概要
エンド幅
つめ
チェーンステイブリッジ
チェーンステイすき間
チェーンステイ長
かかと隙間
チェーンステイ角
チェーンステイ角計算器
最短チェーンステイ長 計算器
非対称チェーンステイ
チェーステイガード
概要
チェーンステイは、後ろ三角を構成する左右一対の管で、その後端のつめ(爪)には後輪の車軸が付く。ボトムブラケット後方にはチェーンステイブリッジが付く。ステイは支えのこと。
長さはタイヤが立管または泥よけに当たらないだけの最小長さが必要。
チェーンステイ長はホイールベースに影響し、長い方が曲がり走行および直線走行での走行安定性がある。
走行時にはチェーンステイには張力が働いている。
エンド幅
後輪の付く爪(ドロップアウト)の内面間距離はエンド幅と呼ばれ、ハブのロックナット間距離(OLD)に対応する。
エンド幅は、車種および後輪スプロケット数に応じて110、120、126、130、135、145および160mmがある。
クイックリリースの付いた車軸に対しては、エンド幅 = ロックナット間距離 + 2mm とする。
つめ
チェーンステイの先端には車軸を取り付けるためのつめ(爪)またはドロップアウトと呼ばれる金属製の板が付いている。つめには車軸が入るよう、かつチェーンを外さずに車輪を外せるようによう切込み(溝)がある。つめには垂直つめ及び水平つめがある。安価なシティサイクルは、チェーンステイの管端をつぶしてつめとしている。
垂直つめ
つめの切り込みが垂直または半垂直の形。車軸を前後に動かしてチェーンの張りを調節できないので、ディレイラー付の自転車に使われる。車軸位置が確定しているので車輪の取付けは行いやすい。右つめにディレイラーを付けるハンガーが付いている。独立のハンガーをボルトで固定する形もある。立つめとも呼ばれる。
水平つめ
つめの切り込みが水平または半水平の形。車軸を前後に動かしてチェーンの張りを調節できる。ディレイラーの付いていない自転車に必要。トラックレーサーおよびBMX車のような単速の自転車、ディレイラーのないシティ車および内装変速機付き自転車に使われる。
つめの開口が後方に向いている形は正つめ、そして前方を向いている形は逆つめと呼ばれる。
正つめ : トラックエンドは一種の水平正つめ。
逆つめ : 水平逆つめは主にロードレーサーに使われたが、ほとんどが垂直つめに置き換わった。
後つめ内側間隔
JIS D9401(自転車-フレーム)によれば、後つめ(JIS用語)内側間隔の振分け中心は、フレーム中心面から3mm以下でなければならない、かつ左右の後つめの溝の上下または左右のずれは1mm以下でなければならない。
チェーンステイブリッジ
泥よけ取り付けおよび補強のために、ボトムブラケット(BB)後方(後輪タイヤ前方)において左右のチェーンステイを連結している管または平板などの部品。タイヤ交換時に、タイヤが左右のチェーンステイ間に不注意に挟まれないようにする機能もある。下ブリッジとも言う。
一般に、後輪軸芯から下ブリッジまでの距離は、後輪軸芯下から上ブリッジ(シートステイブリッジ)までの距離に等しい。
これは、タイヤと上下のブリッジのすき間を等しくするため。チェーンステイブリッジ が付いていないフレームもある。
チェーンステイすき間
チェーンステイには次の4箇所のすき間が必要。
- チェーンステイとクランク背面の横方向のすき間(c)
- ボトムブラケットの軸長、クランクの形状・寸法およびチェーンステイの形状・寸法で決まる。
Qファクターが影響する。 - チェーンステイと前スプロケット背面の横方向のすき間(s)
- ボトムブラケットの軸長、スプロケットの歯数(大きさ)およびチェーンステイの形状・寸法で決まる。
最小スプロケットを内側にすると、チェーンステイと当たりにくい。 - チェーンステイとタイヤ側面の横方向のすき間(t)
