- 概要
タイヤ未装着の車輪をホイールまたはホイールセットと呼ぶことがある。
ホイールおよびタイヤはメーカーが異なる。
- 構成
一般的なホイールの構成要素は、ハブ 、フリーハブ(後輪) 、クイックリリース 、スポーク 、リム 、ニップルおよびリムテープ。
- 強度
縦強度及び横強度がある。ホイールの強度はスポーク、リムおよびハブの強度で決まる。そして、ホイール強度のおよそ90%はスポークの強度で決まる。
スポーク数が多いほどリムのスポーク間隔が短くなるのでホイール強度は大きくなる。折りたたみ自転車はリム径が小さいのでスポーク数は28本でもよいが、経済性の観点から汎用性のある36スポーク穴のハブを使っている。スポーク張力が大きいほど、圧縮荷重によってスポークの座屈が生じないのでホイール強度は大きい。
リム幅が大きいとタイヤ接地部付近のリムにおいて、荷重を受けるスポーク本数が多くなるので強度は大きくなる。
フランジ間隔が大きいとスポークのブレース角が大きくなり横強度は大きくなる。
- リム材質

炭素鋼、アルミ合金、炭素繊維強化樹脂(CFRP、俗に言うカーボン)、マグネシウム合金及びスカンジウム合金などがある。
アルミ合金は鋼の約5倍の熱伝導率がある。
アルミ合金製リムは、1926年にMavic社が始めて世に出した。鋼製リムはスポークニップルを支持する強度が大きい。アルミ合金のリムベースに炭素繊維強化樹脂(CFRP)層を付けたリムもある。
スポークの張力がかかる部分はCFRP層厚を大きくしている。価格を下げかつCFRPリムに近い性能を得ることを意図している。
ブレーキパッドによって磨耗すると、工場で交換できるアルミ合金製のブレーキ面(右図の赤矢印)を付けたCFRPリムもある。
- 質量
 |  |
前輪 | 後輪 |
700Cの前後ホイールに関して、各メーカーのホイールセット質量のデータを打点したグラフを右上図に示す。横軸はスポーク本数そして縦軸はホイール質量を示している。
スポーク数1~4本は複合材ホイール(コンポジットホイール)と呼ばれるもの。スポーク数1本は、スポークのない円盤形のこと。同図の黒点はリム材質が炭素繊維強化樹脂(CFRP)製そして青点はアルミ合金製である。
リムの断面形状および寸法の違いが質量がばらついている一因となっている。前質量よりも後質量が大きいのは、ハブ質量の違いなどが原因である。
ロード車輪を構成しているハブ、スポーク、リム、チューブおよびタイヤの質量割合の一例を円グラフにして右図に示す。
前輪は、リム、タイヤ、スポーク、ハブ、チューブの順に質量が大きい。後輪は、リム、ハブ、タイヤ、スポーク、チューブの順に質量が大きい。
- 加速エネルギー
各社の各形式のロード用車輪に関し、加速エネルギーを打点したグラフを右に示す。グラフの横軸は、タイヤを含む車輪(ホイール+タイヤ)の質量を表している。
縦軸は、車輪を0から30km/hまで加速するのに要するエネルギー(単位はジュール)を表している。この加速エネルギーは、直線加速エネルギーと回転加速エネルギーの合計となっている。
グラフを見ると、加速エネルギーは、車輪質量に直線比例していることが見て取れる。車輪の質量が同じでも、質量の分布の違いによって車輪の慣性モーメントが異なるために点のばらつきが生じている。
車輪は直線加速に加えるに回転加速も必要とするので、加速性能に関しては質量が小さいことが重要となる。
加速エネルギーを式で表すと、
全加速エネルギー = 直線加速エネルギー + 回転加速エネルギー
= 0.5 m v2 + 0.5 I ω2
ここに、m は車輪質量[kg]、v は走行速度[m/s]、I は慣性モーメント[kg m2]そしてω は回転角速度[1/s]。
車輪の全加速エネルギーのうち約60%が直線加速エネルギーそして約40%が回転加速エネルギーである。
タイヤの慣性モーメントは、軽量車輪の慣性モーメントの約半分を占めている。
- 消費動力
走行速度が50km/hのときの前輪(ホイール+タイヤ)の消費エネルギーを右グラフに示す。
縦軸は消費動力[W]そして横軸はリム高さ[mm]となっている。
リム高さの低い浅リムよりも、リム高さの高い深リムの方が消費動力が少ない傾向が見られる。浅リムはさほど流線型になっていないが深リムは流線型になっている。
