概要
後変速機のこと。変速のために、後輪スプロケット間でチェーンを移動させる。
構造
プーリをスプロケットと平行に移動させるための平行四辺形のリンク機構および上下2個のプーリの付いたプーリケージで構成されている。上プーリはチェーンをスプロケット間に案内する役目があり案内プーリと呼ぶ。下プーリはチェーンの張りを維持する機能が与えられており、張りプーリと言う。
動作
小スプロケットから大スプロケットへチェーンを移動する(持上げる)ときは、デイレイラーのばねに抗して、シフターでシフトロープを引き案内プーリを動かす。大スプロケットから小スプロケットへチェーンを移動する(落とす)ときは、シフターのロープでデイレイラーのばねの張力を解除すると、案内プーリは元の位置に戻る。
ケージ長
案内プーリおよび張りプーリの付いているプーリケージには、短ケージ、中ケージ及び長ケージがあり、ケージ長が長いほどキャパシティが大きい(下表)。
車種 | キャパシティ | ||
---|---|---|---|
短ケージ | 中ケージ | 長ケージ | |
ロード車 | 29T (SS) | - | 37T (GS) |
MTB | - | 33T (GS) | 43T (SGS) |
スラント角
マウンテンバイク用とロード系用では、平行四辺形面の傾き角(スラント角)が異なる。
動き比
動き比は1:2(シマノ)と1:1(SRAM)の2種類がある。
ノーマル
平行四辺形リンク機構のばねの作動方向によって、高ノーマルおよび低ノーマルがある。
限界調整
後輪の最小スプロケットおよび最大スプロケットから外へチェーンが脱落しないように、作動限界を設定する。ディレイラーを交換したとき以外は調整の必要性は稀である。
トップ調整 : チェーンを最小スプロケットに移し、後から見て、案内プーリの中心線が最小スプロケットの外側の線の上に来るように、トップ(H)調整ねじを回して調整する。
ロー調整 : チェーンを最大スプロケットに移し、案内プーリの中心線が最大スプロケットの中心線の上に来るように、ロー(L)調整ねじを回して調整する。
B張力調整
後ディレイラーには2個のコイルばねが付いている(外から見えないが手で動かすと分かる)。張りプーリの付いたケージに張力を与えチェーンのたるみを取るばねAおよび本体(平行四辺形)に張力を与えるばねB。ばねAの張力は調整できない。B張力調整ねじを回すと、本体の傾き角、従って案内プーリとスプロケット間の距離が変わる(結果的に、ばねBの張力も変わる)。
チェーンをクランクの最小スプロケットおよび後輪の最大スプロケットに移し、クランクを逆に回す。チェーン詰まりをしないで、案内プーリがスプロケットにできるだけ近づくようにB張力調整ねじを回して調整する。次に、後輪の最小スプロケットにチェーンを移し、チェーン詰まりがないことを確認する。
アジャスター
左に回す(ロープを張る)と大スプロケットへチェーンが移行しやすくなる。右に回す(ロープを緩める)と小スプロケットへチェーンが移行しやすくなる。大スプロケットへの移動が迅速でない場合は、左に回す。左に回すと、ケージが内側へ動く(内側に大スプロケットがある)。アジャスターの調整範囲を超えている場合は、ロープ固定ボルトを緩めてロープ長さを変えてアジャスターで調整する。
ハンガー
ディレイラーをフレームに取り付けるためのディレイラーハンガーがある。
保守
ディレイラーがスムースに動くように、可動部に注油することが望ましい。回りに付いた潤滑油に粉塵などが付着しないように、拭取る。
部品
マウンテンバイ用のシマノのXTRディレイラーを分解した写真を示す。
リコール
SRAMは2013年に、RED10速の後ディレイラーの平行四辺形のピボットピンがはずれディレイラーがホイールにかみこむことがあるとして、1700個をリコールした。