蚊刺しパンク
蛇噛みパンク
破裂パンク
ニップルパンク
バルブパンク
パンク修理
パンク対策
タイヤライナー
タイヤシーラント
瞬間パンク修理剤
自転車のタイヤ(チューブ)のパンクの原因としては、蚊刺し、蛇噛みおよび破裂が知られている。パンクには刺すまたは穴をあけるという意味がある。
参考: チューブ
蚊刺しパンク
画鋲、ホッチキスなどの針、くぎ、針金片または鋭角のガラス破片などの異物が刺さってチューブに穴が開き空気の抜けるパンク。
前輪ではねた異物が立ったところを前輪より荷重の大きい後輪が踏むなどして、後輪は前輪よりも蚊刺しを受ける確率が大きい。
雨などで異物とタイヤが濡れている場合はお互いの摩擦係数が小さく、ゴムであるタイヤには食い込みやすいため、雨の日はパンクを起こしやすい。濡れていないゴムを濡れていないカッターで切り、次に濡れたゴムを濡れたカッターで切ってみるとその違いがよく分かる。
刺さった異物によっては、次回に走っている間に、トレッド及びケーシングを貫通してチューブまで到達することがあるので、帰宅後異物が刺さっていないか点検し除去することはパンク防止に有効。異物によっては空気抜けが遅く、翌日になってパンクに気づくことがある。
蛇噛みパンク
タイヤのチューブが、横断歩道の段差やオフロードの大きな石および岩などにより、リム(具体的にはタイヤビード部)に衝撃的に押し付けられてできる小さな2つの穴(パンク)。蛇が2つの牙で噛んだような感じになることから名づけられている。
穴の間隔はタイヤ幅によって異なる(断面約25mmのタイヤでは約10mmの穴間隔)。まれに、片方の穴が開いていない場合もある。タイヤの空気圧が十分でなく、タイヤが柔らかいと起こす可能性がある。前輪よりも荷重の大きい後輪で起こしやすい。
天然ゴム(ラテックス)はブチルゴムより2倍以上伸びが大きいため、蛇噛みパンクを起こしにくい。蚊刺しパンクに比べて空気抜けは早い。蛇噛みパンクは、リム打ち、スネークバイト、ピンチフラット、リムピンチまたはリムカットと呼ばれることもある。
参考: 横断歩道の段差
破裂パンク
破裂はバースト、ブローアウトまたはブローオフとも呼ばれる。破裂は、蚊刺しおよび蛇噛みに比べれば起きる確率は非常に小さい。
チューブの破裂の特徴は大きな破裂音がして、長手方向の切り欠きが出来ていること。高圧のタイヤで起きやすい。破裂はタイヤの中で起こることはなく、何らかの原因でタイヤがリムから離れた時などに起こることがある。離れた部分のチューブが外に膨らんで破裂する。多くの場合、破裂後タイヤは元の状態に戻るので、タイヤの中で破裂としたと感じる。タイヤの装着状態でのチューブ穴あきは、空気の急激な噴出・膨張が無いので音はしない。
本来、チューブはその肉厚からして高圧に耐えるように作られておらず、周りのタイヤの支持があって始めて高圧が維持される。
タイヤのビード部がリムから離れる原因としては、リムへのタイヤの装着不良、リムビード座径とタイヤビード径の不適合および何らかの衝撃作用などが考えられる。熱の影響としては、長い下り坂での長時間ブレーキかけの摩擦熱によるリムの温度上昇によりタイヤのビードが軟らかく、かつリムとの間で滑りやすくなり、チューブ空気の熱膨張も加わって、路面との接地点での負荷上昇によりリムから外れることも考えられる。
クリンチャータイヤのチューブを交換した時に、チューブがタイヤビードとリムに挟まれた状態で空気を入れると、チューブがタイヤから滑り出して破裂することがある。破裂の原因としては、このチューブの装着不良が最も多い。空気を入れて間もなくして滑り出すこともあれば、ゆっくりと時間をかけて滑り出すこともある。後者の場合は時間が確定しないので、夜中に破裂することもある。
