動力の伝動
自転車においてペダルから離れた車輪を駆動するには、クランク軸から車輪へ動力を伝動する必要がある。その伝動機構で分類すると、実用化されている伝動方式としてチェーン駆動、ベルト駆動およびシャフト駆動がある。
チェーン駆動
チェーンとスプロケットの組み合わせで動力を伝達する方式。大部分の自転車がこの方式を採用している。
参考: チェーン
ベルト駆動
概要
チェーンの代わりに、歯付ベルトを使って駆動する方式。スプロケットの代わりに、プーリに歯の付いた歯付プーリを使う。チェーンのように注油や清掃がいらないので、シティ車および折りたたみ自転車などに使われる。伝動効率は約98%で、チェーン駆動の伝動効率とほぼ等しい。中央の写真のつめ間隔は130mm。変速が必要な場合は、内装変速機を使う。
歯付ベルト
平ベルトの内側に特殊台形の歯の付いたベルト。歯付プーリと組み合わせて使う。ベルト駆動自転車に使われる歯付ベルトの歯のピッチは8~13mm程度。下表に歯付ベルトのピッチの規格を示す。
記号 | XL | L | H | XH | XXH |
---|---|---|---|---|---|
ピッチ[mm] | 5.080 | 9.525 | 12.700 | 22.225 | 31.750 |
材質はポリウレタンゴムまたはネオプレンゴムなど。動力伝達の多くは中に埋めたコードで行う。注油が必要ないので保守の手間がかからない。伝動効率は潤滑の良好なチェーンとほぼ等しい。チェーンのように伸びによる寿命がないので、寿命はチェーンより長い。規格はJIS K6372(一般用歯付ベルト)。
歯付プーリ
円筒の外周に台形の歯がベルトの歯と同じピッチで付いたプーリー。離れた2個のプーリー間に無端の歯付ベルトを掛け、一方のプーリー軸(クランク軸)より他方のプーリー軸(後輪ハブ)へ動力を伝達する。ベルトが外れないよう、プーリーの両端にはフランジが付いている。規格はJIS B1856(歯付プーリ)。
ベルト装着
ベルトを装着するために、フレーム(右側のシートステイとチェーンステイの間)にベルトを挿入する隙間を必要とする。フレームの隙間を開けてベルトを入れ、隙間を閉じる。そのために、一般にはドロップアウトに於いて隙間を作るために、ドロップアウトは上下または左右などに分割できるようになっている。中にはドロップアウトで分割せず、チェーンステイ下部で分割してドロップアウトをシートステイ及びチェーンステイにボルトで固定することによって連結する形もある。
変速機
変速機としては、内装変速機(ハブギア)が使われるが歯付ベルト用の変速機もある。歯付ベルトに対する変速機としては、独のEckart Hettlageが発明して商品化したhettlage driveと呼ばれるものがある。歯付プーリをピザを切るように10分割している。内側の三角形の部分は必要ないので付いていない。それらを半径方向に動かし直径を変えることにより変速する。この可変歯付プーリは半径方向の溝にそって移動し、段階的に所定位置で固定されるようになっている。歯付ベルトは分割した歯付プーリの歯とかみ合わなければならないので、変速は段階的となり無段変速はできない。変速範囲は240%となっている。
シャフト駆動
概要
クランク軸および後輪ハブにかさ歯車を付け、両端にそれらとかみ合うかさ歯車を付けたシャフトによって後輪ハブへ動力を伝達する。かさ歯車を使うことにより、直角方向の軸に回転を伝達できる。伝動がより円滑なまがり歯かさ歯車も使われる。
歴史
シャフト駆動の自転車は1890年代にフランスで発明された。
変速
変速手段としては後輪の内装変速機(ハブギア)を使う。変速段数は市販(シマノ製が多い)の内装変速機の段数になる。
利点
- 密閉構造が容易なこと。
- 動力伝達効率がチェーンよりは良いこと。ただし、内装変速機まで含めた効率は大差ない。
- 動きが連続していること(チェーンは多角形運動のためいくらかの速度変動がある)。
- 保守に手間がかからないこと。
- チェーンの潤滑油によるズボンの裾の汚れがないこと。
欠点
質量が1kg程度大きくなること及び製造原価が高くなること。
メーカー比較
軸駆動自転車のメーカー3社の製品比較を表1に示す。
(表が見切れる場合は横にスクロールできます)
メーカー | Zero Cycles(英国) | Dynamic Bicycles(米国) | Biomega(デンマーク) |
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車種 | シティ車、折り畳み自転車 | クロスバイク、折り畳み自転車、クルーザー | シティ車 |
特徴 | 軸筒とチェーンステイは独立 | 軸筒とチェーンステイは独立 | 軸筒とチェーンステイが一体 |
変速機 | シマノ3速(折り畳み車)、7速(シティ車) | シマノ7速、8速 | シマノ3速、SRAM7速 |
注) 外観においては、回転軸(シャフト)は軸筒の中にあるので見えない。