用途で大きく分けると、ロード車用、マウンテンバイク用及びシティ車用などがある。
ホイールに装着するタイヤの種類で分けると、クリンチャーホイール、チューブラーホイール及びチューブレスホイールがある。
クリンチャー ホイール
クリンチャータイヤ(WOタイヤ)の装着のできるクリンチャーリムを使ったホイール。
チューブラー ホイール
チューブラータイヤ(丸タイヤ)を装着するチューブラーリムを使ったホイール。
チューブレス ホイール
チューブを使わないチューブレスタイヤの装着のできるチューブレスリムを使ったホイール。
2-ウェイフィット ホイール
チューブレスタイヤ及びクリンチャータイヤが装着できるようにした形状のリムを使ったホイール。
概要
車輪の中央にあって車輪を支持して回転させる円筒状の部品。
中に軸受があってハブ軸が通り、両側にスポークを付けるためのハブフランジが付いている。
種類
前ハブ(フロントハブ)および後ハブ(リアハブ)がある。
フランジの高さによって、高フランジハブおよび低フランジハブがある。
ディスクブレーキの付くホイールは、ディスクハブを使う。
車軸にクイックリリースの付いたハブもある。
軸受
軸受としては、カップアンドコーン軸受(右図)またはカートリッジ軸受が使われる。
カップアンドコーン軸受は、カップ、玉およびコーン(円錐のこと)で構成されている。
カップとコーンの間で玉が回転する。
わんはハブ側にあり、一方玉押しは軸にねじ込まれて、ロックリングで固定されている。
ロックリングと玉押しの間にはスペーサーがある。
車軸における玉軸受の位置はメーカーによって異なり、次の4例がある。
(1)右図のように左はハブフランジ部にあり、右はフリーハブボディ部にある形。
(2)左右のハブフランジ部にあって、フリーハブボディ部にはない形。
(3)左右のハブフランジ部およびフリーハブボディ部にある形(合計3箇所)。
(4)左右のハブフランジ部および左右のフリーハブボディ部にある形(合計4箇所)。
構造
右図には、後輪ハブにフリーホイールの入ったフリーハブボディおよびカセットスプロケットを組み付けた構造例を示す。
朱色はハブおよびその玉軸受を示している。
寸法
カセットスプロケット10段及び11段用のハブの寸法例(DT Swiss製)を右下図に示す。
図の下半分が10段用の寸法そして上半分が11段用の寸法。
OLD(ロックナット間距離)は10段用が130mmそして11段用が131mmとなっている。
ハブフランジ間距離は、何れも50mm。
製法
ハブシェルは、ダイキャスト、冷間鍛造またはCNC機械加工によって作らる。
材質
ハブシェルはアルミ合金、チタン合金および炭素繊維強化樹脂がある。ハブ軸はCrMo鋼など。
質量
ハブ質量を打点したグラフを右に示す。
赤点は前輪ハブ(OLD=100)そして緑点は後輪フリーハブ(OLD=130,135)を示す。
いずれもクイックリリースは含まない。
平均質量は、前輪ハブが約140gそして後輪ハブが約300g。
- 接線組
ハブから接線方向にスポークを出す組み方。1874年に考案された。それまでは放射組みしかなかった。ハブからリムへのトルク伝達に有効なので、
ほとんどの自転車の車輪は接線組となっている。スポークの放射線からの角度は、スポーク数とスポーク交差数で決まる。
- 放射組
ハブから放射状にスポークを出す車輪の組み方。スポーク交差数は零で、スポーク長が最も短い。スポークによるトルク伝達の無い前輪に主に使われる。
車輪の横剛性がやや高くなることおよびスポークが短いので幾分軽くなるのが利点。スポークによるトルク伝達が必要な後輪には弱く、トルク伝達力の大きい接線組みが有利。接線組みより構造が簡単で、歴史的には接線組みが考案される(1874年)以前からあった。
一般に、横交差スポーク組が使われる。横交差スポーク組は、右フランジのスポークは左に片寄ったスポーク穴に入り、左フランジのスポークは右に片寄ったスポーク穴入るスポークの組み方。
半放射組
後輪のホイールにおいて、右側(駆動側)は接線組そして左側は放射組とするスポークの組み方。
駆動のない左側は放射組の利点を持たせ、駆動トルクの働く右側はそのトルクに対応できるように接線組にした組み方。前輪は放射組となっていることが多い。
- G3組
