動して変速時に外れるのを防止することを意図している。直付け式およびクランプに直付けの座が付いた形式のディレイラーに取付できる。材質はアルミ合金。陽極酸化により着色しており、5色の種類がある。質量は10g。
ジャンプストップ
N-Gear社の商品名。フレームの立管に付属のクランプで固定する。適用できる立管の外径は、28.6~34.9mm。クランプ材質はFRPそして案内ブラケット材質はステンレス鋼。質量は30g。
案内ブラケットの上下位置の設定は次のように行う。チェーンを最小のクランクスプロケットおよび最大の後輪スプロケットに掛けて、チェーンのリンクピンが案内ブラケットの中央部を通るようにする。チェーンと案内ブラケットの間隔(すき間)は、1.5~2mmとする。
チェーンウオッチャー
Third Eye社の商品名。主用途はオフロードを走るマウンテンバイク。樹脂製のブラケットを付属のステンレス鋼製のホースクランプでフレームの立管に固定する。ホースクランプは樹脂本体の下部の環状のすき間から差込む。適用できる立管の外径は、28.6~34.9mm。質量は15g。
チェーンケース
チェーンによるズボンやスカートの裾などの汚れおよび噛み込みを防止するためのチェーン全体の覆い。チェーンの潤滑油が雨で流されたり、ほこりで汚れるのを軽減できる。主に、婦人用のシティ車に使われる。外装変速機の付いているチェーンには使えない。単速および内装変速機の自転車に使われる。チェーンの上部を覆っただけでは、スカートおよび長ズボンの裾はチェーンの潤滑油で黒く汚れる。
チェーン引き
後ディレイラーの付いていない単速の自転車及び内装変速機の付いた自転車の両側の水平つめに付けて、チェーンのたるみを調整する部品。チェーン引きによって後輪軸を前後に移動して調整する。つめの構造、厚さ、幅および軸径に合うものを選ぶ。チェーン引きの構成要素は、後輪軸の入るボス、ボスを引くねじおよびナットまたはボルト並びにねじをつめ先端に固定する止めである。チェーン長さは、車軸が水平つめの左右のほぼ中央に来る長さとする。
シティ車、BMX車およびトラックレーサーなどの単速車に使われる。チェーンタグまたはチェーンテンショナーということもある。
» チェーン引き
チェーンディバイス
丘下り(ダウンヒル)、クロスカントリーまたはスラロームなどを行うマウンテンバイクのチェーンの外れ及びばたつきなどの防止を目的とした器具の総称。各種の形式があり、そのメーカーおよび形式によってはチェーンガイドまたはチェーンケージなどとも呼ばれる。スプロケットの大きさに合うものを選ぶ。
質量は形式によって、120~350g。 バッシガード(バッシュガード)またはバッシリング(バッシュリング)を含めることもある。
構造の一例としては、クランクスプロケットへチェーンが入る部分に上部案内ローラ又はケージを付け、チェーンが出る部分に下部案内ローラを付ける。この上下の案内はブーメラン状の板に付け、板の中央の穴を外部ボトムブラケットのスペーサーを外した所へ取付ける。バッシガードを兼ねた円板をスプロケットの左右に付加したものもが多い。
» チェーンデバイス
チェーンテンショナー
垂直つめの付いた単速の自転車のチェーンに張りを与えるための部品。張りを与えるためにばねが内蔵されている。チェーンステイのつめに取付ける。プーリ数は1個(シングルプーリ)および2個(デュアルプーリ)がある。
シングルプーリ
1個のプーリが付いたアームによってチェーンを押して張りを与える。プーリに歯の付いている形および付いていない形がある。
デュアルプーリ
2個のプーリでチェーンに張りを与える。後ディレイラーの張りプーリと同じ機構となっている。チェーンはシングルプーリより長くなる。
チェーングリップ
輪行またはチェーン洗浄などのとき、後輪を外したつめに取付けて、チェーンを張りかつ後ディレイラーを適切な位置とするためのチェーンプーリ(右図の赤色部品)の付いたクイックリリース軸。
輪行時には、チェーンがフレームに当たることを防ぐことができる。
ロード車用(つめ間隔=130mm)およびマウンテンバイク用(つめ間隔=135mm)がある。
チェーン洗浄器(チェーンクリーナー)
チェーンを外すことなく洗浄できる器具。容器の中に設けたチェーンの上下に来る回転ブラシなどで構成されている。容器には脱脂剤(ディグリーサー)などの洗浄剤を入れる。たるみ側(下)のチェーンを挟み、自転車のクランクを逆回転させて容器の中をチェーンを通過させる。チェーンの動きで回転ブラシが回転する。
