概要
前ディレイラー
前キャパシティ計算器
後ディレイラー
後キャパシティ計算器
キャパシティの例
ケージ長
たすき掛け
概要
前ディレイラーおよび後ディレイラーに、それぞれキャパシティ(容量または能力)がある。前ディレイラーには最大キャパシティおよび最小キャパシティがあり、 後ディレイラーにはトータルキャパシティがある。
前ディレイラー
前ディレイラーの最大キャパシティは小スプロケットから大スプロケットへチェーンを持ち上げる能力を表している。
2段の場合
大スプロケットと3段の中間スプロケットで構成されているが、分かりやすくするために中間スプロケットを小スプロケットと名づけてある。必要キャパシティはクランクの大スプロケットと小スプロケットの歯数差として表され、次式で計算できる。
必要キャパシティ最大 = 大スプロケットの歯数 - 小スプロケットの歯数
3段の場合
必要最大キャパシティはクランクの大スプロケットと小スプロケットの歯数差として表され、次式で計算できる。
必要最大キャパシティ = 大スプロケットの歯数 - 小スプロケットの歯数
必要最小キャパシティはクランクの大スプロケットと中間スプロケットの歯数差として表され、次式で計算できる。
必要最小キャパシティ = 大スプロケットの歯数 - 中間スプロケットの歯数
例えば、クランクスプロケットの歯数が52_39_30Tである前ディレイラーの必要最大キャパシティ = 52T - 30T = 22T。必要最小キャパシティ = 52T - 39T = 13T。
キャパシティの例
前ディレイラーの最大キャパシティの例としてはロード車用が16Tそしてマウンテンバイク用が22Tなど。 マウンテンバイク用の大中間スプロケットの最小キャパシティは12T(又は10T)など。 例えば、大スプロケットの歯数が48Tの場合、48T-12T=36Tより中間スプロケットの歯数は36T以下でなければならない。
また、48T-22T=26Tより小スプロケットの歯数は26T以上でなければならない。なお、公称キャパシティに対して、メーカーは2T程度の余裕を見ている。
前キャパシティ 計算器
前ディレイラーの必要キャパシティを求める計算器です。
クランクスプロケットの大、中間(ない場合は空白)および小スプロケット歯数を半角数字で入れて、計算を押して下さい。前ディレイラーの必要キャパシティが出ます。
- 計算例1 (2段)
- クランクスプロケットの歯数は50_38Tの場合、必要キャパシティは12T。
- 計算例2 (3段)
- クランクスプロケットの歯数は52_39_30Tの場合、必要最大キャパシティは22Tそして必要最小キャパシティは13T。
後ディレイラー
後ディレイラーのキャパシティは後ディレイラーがチェーンのたるみを取る能力です。キャパシティは後ディレイラーのケージ長さおよび平行四辺形のリンクで決まる。
必要キャパシティを満足する型式の後ディレイラーを選定する。
以下の式でわかるように、必要キャパシティはスプロケットの歯数差で決まり、歯数そのものとは直接の関係はない。
標準
後ディレイラーの必要キャパシティはクランクスプロケットの最大歯数差と後輪スプロケットの最大歯数差の合計として表される。後ディレイラーの必要(トータル)キャパシティを式で表すと
必要(トータル)キャパシティ = (前スプロケットの最大歯数差) + (後スプロケットの最大歯数差) = (前スプロケット最大歯数 - 前スプロケット最小歯数) + (後スプロケット最大歯数 - 後スプロケット最小歯数)
たすき掛けしない場合
チェーンのたすき掛けをしなければ、実質的なキャパシティはそれだけ少なくてよい。たすき掛けをしない場合の必要キャパシティは次式で求められる。
たすき掛けをしない場合の必要キャパシティ = (前スプロケット最大歯数 - 前スプロケット最小歯数) + (後スプロケットの2番目に大きい歯数 - 後スプロケットの2番目に小さい歯数)
本来、長ケージが必要な場合でもたすき掛けをしなければ短ケージが使える場合がある。 ただし、意図せずたすき掛けをした場合のリスクは残るが、メーカーは2T程度の余裕を見ているので定格キャパシティと2Tの違いは問題ない。