後輪のスポーク組において、左が1本に対し右(駆動側)が倍の2本とし、合計3本のスポークを1組とした放射組の一種。
右の張力は左より大きいので、右は左の倍の数のスポークで受けるようにしたもの。
スポークの本数は21本(7x3本)、24本(8x3本)および27本(9x3本)など。
カンパニョーロが始めたもので、横剛性および動力伝達の向上を意図している。なお、一般のスポーク組は4本を一組とする。
- 一対スポーク組
軽量化のために、軽量リムおよび16本又は20本に数を減らした2本1組(一対、右図の赤色および緑色のスポーク)のスポーク群によって構成したスポーク組。
ペアードスポークとも言う。 スポーク数を減らすと、1本当たりの張力は大きくする必要がある。またスポーク間のリムは長くなる。
そのため、一般のホイールのようにスポークを並べるとハブの左右から出ているスポークの張力によって、軽量リムはその中心面から左右にスポーク間隔で波打つ。
その防止のため、ハブの左右から出るスポークを一対(ペア)にしてリムに取付けることにより張力を均衡させリムの波打ちをなくしている。
米国のRolf Prima社が米国特許を取得したのが始まり。シマノは特許を回避して、一対スポークのホイールを作っている。
- オフセット組(おちょこ組)
リム中心面とハブフランジ(つば)の距離が左右において異なるスポークの組み方。おちょこ組ともいう。フリーホイールの付いている車輪はオフセット組となる。
リムの中心面に対し、ハブのフランジ間の中心面が位置する方向をオフセット方向という。
スポーク長は、左右において異なる。
車輪のスポーク数(左右の合計)及び交差数を半角数字で入れて[計算]を押して下さい。
スポーク角(案内角)が計算できます。
[ 計算例 ] スポークが32本そして交差数が3交差の場合 スポーク角は68度。
|
|
- スポーク角
スポークはハブフランジからリムに向かって、完全な放射状に出ているように思えるが、よく見ると放射線(右図の緑色線)から或る角度(スポーク角、案内角またはリード角)を持って斜めに出ている(上図の赤色線)。
そのため、他のスポークと交差している。案内角はリムを案内(リード)するいうことから名付けられている。 スポーク角を求める計算器を右に示す。
- スポーク角の意味
ハブからリムにはスポークによって走行のための回転力を伝える。スポークが完全な放射状となっていると、回転力によってスポークを曲げようとする力が働く。
スポークにスポーク角(リード角)を持たせると、回転力をスポークの張力として伝達できる。
- 交差数
1本のスポークが他のスポークと交差している数は、交差(クロス)数と言い、シティサイクルでは2交差そしてスポーツ車では3交差が多い。
- スポーク角とスポーク長
放射組と呼ばれる完全な放射状(スポーク角零)のスポークの長さが最も短く、スポーク角が大きくなるほど、スポークは長くなる。
そのため、スポーク長の計算には交差数の入力が必要になる。
表1 スポークの交差数と応力の関係
交差数 |
2交差 |
3交差 |
4交差 |
縦(半径方向)応力 |
0.98 |
0.99 |
0.99 |
横(横方向)応力 |
1.13 |
0.89 |
0.81 |
捩り(接線方向)応力 |
3.12 |
3.15 |
3.18 |
|  | |
交差数は、1本のスポークに注目した時、他のスポークと交わっている数。
2交差又は3交差(右写真)が多い。実用的な交差数はスポークの本数で決まる。
交差数とスポーク応力の関係を表1に示す。数値が大きいほど応力は大きい。
横方向応力だけが交差数によって大きく変わっている。横方向応力は曲がり(コーナリング)のときに大きくなる。
- スポーク数
表2 ロード競技車の
スポーク数
例 |
前輪 |
後輪 |
A |
18 |
24 |
B |
20 |
24 |
C |
24 |
28 |
D |
24 |
32 |
E |
28 |
32 |
自転車の長い歴史において淘汰され、前後輪共に32本または36本のスポーク数が最適であることになっている。
スポーク数が多いほど車輪の強度は大きくなる。
スポーク数28本は強度および耐久性を相対的に重視しない競技用に向いている。