チューブの装着不良による破裂を防止するには、タイヤのリム近辺を押して適切にリムに装着されているか、かつタイヤのリムへのはまり具合が全周に渡って均一であるか確認する。または、空気を入れているときにタイヤがリムから部分的に離れようとしていないか点検する。
次のようなタイヤの一般的な取り付け方をすればまず挟むことはない。
- タイヤの一方のビードをリムのビード座に置く。
- 丸くなる程度にチューブに空気を入れる。
- バルブをリムのバルブ穴に入れる。
- チューブをタイヤに入れる。
- バルブの反対側から始め、タイヤの他方のビードをビード座に入れる。
- バルブが直立していることを確認する。
- タイヤのリムラインを見ながら、全周に渡ってタイヤの左右の芯出しを行う。所定圧力まで空気を入れる。
ニップルパンク
劣化した樹脂製またはゴム製の薄いリムテープが高圧のチューブ圧力で押されてニップルの溝で亀裂が生じ、チューブが直接溝に当たって穴の開く内部パンク。空いた穴はリム側でニップル位置と合っているのが特徴。布製のリムテープは穴が開きにくい。
» リムテープ
バルブパンク
バルブス根元のチューブに何らかの原因で亀裂が生じるか又はチューブに接着してあるバルブステムがチューブから部分的に剥離して空気が抜けるパンクがある。バルブステム分離ともいう。空気を入れているときに起きる場合が多い。走行中に起きる場合は漏れは緩やか。めったに起こらないので事例は少ない。推定原因は、
- 小さな携帯空気入れで多数回空気を入れると、バルブステムが引っ張られたり曲げられたりして、リムのバルブ穴によってチューブに傷が付くこと。
- リムブレーキの付いた低圧空気圧のマウンテンバイクで高速丘下り中に急ブレーキをかけると、タイヤとリムの間で円周方向の滑りが生じて、リムのバルブ穴によってチューブに傷が付くこと。
- 製造上の欠陥。
パンク修理
タイヤからチューブを外し、市販のパンク修理ゴムパッチを使ってパンクの修理をする場合の手順は次の通り。
1. 穴を見つける
チューブの太さが常用の1.5~2倍になるまで空気を入れる。チューブを耳に近づけるか又は耳にあてて空気抜けの音を聞くかまたは指で触って空気漏れを感知して、パンク穴の位置を見つける。見つからない場合は、水を入れた洗面器などにチューブを浸けて気泡が出る位置を見つける。
穴の位置にマジックペンなどで大きな十字のマークを付ける。マークの中央部が紙やすりで削り取られても、十字の上下左右の4箇所の線が残る大きさとする。
2. 離型剤を落とす
細目の紙やすり(サンドペーパー)で軽くこすって、パッチより大きめにチューブ表面の離型剤を削り取る。発生した埃は、電気かみそりの清掃ブラシまたは歯ブラシなどで払い落とす。アルコールがあれば、さらにアルコールで拭くのが良いが、微細な繊維が付着すると逆効果となる。
(注) チューブはチューブ型にゴム液を流し込んで加熱して作る。ゴムがチューブ型に付着しないように吹き付けた離型剤が製品チューブの表面に付着している。
離型剤を取らないと接着が不十分となり空気漏れを起こしやすい。紙やすりかけはチューブ表面をざらつかせるのが目的ではなく、離型剤を取るのが目的。粗い紙やすりによる過大なざらつきは接着力を低下させる。
3. 糊を塗る
パッチを貼る部分に、きりいな指でゴム糊を薄く均一に塗る。ゴム糊が乾くまで2~3分間待つ。
(注) 糊の必要のないパッチは応急用と見なしたほうがよい。
4. パッチを貼る
パッチの貼る側にはアルミ箔が付いているので、はがして表面のシートの端を持って貼り、親指と人差し指で挟んでパッチの中央を強く押し、順次中央から周囲へと押す。表面のシートをはがし、タルク粉またはベビーパウダーがあれば塗布する。必須ではない。
(注) 付着力が低下するので、パッチの貼る側には触れてはならない。
パッチが空気泡をかんだと思われる場合は、樹脂ハンマーなどでたたいて空気を追い出す。
