靴
自転車探険!
結合靴
クリート
トウスタッド
足の留め方
種類
構造
質量
靴カバー
靴サイズ
結合靴
表1 結合靴の比較
種類
ロード
オフロード
クリート
出ている
沈んでいる
質量
小
力伝達効率
良
空気抵抗
小
靴底硬さ
硬い
硬くない
着脱性
良
歩き易さ
良
土面歩き
可
靴裏模様
殆どなし
あり
用途例
競技、旅行
通勤、街乗り、旅行
概要
靴底にクリートが付いていて、結合ペダル(クリップレスペダル)と結合して効率よくペダルを漕ぐようにした靴。
分類
クリートが靴裏より突き出ているロード用およびクリートが靴裏から沈んでいるオフロード用に大きく分けることができる。その比較および用途例を表1に示す。 それぞれの長所などを考慮して、自分の走行スタイルに合っているものを選定する。 例えば、旅行、1時間以上走るサイクリング及び通勤などにはロード用が適している。信号停止の多い通勤、街乗り及び歩行の多い用途にはオフロード用が適している。
歴史
1984年にフランスの ルック社 がスキーのクリートをペダルに応用したのが始まり。1988年にシマノはクリートが靴底に沈んだマウンテンバイク用の結合ペダルを最初に世に出した。
選定
選定に於いては、結合ペダルに合った靴を選ぶのではなく、まず靴を選定しそれに合った結合ペダルを選ぶことが望ましい。このことを考慮して、ペダルを付けずに販売している自転車もある。
力の伝達
足から結合ペダルへの力伝達効率は、クリートが大きく、かつ結合ペダル軸芯からの靴底高さ(スタック高さ)が小さい方が良い。
靴底
クリートを付けるねじ穴が開いている。ロード用靴底は力伝達効率を良くするために硬いが、オフロード用は歩きやすくするため硬くない。材質は用途に応じて、CFRP(炭素繊維強化樹脂、俗に言うカーボン)、ナイロン及びゴムなど。 競技用の靴底には、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を使っているものが多い。 靴底の材質がCFRPの靴は、カーボンシューズと呼ばれることがある。 オフロード用は地面で滑りにくくするために、突起模様またはスパイクが付いているが、ロード用は空気抵抗を減らすために滑らか。
中敷
インナーソールと及びインソールとも言う。中敷は付いていない靴もある。付いていれば、自分の足に合った中敷と交換することもできる。
夏用および冬用もある。
土踏まず(アーチ)部の高さを低、中及び高の3種類を用意したメーカーもある。
ペダルと脚の関係がその人の足に合って、力が効率よくペダルに加えられるように修正することを意図した立体中敷もある。
着脱性
ペダルとの着脱性はオフロードでは重要な要素であり、クリートが小さいほうが良いが、これは力伝達効率と相反する。歩きやすくクリートに土詰まりがしないことも、オフロード用として重要。
換気
換気によって湿気を靴の外に出すために、メッシュの換気孔を設けた靴もある。中には、靴底に換気孔を追加した靴もある。
参考資料
「
ペダル
」
クリート
概要
クリートは、靴をペダルと結合する結合ペダル用の靴の底に付けて、靴とペダルと結合するための樹脂または金属製の留め具。
一般には、靴とは関係なく、留め具のことをクリートという。また、滑り止めに一般の靴の底に付けるゴムの突起をクリートという。
種類
ロード用
クリートは靴底から出ているので、ペダルとの結合が容易という利点がある。ロード用の靴は、軽量化のために靴底を薄くしているので、クリートを沈めることは困難である。力の伝達を良くするためにクリート幅は広く、3本のねじで靴に固定する。
マウンテンバイク用
歩行時にクリートが地面にあたらないよう靴底に沈めているために、幅はロード用より狭く、2本のねじで固定している。
位置調整
前後位置はペダル軸心の上に、親指の付け根の拇指球が来るように合わせる。例えば次のようにして行う。水性マジックなどで素足の拇指球の横に印を付ける。 くるぶしから垂直下方に直線を引く。この2箇所の印間の水平距離Aを測る。靴を履きくるぶし線から水平に距離Aの位置にテープなどで印Bを付ける。靴を脱ぎ拇指球位置Bがペダルの軸上にくるようにクリート位置を調節する。
水平角度調整
左右の向きは、自分のつま先(足)の自然な向きに合せる。外向き及び前向きの人が多く、内向きの人は少ない。 クリートの水平方向の角度(クリート角)調整は次のように行う。クリート部で靴底を2等分する直線とクリート中心線を合わせる。これを基準として自分に快適な角度に合わせる。