- タイヤ幅およびチェーンステイの形状・寸法で決まる。マウンテンバイクのチェーンステイは、幅広のタイヤに適応できること。
- チェーンステイブリッジとタイヤ踏面の縦方向のすき間(b)
- タイヤ外径およびチェーンステイブリッジの位置で決まる。マウンテンバイクのブロックタイヤに適応できること。
チェーンステイ長
概要
チェーンステイ長はボトムブラケット芯(クランク軸心)と後輪軸心の距離。リアセンターと等しい。ホイールベースに影響する。
後輪(及び泥よけ)が立管に当たらない長さが必要。
長いチェーンステイの利点
(1) フレームと平行のチェーンラインから外れた変速においても、チェーンの横方向の傾き角が小さくなり、磨耗および伝動損失の低下が少ない。
(2) 後輪はサドルから遠ざかるので乗り心地は良い方向となる。もし、サドルが後輪近くにある自転車があると乗り心地は悪い。
(3) ホイールベースが長くなり、走行安定性が向上する。特に、下り坂での安定性が向上する。チェーンステイの長い自転車は走行安定性を重視していると考えてよい。
(4) チェーンによる隣のスプロケットの擦り及び誤シフトの可能性が少ない。
(5) パニアを乗せる旅行車は、かかと隙間が大きくなるので望ましい。
短いチェーンステイの利点
(1) チェーンステイが短いと剛性は大きくなる。例えば1本の割り箸は指で曲げられるが、短くすると曲げにくくなる。
(2) チェーンステイ、チェーンおよびシートステイが短くなり軽くなる。
実際のチェーンステイ長
(図がありません)
右図に、各種自転車に関しホイールベースとチェーンステイ長の関係を示す。これは各社の寸法図のデータを打点したもの。茶色の点はシティ車、黄色の点は旅行車、緑色の点はクロスバイク、赤色の点はマウンテンバイクそして黒色の点はロード車を示す。この車種順にチェーンステイは短くなっている。ロード車の中にもチェーンステイが長いものがある。同じフレームサイズでも、メーカーによってチェーンステイ長は異なっている。 ホイールベースが長くなるに従い、チェーンステイも長くなる傾向が見られる。 フレームサイズが大きくなるに従い、チェーンステイもやや長くなる傾向が見られる。 車種毎にこれらのメーカーのチェーンステイ長の平均を求めると、 シティ車は約470mm、旅行車は約445mm、クロスバイクは約430mm、マウンテンバイクは約425mmそしてロード車は約415mmとなっている。
チェーンステイ長及びチェーンライン
(表がありません)
表1及び表2にチェーンラインに影響する要因を示す。その要因はOLD(ロックナット間距離)、クランクスプロケット歯数及びカセットスプロケット歯数。これらの要因によってはチェーンが隣のスプロケットを擦るか又は誤シフトを起こす。表の R は擦るか又は誤シフトすること、 M は擦る可能性があること、そして OK は擦らないことを示している。
かかと隙間
かかと(踵)とパニアの隙間はかかとすき間と言う。靴のかかとでパニアをこすらないように、かかと隙間が必要。 かかと隙間はチェーンステイ(リアセンター)が長いと大きくなる。旅行車はチェーンステイが長いもの(440mm以上)が望ましい。チェーンステイ長が大きいと、ホイールベースも大きくなり走行安定性も良くなる。かかと隙間が大きくなるよう、かかとの回転半径を考慮して、パニアの形状を決めたものもある。すなわち、パニアの下部前方をへこませると、かかと隙間は大きくなる。
チェーンステイ角
チェーンステイ角には次の2種類がある。
チェーンステイが水平線となす角度(a角)
これは一般的な定義。一般にチェーンステイ角と言えばこの角度のこと。マウンテンバイクはボトムブラケット(BB)下がりが小さい(BB高さが大きい)ため、チェーンステイ角は小さくなっている。
