概要
前照灯は「JIS C9502 自転車用灯火装置」及び道路交通法の用語。道路交通法施行令第18条では灯火と呼んでいる。灯火には前照灯および尾灯が含まれる。
ハンドル、頭管(ヘッドチューブ)またはフォークに付けて、下記の目的で前方を照らす照明器。ロード用及びオフロード用がある。
容易に取り外しの出来る前照灯は、夜間の点検および修理のための照明としても使うことができる。
構成
本体(ボディ)、ランプ、レンズ、反射器及び電気回路で構成されている。
取付のためのブラケットが付いている。
予備電球が格納できる構造でなければならない(「JIS C9502 自転車用灯火装置」)。
目的
前方を照らす目的は、
- 前方通路(ロード又はオフロード)を照らし、道路、人物、自転車、車輌、および障害物等が視認できるようにする。
- 自動車やバイクなどに、存在を知らせる(自転車事故の多くは、ランプを点灯していない自転車で起きている)。
法規制
「車両等は夜間、道路を通行するとき次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める灯火をつけなければならない。」(道路交通法施行令第18条)
光度は400カンデラ以上でなければならない(「JIS C9502 自転車用灯火装置」)。
「軽車両は、公安委員会が定める灯火」(道路交通法施行令第18条)。
自転車を軽車両と見なすと、次の規定が適用される。
「白色又は淡黄色で、夜間、前方10メートルの距離にある交通上の障害物を確認することができる光度を有する前照灯。」(公安委員会規則)
光源の色
前照灯から放射される光線の色は、白色光または淡黄色光。目で見える点滅をしてはならない。(「JIS C9502 自転車用灯火装置」)。
電源
電源は発電機、乾電池または蓄電池で、電圧は1.5~6Vそして定格電力は2.4~6W。
ランプの付いた本体に電池を入れる形および電池パックと配線で接続する形がある。
電池の残量を表示できるもの及び残量が少なくなると警告表示が出るものもある。
磁石を回転する金属リムに近づけると発生する渦電流(エディカレント)によって発電して点灯させる前照灯がある(Magnic Light)。
フォークに取り付ける。機械的な摩擦損失がなく、軽量で配線を必要としない。フルカーボンのリムには使えない。
電球
白熱ランプまたはハロゲンランプが使われるが、ハロゲンランプが寿命が長い。
HIDランプが使われることもある。
LEDランプも普及している。必要な明るさを得るために、LEDを2~6個並べている。
LEDランプ及びハロゲンランプを上下に並べて、前照灯上部のスイッチで切り替えできる形がある。
明るさ
明るさの単位としては、ルーメン、カンデラおよびルクスがあるが、ルーメンで表示しているメーカーが多い。
その明るさはメーカーのホームページより、200~2500ルーメン、480~2450カンデラおよび140~550ルクス。
一般にマウンテンバイク用は明るい。夜間の競技では、1200ルーメン以上の明るさがあると有利。LEDの数を増やすと明るくなる。
オフロード用の前照灯には、明るさを3段階に切替えできる形もある。
発光効率にもよるが、明るいほど消費電力は多い。3分間だけ最大の明るさとする機能の付いたものもある。
ボタンを押すごとに次のように明るさ及び電池消耗時間(ランタイム)が変わる形がある。
(1) 750 lm、2h、 (2) 450 lm、4h、 (3) 300 lm、6.5h 及び (4) 100 lm、21h。
風速センサーにより走行速度を検知して、明るさを変える形がある。早いほど明るくする。電池の節電を目的としている。
明るさを測定する計器として、照度計がある。
前照灯の質量当たりで最も明るいものは、8 ルーメン/グラム。
効率
電源の持つエネルギーが可視光のエネルギーに変換される割合。LEDランプは効率が良い。
赤外線及び紫外線に変換されたエネルギーは無駄になる。
照射パターン
前照灯の照射角(ビーム角)は10°~30°。ロードでは狭角そしてオフロードは広角が向いている。
照射角を3段階に切り替えられるものもある。ビームの形状を円錐ではなく横に広い楕円錘にしたもの又はレンズの中央に穴を開け光軸部を特に明るくしたパターンなどもある。
照射位置を高と低に切り換えできる形がある。
照射パターンは、前面カバーのレンズ、ランプのレンズ及び後方カバーの反射器(リフレクター、上図)などで作っている。
点滅
点滅(フラッシング)モードの付いたものもある。電気エネルギーをキャパシターに蓄えておき、自転車停止時も数分間点滅するものもある。遅い(スロー)点滅及び早い(ラピッド)点滅を選べる形がある。
側射
交差路などで停止時にも横から自転車の存在が分かるように、左右にも光が出るようにしたものもある。
前照灯の光が横にも出るようにした形及び独立の小型サイドライトが付いた形がある。黄色に点滅する形がある。
点灯時間
電池による点灯時間(ランタイム)は、2~12時間が多い。上部に付けたLCD表示器で分単位まで表示する形がある。
明るさの設定により点灯時間が、高1.5h、中3hそして低6hのように変る形がある。
充電
充電式の前照灯は、蓄電池を外して充電するもの及び蓄電池を組み込んだ前照灯をクイックリリース式に外して充電するものがある。
USBケーブルを使って、またはUSBプラグが付いていて、パソコンから充電する形がある。
