剛性とは
剛性は物体を変形(曲げ、ねじりなど)させるのに要する外力の大きさ。高剛性のフレームや部品は、同じ変形をさせるのに大きな外力を必要とする。同じ外力に対しては、変形量が小さい。
剛性は材料の特性(具体的には縦弾性係数)および形状(具体的には断面係数)によって決まる。炭素鋼、チタン、アルミおよびCFRP(炭素繊維強化樹脂)の剛性を比較すると、チタンは炭素鋼の1/2強、アルミは炭素鋼の1/3強そしてCFRPは炭素鋼の約60%でチタンよりやや大きい。フレームを構成する管の形状についてみると、質量が同じなら外径を大きくして肉厚を薄くすると剛性は大きくなる。クランクの場合、質量が同じなら中空にして幅を大きくすると剛性が大きくなる。
フレームの剛性には、縦(垂直)剛性および横剛性があるが、一般に縦剛性が大きいと横剛性も大きい。競技者(プロ)には、フレーム並びにクランクやクランク軸など各種部品も、剛性が大きい(高剛性)ものが力の損失が少なく、かつ加速性も良いとして好まれる。
管の剛性比 計算器
フレームを構成する仕様の異なる2本の管、A管とB管の剛性および質量を比較する計算器です。ここでの仕様の違いは、材質、外径および肉厚です。フレームの剛性は材質だけでは決まらないことを示している。管の長さも影響するが、省略している(A管とB管は同一長さとしている)。
計算結果として、A管の剛性および質量を「1」とした場合のB管の剛性および質量が出ます。質量比は軽さの比率です。
両管の材質を選定後、それぞれの管の外径および肉厚を半角数字で入力して、[計算]を押してください。計算結果として、比率が表示されます。
- 計算例 1
- A管の材質はクロムモリブデン鋼(クロモリ鋼)そしてB管はアルミ合金とする。両管とも、外径は25.4mmそして肉厚は1mmとし、剛性と質量の比較をする。
- 【計算結果】
- B管の剛性比は0.35となる。つまりアルミ合金管の剛性はクロムモリブデン鋼管の35%となる。質量比は0.35でクロムモリブデン鋼管の35%と軽い。
- 計算例 2
- A管は計算例1と同じく材質はクロムモリブデン鋼とし外径は25.4mmそして肉厚は1mmとする。比較するB管の材質は計算例1と同じアルミ合金とし、外径および肉厚をいくらにすればA管と剛性が等しくなるか試行錯誤で求める。
- 【計算結果】
- B管の外径は40mmと大きくし、肉厚は1.1mmに厚くする。B管の剛性比は1となりA管と等しくなる。しかし、太くなっているので空気抵抗はやや大きくなる。質量比は0.61でA管の61%となる。
フレームサイズの影響
概要
管が長くなると剛性は低下する(しなやかさは大きくなる)。フレームサイズにかかわらず(フレームサイズが異なっていても)、形式が同じなら一般にフレームの管として同じ外径および肉厚の管を使っている。そのため、相対的に大フレームサイズのフレームは剛性が小さくなり、小フレームサイズのフレームは剛性が大きくなっている。
体重の影響
大フレームサイズに乗る大柄な人は体重も大きいためフレーム変形があってしなやかなフレームと感じても、小フレームサイズに乗る小柄な人は体重も小さいからフレームの変形が少なく、よけいにしなやかでないと感じる。そのため、同一メーカーの同一形式の自転車であっても、体形および体重を無視してしなやかさを比較できないことになる。フレームに対する印象を聞く場合は、フレームサイズ及びその人の体重を考慮しなければならない。
フレームサイズと剛性
上のグラフはDamon Rinardが1996年に約60台のフレームに荷重を加えてフレーム変位を測定したデータを打点したもの。縦軸にフレームの変位を取り、横軸にフレームサイズを取ってある。同図の赤色点はクロモリ鋼製、水色点はアルミ合金製、黄色点はチタン合金製そして黒色点はCFRP(炭素繊維強化樹脂、俗にいうカーボン)製を表している。フレームサイズが大きくなると、剛性が小さくなる(しなやかさが大きくなる)という傾向が見える(2本の黄色の線で示した)。材質の違いによる明確な剛性の違いは見られない。
試験はフレームをボトムブラケット(BB)で支持し(上図)、頭管およびチェーステイ爪に付けた軸にそれぞれ215Nの荷重を加え、その変位Aおよび変位Bをダイヤルゲージで計測し、その合計(A+B)をフレーム変位としたもの。試験したフレームは全てメーカーおよび形式が異なっている。同一メーカーの同一フレームの異なるフレームサイズに関して試験すれば、もっと明確な結果がでるかも知れない。
縦横の剛性
フレームの横方向(水平)の剛性はペダルからの動力の受け入れに影響し、縦方向(垂直)の剛性は乗り心地に影響する。しかし、これらを独立に変えることは困難であり、水平剛性を大きくすると垂直剛性も大きくなる。