32本は軽さを重視するロード車に向いている。36本はオフロード車、旅行車および体重の重い人に向いている。36本のロードおよびタンデム車もある。
ただし、タンデム車は40本以上とするのが一般的。
ロード競技車のホイールの中には、軽量化及びコストダウンのためにスポーク数を減らしているものがある。
そして前輪のスポーク数を後輪よりも減らしている。その例を表2に示す。スポーク数を減らすと張力は大きくしなければならない。前輪の荷重は後輪よりも小さい。 「重心位置」
シティ車は、ほとんどが標準的な36本。360°/36本=10°より、36本のスポークは10°間隔で並んでいる。
- 交差数
表3 スポーク数と交差数の関係
スポーク数 |
12 |
16 |
20 |
24 |
28 |
32 |
36 |
40 |
48 |
交差数 |
1 |
OK |
OK | | | | | | | |
2 |
| |
OK |
OK |
OK |
OK |
OK |
| |
3 |
| | | |
OK |
OK |
OK |
OK |
OK |
4 |
| | | | | |
OK |
OK |
OK |
5 |
| | | | | | | |
OK |
用途例 |
| |
| 競技 |
競技 |
ロード |
外道、旅行 |
タンデム |
タンデム、業務 |
|
注) 外道: オフロード 、 旅行: 旅行用自転車 、 タンデム: 二人乗り自転車 、 業務: 業務自転車 |
スポーク数と交差数の望ましい関係を表3の OK として示す。
スポーク数が多いほど交差数を多くしないと、スポーク角は大きくならない。スポーク角は60°前後が適切である。表2においては、スポーク角が45°~80°となる交差数をOKとしてある。
2交差する組み方は4本取り、3交差する組み方は6本取りそして4交差する組み方は8本取りと呼ばれる。
- 強度
ホイール強度のおよそ90%はスポークの強度で決まる。スポーク数が多いほどリムのスポーク間隔が短くなるのでホイール強度は大きくなる。
車輪への負荷の大きい自転車ほど、一般にスポーク数が多い。その関係を用途例として、表2に示す。
外道(オフロード)を走る自転車は、路面が平坦でないため衝撃がある。旅行用自転車は荷物を積むため負荷が大きい。
- スポーク張力と荷重
車輪がどれだけの荷重を支えられるかは、スポーク張力で決まる。車輪の接地点又はその近くの2~4本のスポークが荷重を支えている。
スポークは引っ張り力(張力)には強いが、圧縮(座屈を起こす)や曲げには弱い。そのため、初期張力を与えることにより、スポークに加わる力は圧縮や曲げでなく張力となるように工夫されている。
- 前後のスポーク数
平地を走るロード車のホイールの中には、軽量化等のために前輪のスポーク数を後輪より減らしているものがある。ホイールメーカー各社の前後で異なるスポーク数の仕様から取った前輪(縦軸)および後輪(横軸)のスポーク数を打点したグラフを右に示す。
前輪が後輪より4本少ないホイールが多い。前輪のスポーク数が後輪より少ない自転車は平地専用と考えればよい。平地においては、前輪より後輪に働く力が大きい。しかし、下り坂においては、後輪よりも前輪に働く力が大きくなる。下りの曲がり(コーナリング)においては、さらに大きくなる。
オフロードを走るマウンテンバイクは下り坂も走るので、前輪と後輪のスポーク数は等しい。
- 空気抵抗
個々のスポークに回転による空気抵抗があるので、スポーク数に比例してスポークによる空気抵抗は大きくなる。しかし、人体の空気抵抗に比べればはるかに小さい。
概要
スポーク保護版のこと。外径200mm前後、質量20g前後(樹脂製の場合)の、樹脂製または金属製の薄い円盤。樹脂製は透明および不透明がある。
型式
ハブに固定する形およびスポークに固定する形がある。スプロケットの最大歯数およびスポーク本数に対応するものを選ぶ。
機能
保護板は後輪の右側スポークの外側に付けて、ディレイラーの何らかの故障またはオフロードなどでの事故によって、外れたチェーンがスポークとぶつかってスポークを破損すること又はチェーンの噛み込みによる急激な停止に基づく転倒を防止する。
規則
米国の消費者製品安全委員会(CPSC)はスポークプロテクターの取り付けを義務付けている。
- 剛性
剛性はホイールを変形させるのに要する外力の大きさ(単位の例は[N/mm])。
