工具を使わずに、レバー又は手によって速やかに(クイック)開放(リリース)する機構。
(1)ハブのクイックリリース、 (2)サドル支柱のクイックリリース、 (3)ブレーキロープのクイックリリース及び (4)チェーンのクイックリリースなどがある。
(1) ハブ(車輪)のクイックリリース
概要
輪行またはパンク修理に役立つ。クイックリリースレバーまたはスキュアーとも言う。
前輪と後輪ではロックナット間距離(OLD)が異なるので、それに合った長さのスキュアー(串、軸)を使う。軽量化のために中空にしたスキュアーもある。
種類
密閉カムと開放カムの2つの形がある。密閉カムはカンパニョーロの時代からある形で、カムがキャップの中にあり注油してもカム部が粉塵の付着で汚れない。密閉カム 開放カム 開放カムは1980年代に出現した形であり、カムとレバーが一体となっているため生産原価は少し安く質量はやや小さい。
機構
レバーの180度回転によって、カムで押し付けて固定する。
ナットのように、ねじで固定するのではないので、レンチを回すようにレバーを車軸に対して不必要に回してはならない。
使い方
開か閉が一目で分かるよう、レバーは人差指を少し曲げたように曲がっている。レバーはその軸に対して180度回転し、回転端において指先(レバー端)が車輪に向いていれば閉(CLOSEの文字が外に向く)そして指先(レバー端)が外に向いていれば開(OPENの文字が外を向く)。中間位置で止めてはならない。
開→閉または閉→開のレバー操作の終始端近くにおいて、カム作動によるかなりの抵抗を感じるのが正常。
この抵抗すなわち固定力の調整は、ハブに対してレバーと反対側にある調整ナットを指で回して行う。右に回すと強くなり、左に回すと弱くなる。
レバー位置
伝統的には反駆動側である自転車の左側が多い。後ディレイラーと干渉しにくい。前ハブにブレーキローターが付いている場合は、万一加熱したローターに手が触れると熱いということでローターと反対側とする人がいる。
レバー向き
車軸に対してどのような回転位置に持って行ってもよいが、レバーが前後に向くように付ける。一例は、前輪ではレバーが後方を向くように、後輪ではチェーンステイと一緒に握れるようまた邪魔にならないよう、閉でチェーンステイに沿って前方を向く位置とする。
軸径
9mm及び15mmなど。
空気抵抗
フォークブレードをレバーの形状にへこませて、そのへこみにレバーを入れることにより空気抵抗が減るようにした形がある(下右図)。
材質
軸はクロモリ鋼及びチタン合金など。レバーはアルミ合金及び炭素繊維強化樹脂(俗に言うカーボン)など。
質量
43~95g。中空軸もある。
歴史
サイクリストのカンパニョーロが1930年に発明した。発明した動機は次のようなことであった。
当時、後輪の両側に歯数の異なるスプロケットが付いていて、後輪を外して左右の向きを変えて変速(2速)していた(フリップフロップハブ)。
競技では、この変速の時間も含まれるので、時間短縮のためにクイックリリースを発明した。
競技には長距離の坂があり、変速が必要であった。カンパニョーロが変速機(ディレイラー)を発明したのは、その後の1933年であった。
リコール
シマノは2005年に販売した前ホイールのシルバー色のスキュアー(串)が破損することがあるとしてリコールした。
メーカー
シマノ 、American Classic 、BBB Bike Parts 、Campagnolo 、Carbon-Ti 、CLIX Systems 、Control Tech 、Dimension 、DT Swiss 、Edco Engineering 、Extralite 、Halo 、Hostettler(ixs) 、KORE 、Quad Technologies 、Ratio Bike Design 、Salsa Cycles 、Tiso 、Tune 、Williams Cycling 、Xi'an Changda Titanium Products 、
Zipp Speed Weaponry など。- (2) サドル支柱のクイックリリース
フレームの立管にクイックリリースクランプで固定したサドル支柱を、クランプのレバーで開放する。 - (3) ブレーキロープのクイックリリース
ブレーキのキャリパーに結合したロープをレバーで開放することにより、パッドすき間を大きくしてタイヤ(車輪)を外す。具体例 デュアルピボット ブレーキ 。 - (4) チェーンのクイックリリース
工具を使わずにチェーンの内リンク同士を比較的容易に連結および取外しができるようにしたマスターリンク。メーカーは、独自の商品名を付けて販売しいる。
チェーンを外して清掃および洗浄をしたい場合などに使われる。外装変速機のチェーンに使う場合は、多段のスプロケットをこすらないリンク幅であること。
汚れおよび腐食などでマスターリンクを手で外すことが難しくなったときは、マスターリンクプライヤーという工具で外すことができる。