チェーンステイが立管となす角度(b角)
シマノの前ディレイラーの仕様においては、この角度をチェーンステイ角と呼んでいる。
チェーンはチェーンステイに沿って走るため、立管に固定する前ディレイラーのケージ(チェーンガイド)とチェーンの位置関係が適切となるディレイラーを選ぶ。
前ディレイラー仕様の立管-チェーンステイ角(b角)はロード車で61°~66°そしてマウンテンバイクで63°~66°および66°~69°となっている。
チェーンステイ角計算器
立管-チェーンステイ角が計算できます。その角度に対応する前ディレイラーの選定ができます。
チェーンステイ長からシート角までの3項目を半角数字で入れて、[計算]を押して下さい。チェーンステイ角および立管-チェーンステイ角が計算できます。
- 計算例
- チェーンステイ長420mm、ボトムブラケット下がり70mm、そしてシート角74°の場合、チェーンステイ角は9.6°そして立管-チェーンステイ角は64.6°となる。従って、前ディレイラーは、ロード車用(61°~66°)およびマウンテンバイク用(63°~66°)の何れも使うことができる。
- チェーンステイ長 C
- ボトムブラケット芯と後輪軸心の距離。
- ボトムブラケット下がり B
- 前輪と後輪の軸心を結ぶ直線とボトムブラケット芯の垂直距離。ボトムブラケットが直線より上にある場合は、マイナスを付ける。
- シート角 s
- 立管(シートチューブ)が水平線となす角度。
- チェーンステイ角 a
- ボトムブラケット芯と後輪軸心を結ぶ直線が水平線となす角度。
- 立管-チェーンステイ角 b
- ボトムブラケット芯と後輪軸心を結ぶ直線が立管となす角度。
最短チェーンステイ長 計算器
車輪または泥除けが立管に当たらないための最短チェーンステイ長が計算できます。ただし、マウンテンバイクには使えません。
泥除け又はタイヤ半径からシート角までの4項目を半角数字で入れて、[計算]を押して下さい。最小チェーンステイ長、有効チェーンステイ長およびチェーンステイ角が計算できます。
- 計算例
- 泥除け半径360mm、立管すき間20mm、ボトムブラケット下がり70mmそしてシート角73°の場合、最短チェーンステイ長は424mm、有効チェーンステイ長は419mm、チェーンステイ角は9.4°そして立管-チェーンステイ角は63.6°となる。従って、チェーンステイ長は、424mm以上とする。
- 泥除け又はタイヤ半径 R
- 泥除けがない場合はタイヤ半径。
- 立管すき間 D
- 立管表面と泥除けまたはタイヤ間の最小すき間。
- ボトムブラケット下がり B
- 前輪と後輪の軸心を結ぶ直線とボトムブラケット芯の垂直距離。
- シート角 s
- 立管(シートチューブ)が水平線となす角度。
- 最短チェーンステイ長 C
- ボトムブラケット芯と後輪軸心の距離の最短値。
- 有効チェーンステイ長 A
- ボトムブラケット芯から後輪軸心までの水平距離。
- チェーンステイ角 a
- ボトムブラケット芯と後輪軸心を結ぶ直線が水平線となす角度。
- 立管-チェーンステイ角 b
- ボトムブラケット芯と後輪軸心を結ぶ直線が立管となす角度。
非対称チェーンステイ
右側と左側が対称でないチェーンステイ。右側は駆動側のため左側より大きな力が働くため、例えばチェーンステイの断面形状を変えている。
チェーステイガード
チェーンステイがチェーンで打たれる騒音および傷の発生を防止するための覆い。材質はネオプレンゴム、ポリウレタンおよびCFRPなどで、裏面に接着剤が付いている。模様および色は各種ある。
オフロードの悪路を走るMTBおよびBMXバイクに使われる。チェーンステイプロテクターとも呼ばれる。