垂直外力としては、乗車する人の体重による力がある。横方向外力としては、コーナリング時または立ち漕ぎ時の体重による力がある。ねじり力としては後輪による道へのトルク伝達がある。
高剛性のホイールは、同じ変形をさせるのに大きな外力を必要とする。同じ外力に対しては、変形量が小さい。
ホイールの剛性には、縦(半径方向)剛性、横(横方向)剛性及びねじり(接線方向)剛性がある。
前輪ホイールの縦剛性は、約1500~2500N/mm。1mm変形させるのに約150~250kgfの荷重が必要。なお、剛性は強度とは異なる。
- 交差数の影響
表4 スポーク交差数とホイール剛性の関係
交差数 |
2交差 |
3交差 |
4交差 |
縦(半径方向)剛性 |
100 |
97 |
94 |
横(横方向)剛性 |
100 |
91 |
82 |
ねじり(接線方向)剛性 |
37 |
79 |
100 |
スポークに基づく車輪の剛性はスポークの交差数によって変わる。
交差数(2、3および4交差)が車輪の縦剛性、横剛性およびねじり剛性に与える影響を表4に示す。
剛性が最も大きい交差数の剛性を100%として相対的な割合を示してある。
縦剛性および横剛性は交差数が少ないほうがやや大きいのに対し、ねじり剛性は交差数が多いほうが大きい。
駆動力の伝達と関連する、ねじり剛性が大きい方が加速性が良い。
- ブレース角の影響
ブレース角はホイールを後方から見たとき、そのスポークとハブ軸に垂直な仮想線との角度(右図)。
ブレース角が大きいほど、ホイールの横方向の剛性は大きい。
前輪は後輪よりブレース角が大きいため、横剛性が大きい。
スポーク数の等しい700Cと650Cのホイールを比較すると、650Cはブレース角が大きいため横剛性が大きい。
スポーク数が多いほど剛性は大きいことを考慮すると、32本スポークの700Cと28本スポークの650Cのホイールの横剛性はほぼ等しい。
- リム径の影響
スポーク数などが等しい場合、小さいホイールは大きいホイールより横剛性が大きい。650Cホイールは700Cホイールより約25%剛性が大きい。
- スポーク径の影響
スポーク径が大きいほど、ホイール剛性は大きい。例えば、32本スポークのホイールで比較すると、スポーク径2.0mmのホイールは、スポーク径2/1.45mmの段付きスポークの
ホイールより約10%剛性が大きい。
張力の影響
実用範囲内でのスポーク張力の違いは、ホイールの剛性に影響するほどの違いでなく、張力を大きくしてもそのホイールの剛性はほとんど変わらない(右図のグラフ)。
- ハブフランジの影響
前ハブフランジ間隔は後ハブフランジ間隔より広いので、前ホイールは後ホイールより剛性が高い。
ただし、トラックホイールは後ハブフランジ間隔が広いので、後ホイールの剛性が高い。
エルボ位置の影響
スポークのエルボがハブフランジの外側にくる方式(エルボアウト又はヘッドインと言う)が
ハブフランジの内側にくる方式
(エルボイン又はヘッドアウトと言う)よりホイールの剛性が約13%大きくなる。
そのため一般にはエルボアウトが多い。
右図はエルボアウトとエルボインが円周方向に交互となっている。
- リムの影響
直感に反して、ホイールの剛性に対するリムの影響はスポークの影響よりかなり小さい。
CFRP(炭素繊維強化樹脂)などの複合材(コンポジット)で作った、3~5本のスポークが付いたホイール。バトンは棒のことでスポークを意味している。
リム及びスポークは中空となっている。円盤ホイールとほぼ同等の空気抵抗であるが、横風の影響を受けにくい。
強度を確保した上で、空気抵抗の低減および軽量化を意図している。クリンチャータイヤ用および丸(チューブラー)タイヤ用がある。
スポークに対する張力などの保守は必要ない。ハブはシマノなどの既製品が使われる。タイムトライアル車などの前輪として使われる。
スポークが3本のものは3(又はトライ)スポークホイール、4本のものは4スポークホイールそして5本のものは5スポークホイールと呼ばれることもある。
概要
スポークの代わりに円盤(ディスク)を使ったホイール。ディスクホイールとも言う。
構造
内部が空洞の形、ハニカム又は段ボール状にした形及び硬質フォームを充填した形がある。
種類
