概要
自転車に乗るとき使用し、乗員を頭のけがから保護、又は傷害の程度を軽減するために着用する安全帽。
JIS T8134は「自転車用安全帽」であったが、その後通称に合わせて「自転車用ヘルメット」に変えている。
視野は左右水平それぞれ105度以上であることが望ましい。
付属品としてバイザー(ひさし)の付いた形もある。
大きさ
ヘルメットの大きさは、眉の上25mm位置における頭の周囲長で表すのが一般的。小、中及び大がある。
小さくして持ち運びし易くするために、折りたたむことのできる折りたたみヘルメットがある。
種類
大人用および子供用(子供ヘルメット )がある。女性用の女性ヘルメットがある。ロード用およびオフロード用がある。
タイムトライアル競技にはタイムトライアルメットが使われる。
BMX用にはBMXヘルメットがある。
マウンテンバイクによる丘下りおよびフリーライドなどにはフルフェースヘルメット(全顔ヘルメット)が使われることがある。
街乗りにはアーバンヘルメットが使われることがある。
構造
衝突時にも脱げないようあごひも(チンストラップ)が付いている。車などとの衝突の一次衝撃および路面とぶつかる二次衝撃においても、ヘルメットが脱げてはならない。
外殻の中に衝撃吸収材(発泡ポリスチレン)が入っている。一度衝撃を受けると、発泡ポリスチレンは変形して回復しないので、ヘルメットは再使用できない。
頭から出る熱および湿気を逃がすための通気孔がある(ヘルメット通気)。通気孔に防虫ネットを付けた形がある。
バイザー
付属品として着脱式のバイザーがある。稀に、バイザーがヘルメットと一体になった形がある。
形状
空気抵抗を減らすため、形状は流線型となっている。1%程度空気抵抗が減少する。ヘルメットの後部が尖った
ものは、転倒時の頭の打ちようによっては保護効果がなく、空気力学的に特に優れているということもない。
かぶり方
ヘルメットは水平にかぶるのが良い。事故時に額を保護するために、かつ脱げないように水平にかぶる。 後ろに傾いている場合は、横バックルを緩めて前ストラップを
短くし後ろストラップを長くすると水平になる。 ストラップ全体のたるみはあごストラップで取る。横バックルは耳たぶの下とする。
色
同一のヘルメットに対して、赤、青、白、銀および黒などの色違いのものを用意しているメーカーもある。
ヘルメットの色は、昼も夜も車の運転手に目立つものが望ましい。交通安全のために、高可視性又は高反射性の黄色にしている形がある。
特殊仕様
(1) 冬の防寒のために
通気孔を薄いプラスチックの4枚の板で塞ぐようにした形がある。夏などには外すことができる。
(2) 前方眼前にレンズを付けた形がある。レンズはヘルメットの中に引き込ませることができる。
(3) 前後にスライドするカバーを上部に付けた形がある。後方にスライドすると換気孔が開く。前ににスライドすると換気孔が閉じて空気抵抗が減る。
(4) 蛍光性とし、後部にLEDランプを付けた形がある。
(5) 胸帯の替わりに、額に接触する心拍センサーを取り付けた形がある。心拍数は無線でサイクルコンピュータへ送る。
3Dモデル
木材でヘルメットの3Dモデルを作って、360°の美観、安全性、空気抵抗、換気、質量及び生産性などを検討する。
図はGiroの3Dモデル。
外殻材質
ABS樹脂、ポリカーボネイト、ガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂(CFRP、俗に言うカーボン)及び木材など。
段ボールを骨組みにした形がある。
衝撃吸収材
発泡ポリスチレン(EPS)が外殻の下に使われる。稀に、ハニカムを使った形がある。EPSよりも軽く、耐衝撃性も良いとメーカーは言う。
赤色でひとで状のパッドを洗濯のために交換できる形がある。
質量
170~340g。平均質量はロードバイク用は270gそしてマウンテンバイク用は300g。ストラップ及びバックルを含まない質量を表示しているメーカーもある。
規格
あごひもの幅は、15mm以上であること(JIS T8134、自転車用ヘルメット)。
ヘルメットに関する米国の安全規格はCPSCが制定している。