歩くときにつま先が前方ではなく外を向いている人は、ペダルに対するクリート(靴)向きも、それに見合って外にむけた方が良好なことが多い。
高さ調整
靴底とクリートの間に入れて、ペダリング時の左右の足の長さの違いを補正するためのプラスチック製等の薄いシム(クリートシム)がある。
垂直角度調整
足裏は水平の人および左右に傾いている人がいる。その傾きを補正するために、クリートと靴底の間に入れるくさび状のシムがある。
クリート工具
靴のSPDクリート位置を正確に設定するための工具。
清掃
クリートは必要に応じて、ブラシなどで清掃することが望ましい。
磨耗
クリートは歩くと磨耗するので消耗品とされており、交換できるよう六角穴付きボルトで靴に固定されている。ボルト数は、SPDが2本そしてSPD-R(競技用)が3本となっている。 磨耗するとペダルとの着脱が正常でなくなるので新品と交換する。クリートの磨耗などを防止するおおいとしてクリートカバーがある。
クリートボルト
クリートをSPD靴に固定するための六角穴付きボルトボルト。サイズは、M5x10 及び M5x16 などがある。
クリートカバー
結合靴を履いて歩くときの、クリートの磨耗、路面との滑り及び音を防止するため、クリートにかぶせるおおい。 材質は樹脂。質量は50~60g。写真は各種形状のおおいの内および外。
トウスタッド
靴の地面に対するグリップを良くするために、つま先(トウ)に付ける突起。取外しできないもの及び靴にねじ込んであって取外し交換できるものがある。トウスパイクともいう。
足の留め方
靴において足を留める方式としては、ひも、おび及び留め具がある。これらは、ペダル引上げの力を受け止める。
ひも (レース)
サイクリング、旅行および通勤などの用途が多い。ひもの断面形状は平および丸がある。ひもとおびを組み合わせた留め方もある。
ひもは手で結ぶのが一般的。ひもを手で結ばずに、ひもを締める方式として、Boa レーシングシステムがある。
おび (ストラップ)
おびに付いたマジックテープ(ベルクロテープ)で留める。おびだけの場合は3帯が一般的であるが、2帯および1帯もある。2帯は女性用またはトライアスロン用であることが多い。
留め具 (バックル)
留め具は2帯のおびと組み合わせるのが一般的。留め具はマジックテープよりも留めが確実である。
ラチェットバックル
靴のラチェット式の留め具。この場合のラチェットは、斜めの歯が連続して付いた帯にバックルの歯が一方向(締める方向)にのみに引っかかるようにした機構。
ラチェットは足側に付けて、おび (ストラップ)と併用される。右用および左用がある。
Boa レーシングシステム
ダイヤルを回して靴のひもを引くことにより、任意の張りを得られるようにした方式。レーシングは競技という意味ではなく、紐を締めるという意味。 ダイヤルの位置は、靴の後または横。米国コロラド州にあるBoa Technology社がスノーボード用の靴に作ったのが始まり。 自転車用の他に、野外用およびゴルフ用などの靴にも使われている。靴は作っておらず、靴メーカーに販売している。 シマノおよびパールイズミなどは、一部の靴に採用している。
ヒールループ
ヒールループ(かかと環)は留め具ではなく、靴の後部(かかと部)に付いている環状の帯。形状、大きさ、向き及び取付位置はメーカーによって各種ある。速やかに靴を着脱する必要のあるトライアスロン用の靴に使われる。
種類
ロード車用
マウンテンバイク用
街乗り用
旅行車用
トライアスロン車用
丘下り用
フリーライド用
女性用
BMX用
長靴
特製靴
ロード車用
走行速度を重視して、軽くかつ空気抵抗が少なくなるように作られている。靴底は平坦である。クリートは出ている。
靴底の材質としては、ナイロンが一般的。ガラス繊維強化ナイロンも使われる。
軽くかつ剛性が高い炭素繊維強化樹脂(CFRP)を使ったものはプロ用で価格は高い。靴底の剛性が高いとペダルへの力の伝達効率が高い。
マウンテンバイク用
歩くことがあるので、クリートは靴底に沈んでいる。靴底には滑り防止の突起模様がある。靴底(ソール)はゴム製で弾性のある材質が使われる。
街乗り用
底に沈んだクリートを付けたサンダル(SPDサンダル)がある。街乗りおよび短距離のサイクリングなどに使われる。右写真は3本ストラップ。
クリートが沈んでいない靴用のペダルであるSPD-RおよびSPD-SLには使えない。