Barbieriが1983年に特許を取ったのが始まり。手ブラシとトレーなどの容器で清掃することもできる。チェーンの洗浄剤をチェーンクリーナーと呼ぶことがある。
脱脂剤
潤滑油およびグリースを除去するために溶解させる薬品。溶剤とほぼ同意語。各種の市販品がある。チェーンなどの部品の汚れた潤滑油の洗浄に使う。灯油をベースにしたものが多い。灯油そのものは安価であるが可燃性がある。爆発性は無い。ガソリンは爆発性があり、使用は禁物。
潤滑
潤滑剤には、潤滑油(ウエットルーブ)及びドライルーブがある。
潤滑油
潤滑油の目的は、金属表面に油膜を形成することによって、
- 金属同士の直接摩擦による磨耗を防止し寿命を長くすること。
2.摩擦係数を減少させて動力損失を少なくすること。
油種としては鉱油系、グリコール系およびエステル系などがある。チェーン専用の潤滑油は、チェーン潤滑油という。
チェーンの潤滑は潤滑油をピンとブッシュ間に浸透させる必要があるので、浸透性の大きいエステル系の潤滑油が向いている。潤滑後にチェーンに付着した潤滑油は、ぼろ布で拭取る。
新品のチェーンには工場で、防錆を兼ねてグリースをすき間まで浸透させて潤滑してあり、新たに注油しなくとも走行距離200km程度まで使うことができる。
ドライルーブ
フッ素樹脂(PTFE)、二硫化モリブデン又はグラファイトなどの固体潤滑物質粉末をバインダーとともに、溶剤または水に分散させた潤滑剤。溶剤の揮発又は水の蒸発によって、金属表面に固体潤滑皮膜が残る。ドライ付着のため、ほこり及び砂を吸着しない。雨で流されることもない。
チェーン速度 計算器
クランクのスプロケット歯数とペダル回転数を半角数字で入れて、[計算]を押して下さい
チェーンの速度が出ます。
- 計算例
- クランクスプロケット歯数が38Tそしてペダル回転数が70rpmの場合、チェーン速度は0.56m/s。
参考:チェーン速度 = 3.14 x スプロケットピッチ円直径[mm] x スプロケット回転数[rpm] / 60 / 1,000
参考資料:スプロケット「スプロケットピッチ円直径 計算器」(歯数からスプロケットピッチ円直径を計算する)
チェーン速度変動率 計算器
チェーン速度変動率計算器です。スプロケット歯数を半角数字で入れて、計算を押して下さい。チェーンの速度変動率が出ます。
- 計算例
- スプロケット歯数が30Tの場合、速度変動率は0.55%。
チェーンはピンの所でしか曲がれないので、スプロケットに於いて多角形運動をする。そのため、チェーンには速度変動が生じているが、変動率が小さいので人体には感じられない。
スプロケットの歯数が少ないほど、速度変動率は大きくなる。
計算した速度変動率をグラフにして右に示す。
チェーン振動数 計算器
チェーン振動数の計算器です。スプロケット歯数とペダル回転数を半角数字で入れて、計算を押して下さい。チェーンの振動数が出ます。
チェーンのスプロケットに於ける多角形運動のため、ローラがスプロケットの上端に来た時と、プレートの中央が上端に来た時では、チェーンの高さが少し異なる。そのためチェーンは微少な上下振動をするが人体には感じられない。
- 計算例
- スプロケット歯数が42Tそして回転数が70rpmの場合、振動数は49Hz。Hz(ヘルツ)は毎秒振動数の計量単位(ヘルツは人名なので、単位記号は大文字となる)。
チェーン応力の繰返し数
クランクのトルクを後輪に伝達するために、上のチェーンには張力が働く。
一方、下に来たチェーンは張力から開放される。このように、チェーンのリンクには繰返し張力に基づく繰返し応力が働く。
この応力の繰返し数は、走行距離、チェーンリンク数、後輪スプロケット歯数およびタイヤ外径で決まる。繰返し数は疲労に影響する。
チェーン応力の繰返し数の計算器を下に示す。
所定事項を半角数字で入れて、計算を押して下さい。チェーンリンクの応力の繰返し数が出ます。ただし、後輪スプロケット歯数は最も良く使うスプロケットの歯数を入れてください。
- 計算例
- タイヤ外径672mm、最も良く使う後輪スプロケット歯数15T、チェーンリンク数116リンクそして走行距離が3800kmの場合、応力の繰返し数は約23万回。
参考資料:金属疲労