欧州の規格はEN1087(ペダルサイクリスト、スケートボード及びローラースケートの使用者用ヘルメット)。
試験
ヘルメットの衝撃吸収性試験は衝撃吸収性試験装置で行う。
試験にあっては、ヘルメットを所定の質量(ヘルメットの大きさによって、4~6kg)の
人頭模型(低反響性マグネシウム合金製)に装着し、あごひもを固く締める。
衝撃時の落下速度4.57m/s(落下高さ1.06mに相当)で鋼製アンプルピンに落下させ、衝突したときのヘルメットを介して伝達される衝撃を、加速度計によって測定する。
次の規定(JIS T8134、自転車用ヘルメット)を満足しなければならない。
2,940m/s2 以上の衝撃加速度を生じないこと。
1,470m/s2 以上の衝撃加速度を生じた場合は、その継続時間は4ms(ミリ秒、1ms=0.001s)以下であること。
エアーバッグ
ヘルメットとなるエアーバッグがある。
リコール
Little Trickyのヘルメットを輸入したTriple Eight Distributionは、2006~2011年に販売した約30,400個が衝撃抵抗に対するCPSCの安全基準に合致しないとしてリコールした。
緊急連絡
ヘルメットに付けたセンサーで衝撃の大きさを検知し、乗員から反応がない場合は、アプリ(ICEdot)を入れた乗員の持つスマートフォンを起動して
GPS位置情報を送ると同時に助けを求めるサービスがある。
風の音
走行に伴い空気が耳を通過することによって生じる風の音を低減するために、耳の前のストラップに付ける軟毛がある(右図、メーカーはCat Ears)。
関連用品
ヘルメットと関連する用品としては、ヘルメットの下にかぶるスカルキャップ 、ヘルメットにかぶせるヘルメットカバー 、後写鏡のヘルメットミラー 、
前照灯のヘルメットライト 、ヘルメットに装着するビデオカメラであるヘルメットカメラ、ヘルメットを持ち運ぶためのヘルメットケース及びヘルメットバッグがある。
メーカー
オージーケーカブト 、アライヘルメット 、Abus 、Aerogo 、AGU 、Alpina Sports 、BBB Bike Parts 、Bell Sports 、Bern Unlimited 、Boardman Bikes 、Briko 、b'Twin 、
Cratoni Helmets 、Carnac Sport 、Carrera Sport 、Casco 、Catlike 、C Originals 、Co-Union Industry 、Cratoni helmets 、Dux Outdoors 、
Endura 、Etto 、
Exustar Enterprise 、Fuji 、Giant Manufacturing 、Giro 、Golex 、Halolux 、HardnutZ 、Hopus Technology 、Hostettler(ixs) 、kali Protectives 、Kask 、KED helmsysteme 、LAS Helmets 、
Lazer Helmets 、Lazer Sport 、Limar 、Louis Garneau 、Mace Gear 、Manby International Sportswear 、Ma.Ro Group(SH+) 、Mavic 、Merida 、MET Spa 、Orbea S 、POC 、Polisport 、
Potenza Cycling Gear 、Pro Tec 、Proviz 、Prowell Helmets 、Prymegear 、Rockwell 、Rudy Project 、Scott Sports 、Selev srl 、Shain 、
Shanghai Hehui Safety Products Manufacture 、Smith Optics 、South Shore Bicycles 、Specialized Bicycle Components 、Spiuk 、SportAtlas 、Sports Plus 、
The Industries 、Troy Lee Designs 、Urge 、Uvex Sports 、Vigor Helmets 、Yakkay 、Zero Industry 、など。
参考資料 「ヘルメット」