一般に、段数が多いほど、必要キャパシティは大きくなる。また、ワイドレシオはクロウスレシオよりも必要キャパシティは大きくなる。必要キャパシティが大きいと、シフト速度はやや遅くなる。
参考資料:スプロケット群のレシオ
後キャパシティ 計算器
後ディレイラーの必要(トータル)キャパシティを求める計算器を示す。
クランクスプロケットの大および小の歯数並びに後輪軸スプロケットの最大および最小歯数を半角数字で入れて、計算を押して下さい。後ディレイラーの必要キャパシティが出ます。
- 計算例1 (前3段)
- クランクスプロケットの歯数は52_39_30Tそして後輪スプロケットの歯数は12_13_14_15_16_17_18_19_21Tの場合
- クランクスプロケットの最大歯数は52Tで最小歯数は30Tそして後輪スプロケットの最大歯数は21Tで最小歯数は12Tであるから必要キャパシティは31T。
- 計算例2 (前2段)
- クランクスプロケットの歯数は46_34Tそして後輪スプロケットの歯数は12_13_14_15_17_19_21_24_27Tの場合
- クランクスプロケットの最大歯数は46Tで最小歯数は34Tそして後輪スプロケットの最大歯数は27Tで最小歯数は12Tであるから必要キャパシティは27T。
- このように、前2段は前3段より必要キャパシティは小さくなる。
- 計算例3 (前1段)
- クランクスプロケットの歯数は36Tそして後輪スプロケットの歯数は13_14_15_16_17_19_21_23Tの場合
- クランクスプロケットの最大歯数は36Tで最小歯数も36Tそして後輪スプロケットの最大歯数は23Tで最小歯数は13Tであるから必要キャパシティは10T。
このように、前1段の場合は、クランクスプロケット歯数はキャパシティに無関係となり、後輪スプロケット歯数のみで必要キャパシティは決まる。 - 計算例4 (たすき掛け無し)
- スプロケット歯数は計算例1と同じで、たすき掛けをしない場合の必要キャパシティを求める
後輪スプロケット最大歯数として2番目に大きい歯数(19T)そして最小歯数として2番目に小さい歯数(13T)を使う。必要キャパシティは28Tとなる。
参考資料:多段キャパシティ計算器
キャパシティの例
後ディレイラーのケージ長に対応するキャパシティの一例を表1に示す。
車種 | ケージ長 | ||
---|---|---|---|
短ケージ | 中ケージ | 長ケージ | |
ロード車 | 29T(SS) | - | 37T(GS) |
MTB | - | 33T(GS) | 43T(SGS) |
ケージ長はメーカーにより少し異なり、キャパシティも異なる。ロード車用の中ケージを出しているメーカーもある。
短ケージの利点は、
- 変速がやや早い。
- やや(10グラム程度)軽い。
- 騒音が少ない。
- オフロードの場合は、地上の障害物から離れる。
ケージ長
後ディレイラーにおいて、案内プーリと張りプーリの芯間距離はケージ長という(右図)。
ケージ長には、短(ショート)、中(ミディアム)および長(ロング)がある。それぞれのケージは、短ケージ、中ケージおよび長ケージと呼ぶ。ケージ長が大きいほど、ディレイラーのキャパシティは大きくなる。
ケージ長はメーカーによって異なるが、一例を表2に示す。
ケージ種 | 短ケージ | 中ケージ | 長ケージ |
---|---|---|---|
ケージ長 | 50mm | 74mm | 86mm |
たすき掛け
チェーンが前最小スプロケットと後最小スプロケット(小-小スプロケット)に掛かっているか、または前最大スプロケットと後最大スプロケット(大-大スプロケット)に掛かっている状態。
これらの状態では、チェーンは最大角度の斜め掛けとなる。たすき掛けをすると伝動効率が悪く、かつスプロケットおよびチェーンが磨耗しやすい。たすき掛けのギア比と同等のギア比は中間スプロケットで得られる。
たすき掛けは、ケージ長には影響しない。