チューブラータイヤ(丸タイヤ)を使うチューブラーホイールおよびクリンチャータイヤを使うクリンチャーホイールがある。
空気抵抗
空気抵抗はエアロリムにエアロスポークを付けたホイールの70%程度と小さい。
空気抵抗を減らすために、ディンプルを設けた形がある。
空気抵抗を減らすためかつ横風の影響を軽減するために円盤形状をレンズ状にした形がある。
材質
円盤の材質は、炭素繊維強化樹脂(俗に言うカーボン)またはアルミ合金など。内部が空洞の形及びフォームを充填した形がある。
質量
890~1340g。ワイヤースポークホイールの1.8倍程度と重い。
用途
主にタイムトライアルバイク及びトライアスロンバイクに使われる。
前輪に使うと、横風でハンドル操作がふらつくので後輪のみに使うことがある。
重いので坂では不利となるため、平坦路で使われる。
(A) タイヤ径と速度から求める
ホイール(車輪)回転数が大きいと、走行速度は大きくなる。次は、タイヤ外径及び走行速度からホイール回転数を求める計算器です。
[ 計算例 ] タイヤ外径 678 mm そして走行速度 34 km/h のとき ホイール回転数は 266 rpm又は4.43 rps となる。
(B) ケイデンスとギア比から求める
ギア比が大きいとホイール(車輪)回転数が大くなり、走行速度は大きくなる。次は、ケイデンス及びギア比からホイール回転数を求める計算器です。
[ 計算例 ] ケイデンス 70 rpm そしてギア比 3.78 のとき ホイール回転数は 265 rpm 又は4.41 rpsとなる。
ホイール回転数グラフ
「計算器」で計算したホイール回転数をグラフにして右に示す。
グラフの縦軸はホイール毎秒回転数[rps]そして横軸は走行速度[km/h]。
走行速度とホイール回転数は直線関係にある。
小径車、ロード車及び29erの3種類をグラフにした。
走行速度が同じ場合は、タイヤ外径が小さいほどホイール回転数は速くなる。
ホイール回転数はエンジンなどの回転数と比べると低速回転である。
(注) rpmは毎分回転数そしてrpsは毎秒回転数。
- 概要
車輪のハブの軸穴に通して、ハブをフォークのつめ又はチェーンステイつめに固定するために使う。軸の一端にカム機構およびレバーそして他端に調整ナットなどの付いた部品。
この串状の軸単体をスキュアーと呼ぶこともある。スキュアーは串のこと。
輪行またはパンク修理に役立つ。クイックリリースレバーまたはスキュアーとも言う。盗難防止を目的としたロッキングスキュアー もある。
-
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密閉カム |
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開放カム |
種類
密閉カムと開放カムの2つの形がある。密閉カムはカンパニョーロの時代からある形で、カムがキャップの中にあり注油してもカム部が粉塵の付着で汚れない。
開放カムは1980年代に出現した形であり、カムとレバーが一体となっているため生産原価は少し安く質量はやや小さい。
- 寸法
前輪と後輪ではロックナット間距離(OLD)が異なるので、それに合った長さのスキュアー(串)を使う。ロックナット間距離は、100、130、135、140及び145mmなどがある。
スキュアーの直径は、5mm前後。ナットのねじは、M5であることが多い。軽量化のために中空にしたスキュアーもある。
- ばね
円錐ばねが使われている。円錐ばねは、円錐形をした圧縮コイルばね。その特徴は、胴の曲がり(座屈)が少なく、初期高さが低く、そして密着高さも低くできること。
円錐ばねは、竹の子ばねとは異なる。円錐の頂部を内側に向けて取付ける。
- 材質
スキュアー(串)の材質は、クロムモリブデン鋼およびチタン合金など。レバーの材質は、アルミ合金および炭素繊維強化樹脂(CFRP)など。
- 使い方
開か閉が一目で分かるよう、レバーは人差指を少し曲げたように曲がっている。レバーはその軸に対して180度回転し、回転端において指先(レバー端)が車輪に向いていれば閉(CLOSEの文字が外に向く)そして指先(レバー端)が外に向いていれば開(OPENの文字が外を向く)。中間位置で止めてはならない。
