概要
シングルピボットブレーキよりも、ブレーキの中心調整が簡単、正確にでき、かつ使用中に変化しないよう、
それぞれのアーム(キャリパー)に軸(ピボット)がある(デュアル)キャリパーブレーキ。前輪用および後輪用がある。
歴史
ドイツのAltenburgerが1960年代に特許を取った。特許が切れた後、1990年代にシマノおよびカンパニョーロなどが商品化した。
用途
主に、ロードバイクのブレーキとして使われる。
特徴
シングルピボットブレーキ(シティサイクルなどの前輪に使われている)よりもアーム比は大きく取られているので、ブレーキの利きは良い。
アームの移動距離を短くしているので、応答性も良い。
クイックリリース
クイックリリースによって、パッドすき間を大きくすることができるので、車輪を外すことができる。
構造
一方のアームAのピボット(主軸)はフレーム(タイヤ)芯にあるのに対し、他方のアームBのピボット(副軸)は主軸から出た短いアームCに偏心して付いている。
従って、アームは全部で3個ある。その構造上、ブレーキパッドの動く軌跡は、細かくは左右のパッドで異なる。
一方のパッドAはリムを押し下げるように動き、他方のパッドBはリムを押し上げるように動く。
リーチ
各社のリーチ(アーチサイズ)をグラフに打点して右図に示す。
リーチは上下に調整できる範囲の最下端の値(最大距離)である。
シュー(パッド)はこの位置から上へメーカーによって10mmまたは14mm(右図のa寸法)調整できる。
リーチはメーカーによって、49、50および57mmの3種類あるが、49mmが多いことが分かる。
シマノの標準リーチは49mmそしてロングリーチは57mmである。ロングリーチは、泥除けを付けた25c及び28cなどの太めのタイヤに使われる。
質量
質量をグラフに打点して右図に示す。質量は125~190gで平均は156gである。ロングリーチはアームが長い分、質量が大きい。かつ、シングルピボットブレーキより質量が大きい。
材質
キャリパー(アーム)の材質は、アルミ合金、炭素繊維強化樹脂(CFRP、俗にいうカーボン)またはチタン合金など。主軸の材質は、クロモリ鋼(クロムモリブデン鋼)など。
パッドすき間の調節
パッドすき間の調節は、ロープ調整バレルを回して行う。中心合せ(芯出し)は、中心合せ調整ねじ(M4)を六角レンチで回して行う。
パッドすき間は1.5~2mmに調整する必要があり、回転時のリムの左右の振れは±0.2mm以下であることが望ましい。
取付
軸を中心にしたパッドの動きの軌跡を見れば分かるように、パッドが磨耗してくると、パッドAはスポーク側へ動き、パッドBはタイヤ側へ動く。
それを予知して、パッドAはやや上方(タイヤ側)に取付け、パッドBはやや下方(スポーク側)に取付けるのも一つの手である。
取付ボルト
前輪用と後輪用は、取付ボルト(主軸)の長さが異なる。
リコール
2007年、SRAM社はForceグループのブレーキをフォークに固定するチタン合金製取付ボルトが折れることがあるとしてリコールした。
メーカー
シマノ、ヨシガイ 、Alhonga Enterprise 、Ambrosio 、Ax-lightness 、Campagnolo 、Cane Creek 、Fac Michelin 、Full Speed Ahead 、Hive 、Interloc Racing Design 、
Kcnc Bikes 、Ken Chang Ind. 、Sampson Sports 、Simkins Designs 、SRAM 、Sun Race 、Tektro Technology 、TRPなど。
参考 「ブレーキ」