旅行車用
長距離走行するので、クリートの付いた靴が効率よくペダルを漕ぐことができる。歩行のためクリートは靴底に後退したものが使われる。
重さ及び靴底の硬さなどは、ロード車用とMTB用の中間的な靴となっている。
ハイキング靴、テニス靴およびサンダル(SPDサンダル)に似せたものもある。 歩行時にはクリートカバーを付けることもある。
歩行専用の靴を携帯して、歩行時には履き替えることもある。
トライアスロン車用
基本的には、ロード車用と同じであるが靴の着脱を速やかに行う必要があるので、次のような特殊仕様を付け加えた靴がある。
靴下を履かなくてよいような靴の内面加工をしたもの及びヒールループを付けたもの。 ロード車用のストラップは靴全体を締めるために3帯が多いが、
ストラップを幅広の1帯として時間短縮を図ったものもある。水泳後の足の乾燥のために、メッシュの換気口を設けたものもある。
丘下り(ダウンヒル)用
基本的にはマウンテンバイク用と同じであるが、各種の障害物があるので足の保護に重点が置かれる。足首の保護およびつま先の補強がされている。
ペダルに足を乗せやすくするために靴底の幅は広くなっている。ペダルは幅広のものを使う。
フリーライド用
マウンテンバイクのフリーライド用のグリップピンの付いた平ペダル用の靴。
クリートは付かない。
トラック靴
トラックレーサーおよび競輪自転車に使う靴。何れの自転車もペダルにトウクリップが付いている。トウクリップで固定するので靴底にクリートは付いていない。 使用時間が短時間であるので、靴を足によく固定できるひもを使っているものが多い。軽量化と空気抵抗低減のために、靴底のかかとは平坦で出っ張っていない。トウクリップに入れやすいように靴先はやや尖っている。 トラックシューズともいう。
女性用
女性の足の形状に合わせた靴。
女性は男性に比べて、足幅およびかかと幅が狭く足のアーチの高い人が多い。特にかかと幅が狭い。
女性用靴の中には、女性向けの模様が付いているが、形状は男性用と同じでサイズが小さいだけのものもある。
BMX用
BMX車に乗るときに履く靴。
ゴム底が一般的。
クリートのないもの、クリートの付けられるもの、及び両方に対応しているものがある。
クリートの無い靴は、グリップピンの付いた平ペダルに対応している。
長靴(ブーツ)
一般の長靴はひざの下まである長い靴を指すが、自転車用の長靴はくるぶしをおおう程度の長さの靴を指す。
一般にクリートの付いた防寒仕様となっており、冬におけるオフロード走行、通勤、サイクリング及びサイクロクロス等に使われる。
特製靴
特殊な靴として、熱を加えて柔らかくして履き、足に密着させて冷却し、足の形状に合わせる靴(熱成型靴)。
ドライヤー加熱成型
家庭で自分の足に合わせて成形できる。熱を加えると柔らかくなるマイクロ繊維を使っている。ヘアドライヤーで熱を加えて柔らかくして靴を履き、靴紐をきつくしめる。 冷却後に靴を脱ぐと足の甲の形状になる。
オーブン加熱成型
家庭で自分の足に合わせて成形できる。まず、寸法の合う靴を選定する。靴を家庭用オーブンに入れて加熱する。加熱温度及び時間はメーカーによって異なり、70°で15~20分又は80°で4~5分など。 熱可塑性プラスチックが柔らかくなるので、足を靴に入れて靴ひもを締め、手で側壁下部およびアーチ部を押して足に合わせる。冷えると元の硬さに戻り使用することができる。 うまくいかなかったときは、何度でも加熱を繰り返すことができる。
オーブン加熱・真空成型
シマノの特製靴は、シマノのカスタムフィット成形機器(真空ポンプ等)のある自転車店で、足に合わせて成形できる。
まず、足に合う寸法の特製靴を選定する。 靴は熱可塑性のプラスチックで出来ており、オーブンで加熱すると柔らかくなり成形できる。オーブンで加熱した中敷を靴に入れて靴を履き、体重をかけて中敷を成形する。
加熱した靴を履いて、真空ポンプから出ているホースの端を靴のストラップで固定後、透明プラスチック製の吸引袋に入れて足首をマジックテープの付いた帯で巻いてシールする。 真空ポンプのスイッチを入れると吸引袋の空気が吸引されてなくなり、大気圧で靴が足に押し付けられて成形される(右図)。同じ操作を他方の靴にも行う。
足形成型
石膏などで足形を取って、それに合わせて靴を作るメーカーもある。
構造
靴は上皮、中敷、中間層及び靴底で構成されている。
中敷
インソール又はインナーソールとも呼ばれる。夏用および冬用もある。