レバーの180度回転によって、カムで押し付けて固定する。ナットのように、ねじで固定するのではないので、レンチを回すようにレバーを車軸に対して回してはならない。
レバー位置は右側(チェーン側)とし、車軸に対してどのような回転位置に持って行っても良い。
一般には、フレームと一緒に握れるようまた邪魔にならないよう、閉でフレームに沿う位置とする。
開→閉または閉→開のレバー操作の終始端近くにおいて、カム作動によるかなりの抵抗を感じるのが正常。
この抵抗すなわち固定力の調整は、ハブに対してレバーと反対側にある調整ナットを指で回して行う。右に回すと強くなり、左に回すと弱くなる。
- 歴史
サイクリストのカンパニョーロが1930年に発明した。クイックリリース発明した動機は次のようなことであった。
当時、後輪の両側に歯数の異なるスプロケットが付いていて、後輪を外して左右の向きを変えて変速(2速)していた。
競技では、この変速の時間も含まれるので、時間短縮のためにクイックリリースを発明した。競技には長距離の坂があり、変速が必要であった。
カンパニョーロが変速機(ディレイラー)を発明したのは、その後の1933年であった。
- マルチ工具付き
特殊なクイックリリースとして、レバー部をマルチ工具兼工具収納部としたものがある。
工具は、六角レンチ(4、5、6及び8mm)、十字ねじ回し、ニップル回し及びチェーン切りとなっている。
ロッキングスキュアー
車輪の盗難防止のために、鍵または専用のレバーを使わなければ開放できないようにしたスキュアー(串)。
串の長さは、前輪のつめ間隔および後輪のつめ間隔によって異なるが、鍵または専用のレバーは共通となっている。
レバーを使かわずに、六角レンチで開閉する形式もある。
- 概要
タイヤの上部のおおい。タイヤに付いた雨水や泥などが、タイヤの遠心力で飛ばされたのを受け止め、人体および自転車に付着するのを防止する。
フェンダー(主に米国)またはマッドガード(主に英国)とも言う。実用性より軽さや空気抵抗を重視する車種には、泥よけはない。
- 種類
シティ車を含むロード車用およびマウンテンバイク用がある。前輪に付ける前泥よけと後輪に付ける後泥よけがある。
工具なしで着脱できるものもある。伸縮性となっており、小さくしてバッグに入れて運搬できる形もある。
- ステー
泥よけをフォークおよびフレームに固定する支柱は、泥よけ支え、泥よけステーまたは泥よけブレースと呼ばれる。
マウンテンバイク用の後泥よけの中には、サドル支柱に取付ける型もある。
表5 泥よけの寸法 (JIS D9411)
車輪径の呼び |
半径 [mm] |
板厚 [mm] |
金属製 | 樹脂製 |
20型 | 275 |
0.35以上 | 1.2以上 |
22型 | 300 |
24型 | 325 |
26型 | 350 |
27型 | 370 |
28型 | 375 |
- 寸法
JIS D9411(自転車用どろよけ)に規定されている泥よけの半径および板厚を表5に示す。
幅の規定がないが、泥よけ幅はタイヤ幅より7mm以上大きいことが望ましい。
メーカーは各種の幅の泥よけを用意している。
- 材質
本体材質は、アルミ合金、プラスチックおよびクロモプラスチックなど。
ステー材質は、ステンレス鋼など。特殊なものとしては、竹製の泥よけがある(右図)。
- 泥フラップ
泥よけだけでは不十分な場合は、泥よけの下部に泥フラップ(マッドフラップ)を付ける。長いほど効果が大きい。
泥フラップは泥よけの下部から吊り下げる軟らかい下部泥よけ。雨の日などにタイヤが跳ね飛ばした泥などが後方へ飛ぶのを防止する。
前輪泥よけの泥フラップは足や駆動系に泥などが当たるのを防止する。後輪泥よけの泥フラップは後続の自転車や人に泥などが跳ねかかるのを防止する。
材質は軟らかいゴム、皮または樹脂など。幅は末広がりとなっているものが多い。フラップは揺れる、はためく、という意味。
- 泥よけすき間
泥よけを取り付けることができるすき間。フォーククラウンとタイヤ間のすき間並びに及びチェーンステイブリッジ及びシートステイブリッジとタイヤ間のすき間を表す。
泥よけが付いていない自転車でも、仕様に「泥よけすき間」又は「泥よけすき間あり」と書いた形は、後で泥よけが装着できるすき間があることを表している。