5. 待つ
5分間以上待ってから、チューブを装着する。
(注)パンクした時、徒歩で自宅や現地の自転車店に行けないような遠方に行くときは、予備チューブ又はパンク修理用具などを携帯するかどうか決める。
パンク対策
(A) 次のような、耐パンク性のあるタイヤを選定する。一般に、耐パンク性のあるタイヤは、質量が大きくなる。
- 踏面(トレッド)が厚い。
- 針が貫通しにくい踏面(トレッド)材質である。
- コードの本数が100TPI以上ある。
- 繊維層の層数が多い。
- 針が貫通しにくいコード材を使っている。アラミド繊維は貫通しにくい。
- 耐パンクベルト(PRB)が入っている。
- 肉厚の厚いチューブが使われている。
(B) 現状のタイヤに対するパンク対策は、
(C) パンクしないタイヤであるエアレスタイヤ(ソリッドタイヤ)を使う方法もある。
タイヤライナー
- 概要
- パンクを防止するために、タイヤ内面に敷きチューブを保護する帯。
- 材質
- ゴムより針が貫通しにくいポリエチレンまたはポリウレタンなど。
- 寸法
- 厚さは中央よりも端部が薄くなっている形が多い。幅はタイヤ幅に応じて各種ある。
- 質量
- 一例は、20g(ロードバイク用)~40g(マウンテンバイク用)。軽量形はこれらより約5g軽い。
- 試験
- 耐パンク試験は試験機でタイヤライナーを押して穴が開く荷重を調べることによって行う。試験方法としてはASTM D4833などがある。
タイヤシーラント
- 概要
- タイヤシーラントは、タイヤチューブのパンク穴を塞ぐ液体密封材。チューブレスタイヤに使うものもある。
- 使用方法
- チューブのバルブコアを取出したバルブステムから注入し、バルブコアを元に戻して空気を所定圧力まで入れる。液体のままで固化しない。パンクする前から注入しておいてパンクすると穴を塞ぐもの(パンクしたことを気づかないことが多い)及びパンク後に注入して穴を塞ぐものがある。この場合は、密封剤を注入後に車輪を回転させてパンク穴を塞いでから空気を入れる。
- 働き
- 密封材はタイヤの回転による遠心力でタイヤ踏面のチューブ内面に、液体の保護膜を作る。タイヤ側面の穴あきには効果が無い。密封できる穴径は3mm以下。ガラスの破片で切られた割れ目には効果がない。
- 組成
- 密封材の組成は明らかでないが、結合剤、重合物および植物性の短繊維を含んだものもある。天然ゴム系と言っているメーカーもある。
- 使用量
- 密封材の必要量はメーカーおよびタイヤサイズによって異なるが、一例は100g/車輪。
- 原理
- 密封の原理は化学的な作用ではなく、背面をタイヤ内面が覆っているチューブの小さい穴なら、ある程度の粘度のある液体で塞げば空気は抜けないという物理的な作用表面張力)に因っている。
- 保証
- 密封材を使ったタイヤは保障しないというタイヤメーカー(Kenda)もある。密封材を販売しているタイヤメーカー(Tufoなど)もある。
密封材をチューブに入れてセルフシーリングチューブとして販売しているメーカーもある。
瞬間パンク修理剤
瞬間パンク修理剤と呼ばれているものに、ボンベ入りのタイヤパンドー(スリーボンド社の商品名)がある。ボンベの容量は70mlで1本でタイヤ1本に対応している。ボンベの口をタイヤ(チューブ)のバルブ(弁)に15秒間押し付けると、合成ゴム系エマルジョンが噴射剤(LPG)によってチューブの中に噴射され、約3分間でチューブ内面に付着するので、その後走行できる。修理剤を注入する時にはチューブ内面に良くいきわたるよう、チューブの空気は抜いておく。噴射剤で加圧されるので、空気入れで空気を入れる必要はない。英式バルブには使えるが、米式バルブおよび仏式バルブには使えない。保存期限は約3年。