充電器(チャージャー)を必要とする形がある。国によってソケットの形が異なるため、アダプターがある。
太陽光発電パネルによって充電する形がある(右図)。バックアップに乾電池を使用し、ハイブリッドともいわれる。
質量
ブラケット及び電池を含む質量は、70~190g。ボタン電池を使った小型のものは約25g。
ヘルメットライト
ヘルメットに付ける前照灯はヘルメットライトと呼ばれる。
質量の小さい前照灯はヘルメットライトとしても使うことができる。
特殊仕様
(1) 走行速度を検知して早いほど明るくなる形がある。
(2) 盗難防止のために、ハンドルに固定するクランプをトルクスねじで締めるようにした形がある。
(3) MP3プレーヤーを内蔵した形がある。ただし、音楽を降車して聴くのはよいが、走行中に聴くのは安全上好ましくない。
(4) 先端にかぶせると光を拡散してランタンのようにするディフューザーキャップ(右図)をオプションとして取付できる形がある。
例えば、ヘルメットライトに付けると夜間の修理の照明となる。
(5) 照射角度の異なる3種類のレンズを
交換できる形がある。
(6) 電気的に音を出すホーンを内蔵形がある。
(7) ヘッドセットスペーサー外して、操縦管に取り付ける形がある。
ランプ後部の板に操縦管外径に対応した穴が開いている。
(8) 平ハンドルに6個のLEDランプを入れた形がある。防水及び耐震構造となっている。
電池はハンドル端より入れる。
(9) 前照灯に組み込んだ磁石とリムの回転で
生じる渦電流によってLED灯を点灯させる
形がある。
前照灯に回転部分はなくリムとは非接触。
LED灯が1個でリムの両側に取付ける形及び
2個で片側に取付ける形がある。
明るさは走行速度24km/hにおいて150ルーメン。
リムブレーキに付ける。ブレーキを掛けるとリムに接近するので、より明るくなる。
(10) ハンドルステムの前端にLEDランプを10個付けた形がある。
電池はステムの中に入れている。
(11) フォークブレードの前方下部に内蔵した形がある。
(12) ハンドルステムと一体にした形がある。ハンドルステムとドロップハンドルも一体となっている。
(13) レンズによってワイドビームとスポットビームを切り替えできるようにした形がある。
(14) ホーンを組み込んだ形がある。2種のトーンを選ぶことができる。
リコール
Shenzhen Minjun Electronic(メイドインチャイナ)は、2009~2010年に販売した前照灯に付属のリチウムイオン
蓄電池が過熱して火を出すことがあるとして約66,600個をリコールした。
メーカー
キャットアイ 、パナソニック 、Acumen(Vetta) 、Agu Bv(Cordo) 、Avenir 、Axa Nano 、Ay Up Lighting 、Baja Designs 、BBB Bike Parts 、Blackburn 、Bookman 、
Blaze 、Busch & Müller 、Custom Idea 、CygoLite 、DiNotte Lighting 、DStar LED 、Electron 、Elta Automotive 、Exposure Lights 、Fenix 、Fenix Torch 、Fuji 、
Full Beam 、Gemini Lights 、Giant Manufacturing 、
Gloworm Performance Products 、Guee 、Haoli Precision 、 Helios Bikes 、Hope Technology 、Hostettler(ixs) 、
Illuminated Cycling 、Innos LED 、Jet Lites 、KMC Chain Industrial 、Knog 、Lezyne 、Light & Motion 、Lumicycle 、Lupine Lighting Systems 、
Madison(Electron) 、Magicshine 、Magnic Light 、Magnum 、Martin-Jones Technology 、Marwi 、My Fenix 、MyTinySun 、Nightsun Performance Lighting 、Niteflux 、
NiteRider 、
Nova Sport Lights 、Nuke Proof 、Orp Industries 、Owleye 、Oxford Products 、Pedal Pedal 、Planet Bike 、Portland Design Works 、Princeton Tec 、Pro 、
Radical Lights 、Raleigh 、Ravx 、Reelight Aps 、
Serfas 、Shenzhen Ferei Lighting 、Shenzhen Minjun Electronic 、Sigma Sport 、Silva 、Smart 、S-Sun 、Spanninga 、Sparse 、Stenman Holland 、
Sungo 、Sunlite 、Supernova Lighting Systems 、Tigra Sport 、Tout Terrain 、Trelock 、Troutelights 、Uberbike Components 、
Ulitmate Sports Engineering 、Weston Pointer 、Xceon 、X Fire 、 など。