トラックレーサーのように泥よけを付けることがない自転車は、泥よけすき間がない。泥よけすき間のある自転車のキャリパーブレーキは、リーチが大きい。
フェンダークリアランス(主に米国)及びマッドガードクリアランス(主に英国)ともいう。
- センターゲージ
リムの中心がハブのロックナット間の中心に来ているか調べる測定器。弓形(山形)の本体の中央に距離ゲージが付いている。
本体(山形の両足)をリム側面に乗せ、中央のゲージがハブのロックナット面に接するまで下ろす。車輪の左右でゲージ位置が等しければ、中心が出ている。
リムはスポークのニップルを締めた方に動く。右スポークの全ニップルを均一に締めると、リムは右に動く。
また、左スポークの全ニップルを均一に緩めても、リムは右に動く。この原理で芯だしをする。
- 振取台
車輪の車軸を支持して、横方向の振れ(横振れ)および半径方向の振れ(たて振れ)を調整して振れを無くすことにより、軸に対する車輪の真円度および垂直度を出すために使う道具(台)。
リムと距離ゲージの半径方向および左右方向のの間隔を見ながら、リムのニップルをニップル回しで回して調整する。ダイヤルゲージが取り付けできるものもある。
車輪径は26型から28型(又は29型)まで対応できるものが多い。
- スポーク張力計
ハブとリムのニップルによってスポークが引っ張られている力(スポーク張力)を、間接的に測定する計器。
張力計の2つの固定柱でスポークをはさみ、その中央の可動柱を垂直にばねで押して変位を指示するようになっている。
空力(エアロ)スポークは平たい面を押す。張力が大きいと、変位は小さい。スポークの材質、太さおよび形状によって変位は異なるので、これらに対する換算表が付属しており、換算表より張力を読み取る。
ホイールバッグともいう。車輪を入れて持ち運ぶため、又は保管するためのバッグ。
手提げ紐が付いている。着脱できる肩掛け紐の付いた形もある。
車軸の当たる部分は補強されている。
1輪用および2輪(前輪および後輪)用がある。2輪用は中に両輪の仕切りが付いている。
クイックリリースなどを入れる内ポケットまたは外ポケットが付いた形もある。
バッグの材質はナイロンなど。
耐衝撃性などのプラスチックで作ったものは、ホイールケースとよばれることもあり、飛行機による運搬などに使われることがある。
ホイールのスポークに付ける反射器。
反射器の色はCPSCの規則(16CFR 1512)では、
前輪は無色または黄色そして後輪は無色または赤色と規定している。
ホイール反射器(フレクター)とも言う。
LED灯が付いていて光る形もある。
1個または複数のLEDランプを、ホイールのバルブまたはスポークなどに付けて、夜間などによく目立つようにするライト。
ホイールの回転と目の残像効果によって円形に見える。
30個のLEDランプを並べた制御器付きのセツトをスポークに取付け点滅を制御して、残像模様を作り出す形がある。
付属のソフトで描いた文字及び絵を表示することができる。
低速だと十分な残像効果が得られず鮮明に見えない。
リムに取付けた12個のLED灯が道路を照らすようにした形もある。
これはフォークに付けた磁石から速度データを得て、ライトが前方に来たときのみ点灯する。
電源は電池またはハブダイナモ。
バルブに付けるライトは、バルブライトとも言う。
概要
自転車速度と風速の合わさった結果として、自転車乗車者が経験する相対的な風の角度。ホイールなどの抗力(空気抵抗)はヨー角(ヨーアングル)によって変わる。
計算式
ヨー角βは次式で求められる。
β=tan-1[(V・sin(α)/{U+V・cos(α)}]
ここに、
α : 風向角度 (ウインドアングル、自転車の進行方向と風向の角度)
U : 自転車速度 [m/s]
V : 風速 [m/s]
ヨー角計算器
次にヨー角計算器を示す。走行速度、風速及び風向より計算する。
計算例
自転車速度40km/h、風速8m/sそして風向角度30°の場合。
自転車速度は11.1m/s、相対速度(有効速度)は18.5m/sそしてヨー角は12.5°となる。
ヨー角及び抗力
タイヤの付いたスポークホイールのヨー角と抗力の関係をグラフにして右図に示す。
走行速度32km/h及び48km/hについて示してある。
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