土踏まず(アーチ)部の高さを低、中及び高の3種類を用意したメーカーもある。 ペダルと脚の関係がその人の足に合って、力が効率よくペダルに加えられるように修正することを意図した立体中敷もある。
中間層
中敷と靴底の間にある層。衝撃の吸収などのために、足裏にあわせた形状となっている。ミッドソールともいう。
靴底
ロード用は硬く平坦であるが、オフロード用は弾力性があり突起模様がある。靴底に換気孔を設けた靴があるが、歩くと土ほこりが入る可能性がある。アウターソール又はアウトソールともいう。
クリートを取付けるためのM5のねじ穴が付いている。
質量
各メーカーの片足の靴の質量を右のグラフに示す。ほとんどのメーカーは、片足の靴の質量を示しているが、一足の質量を示しているメーカーもある。
片足の靴(シュー)の質量はロード用が200~350gそしてオフロード用がは300~450gである。従って、一足(左右一組、シューズ)の質量はロード用が400~700gそしてオフロード用が600~900gである。 日本語の靴には複数形はないが英語のシュー(靴)には複数形のシューズがある。
靴カバー
防水または防寒などを目的として靴の上に履く靴。靴底にクリート穴が開いているものが一般的。かかと穴が開いているものもある。ジッパーは後に付いているものが多い。 伸縮性を持たせたものもある。反射テープの付いたものもある。材質はネオプレンゴムおよびポリエステル繊維など。オーバー靴またはオーバーシューズと呼ばれることもある。
靴サイズ
シマノのSPD靴は輸出が多いため、事実上の業界標準となっていた欧州サイズで表されている。靴サイズの換算表を表2および表3に示す。サイズに1/2(.5)の付いたもの(例えば38½)はハーフサイズと呼ばれる。本来、欧州サイズには、ハーフサイズはなかった。
靴サイズは長さを表しているが、同じサイズでもメーカーによって大きさ(長さ及び幅など)は異なる。足の長さは同じでも幅は人によって異なるので、3種類の幅を用意しているメーカーもある。 自分に合うサイズが分かっていても、メーカーを変えると合わないことがある。自分に合いそうなサイズの靴を実際に履いて確認することが望ましい。
利き手と逆の足が少し大きいと言われる。また朝と夕方では、足の寸法は少し異なると言われる。
プロの競技者の多くは、力の伝達を重視して足とぴったりと合うややきつめの靴を履いているといわれる。ただし、このようなきつめの靴は、歩くときにには快適でない。
表2 靴サイズ換算表
国名
サイズ
日本
男性
21.5
22
22.5
23
23.5
24
24.5
25
25.5
26
26.5
27.5
28.5
29.5
30.5
31.5
女性
21
21.5
22
22.5
23
23.5
24
24.5
25
25.5
26
27
28
29
30
31
欧州
35
35½
36
37
37½
38
38½
39
40
41
42
43
44
45
46½
48½
英国
男性
3
3½
4
4½
5
5½
6
6½
7
7½
8
8½
10
11
12
13½
女性
2½
3
3½
4
4½
5
5½
6
6½
7
7½
8
9½
10½
11½
13
米国
カナダ
男性
3½
4
4½
5
5½
6
6½
7
7½
8
8½
9
10½
11½
12½
14
女性
5
5½
6
6½
7
7½
8
8½
9
9½
10
10.5
12
13
14
115.5
cm
22.8
23.1
23.5
23.8
24.1
24.5
24.8
25.1
25.4
25.7
26
26.7
27.3
27.9
28.6
29.2
表3 靴サイズ換算表
区分
サイズ
シマノ
36
37
38
39
39.5
40
40.5
41
41.5
42
42.5
43
43.5
44
45
46
47
48
cm(近似値)
22.5
23.2
23.8
24.5
24.8
25.2
25.5
25.8
26.2
26.5
26.8
27.2
27.5
27.8
28.5
29.2
29.8
30.5
出所: シマノのカタログ
サイズの注:
欧州サイズはフランスサイズが普及したもので、ハーフサイズを設けないために、2/3cm(6.7mm)を1ポイントとしている。
英国サイズは赤ちゃんのサイズが零になっている。日本および欧州は零サイズの靴は存在しない。
米国サイズは移民した英国人が同じサイズなら本国より安いようにするため、大きいサイズを付けて販売したため。