概要
サドルを支持している支柱管。米国ではシートポスト、英国ではシートピラーと呼ばれる。
サドル支柱はボトムブラケットより後方にやや傾いて立ち上がった立管(シートチューブ)に差し込まれている。
高さ調整
立管へのサドル支柱の差込長さを変えることによって、サドル高さを調節できる。安全上、はめ合わせ限界標識が刻印されているので、その限界以上にサドル支柱を立管より出してはならない。
限界標識が無い場合は、支柱外径の2.5倍以上差し込む。
レール中心線から限界標識までの距離は有効サドル支柱長となる。
有効サドル支柱長は200~420mm。マウンテンバイク(MTB)のサドル支柱はロード車のそれよりも長い。
長さ目盛りを付けた形もある。中には螺旋(スパイラル)状の目盛りを付けた形がある(右図)。
サドルクランプ
(1) サドルクランプでサドルレールを固定する。クランプと支柱が一体となった形およびクランプが独立の形(シティ車など)がある。
(2) サドルレール間隔は、クランプのレール間隔と同じであること。
(3) サドルレールを安定して支持するために、クランプ幅は35mm以上あることが望ましい。
(4) サドルの左右のレールを、1本のボルトで締める 1ボルトシートポスト 及び2本ボルトで締める 2ボルトシートポスト がある。
(5) 前後の傾き角を-15~+15°の範囲で調節できるようにした形がある。サドルの角度を調節できる。
サドル支柱クランプ
サドル支柱はサドル支柱クランプで立管に固定する。
クイックリリースのクランプで固定する部品として、クイックリリースクランプがある。
オフセット
一般に、サドル支柱とクランプとの間にオフセットがある。
オフセットは0(オフセットなし)~50mm(例えば、25mmまたは40mmなど)で、実質立管角(有効立管角)および
コクピット長に影響する。
2本のボルトを緩めてオフセットを18~30mm調節できる形もある(右図)。
前方にオフセットさせたフォワードシートポスト(フォワードサドル支柱)がある。
支柱外径
サドル支柱の外径は、立管の内径に対応していなければならない。
サドル支柱外径は標準化されておらず、21.2~31.8mmまで、ほぼ0.2mm間隔であり混乱している。
支柱外径に対する相対的個数をグラフにして右図に示す。27.2mmが多い。次に27.0mm、26.8mm及び26.6mmが多い。
この外径は、はめ合わせ限界標識の下に刻印されている。
支柱外径が立管の内径より小さい場合に、そのすき間を埋める円筒状の適合部品として、サドル支柱シムがある。
支柱肉厚
軽量化のめに内径を楕円形にした形もある。例えば、前後の肉厚は3mmそして左右の肉厚は1mmとしている。
支柱材質
サドル支柱の材質は、鋼(ニッケルクロムめっき)、アルミ合金、チタン合金、炭素繊維強化樹脂(CFRP、俗にいうカーボン)又は
スカンジウムアルミ合金など。
アルミ合金製は陽極酸化によって、銀色または黒色などに着色している。
腐食
アルミ合金製のサドル支柱は、鋼製の立管(シートチューブ)に入れると雨水によって電解腐食を起こして膨らみ抜けなくなるので、腐食による固着防止のためグリースを塗布して差し込む。
ただし、CFRP(カーボン)製のサドル支柱は一般のグリースを塗布してはならない。カーボングリースを塗布するのはよい。
長さ、質量
外径27.2mmのサドル支柱の長さおよび質量を打点して右のグラフに示す。ほとんどのサドル支柱の質量は150~350gの範囲に分布している。
質量の違いは、長さのほか、材質、肉厚、頭部の大きさ及びオフセット距離によって生じている。
軽量にするために、
トリプルバテッド管を使った形もある。支柱の剛性は、材質のほか、短い長さ、大きい外径および大きい肉厚によって大きくなる。
色
陽極酸化により、銀、黄、青、紫、白、緑、赤及び黒などに着色した形がある。
特殊サドル支柱
(1) 緩衝器が付いた、
サスペンションサドル支柱。
(2) レバーにより、走りながら数秒でサドル高さを変えられる、可変サドル支柱。
(3) サドル支柱上部に付けたヒンジ機構により、サドル前後位置をロード用及びトライアスロン用に一瞬で変えられるデュアルポジション形がある。
(4) 立管とサドル支柱が一体となった、一体サドル支柱(インテグレーティッド サドル支柱)がある。
(5) 一輪車に使う、一輪車サドル支柱がある。
(6) 断面形状がD形のものがある。
(7) 椅子として使った形がある。
バッグ
サドル支柱に取付けるバッグとして、サドル支柱バッグ がある。予備品及び工具等を入れる。
リコール
(1) Look Cycle社は、2000~2002年に販売したErgopost3のサドルクランプが破損する可能性があるとしてリコールした。
(2) Cannondale Bicycle社は2004年に販売した自転車約1,480台のサドル支柱(Lee Chi社製1-X型)は製造不良により亀裂が入る可能性があるとしてリコールした。
メーカー
日東 、3T Design、Advanced Bike Research 、Aerozine Bike 、Aerus Composites 、Ambrosio 、American Classic 、Avenir 、AX-Lightness 、Azonic(O’Neal)、BBB、BikeHard 、Blackspire Designs 、Blackwell Research 、Bontrager 、Brunn Bike Parts 、Burgtec 、Cinelli 、Controltech Bikes 、Culprit Bicycles 、Da Bomb 、
Dash Cycles 、Dean Ultimate Bicycles 、
Deda Elementi 、 Easton Sports 、Element Technic 、Enigma Titanium 、Enve Composites 、Extralite 、Fac Michelin 、
FireEye Bikes、
Forza 、Full Speed Ahead、FUNN 、Gass Project 、Giant Bicycle 、Grammo Factory Outlet 、Hostettler(ixs) 、Hsin Lung 、Interloc Racing Design 、
ITM Bike Components 、JD Components 、Jinn Yeh Industrial 、Kalloy 、Karbona Parts 、Kcnc Bikes 、Ken Chang Ind. 、Kona Bikes 、
Kore Bicycle Components 、 Kuota 、Lee Chi 、L.H. Thomson 、Loaded Precision 、Look Cycle 、Lynskey Performance Designs 、Miranda & Irmao 、Moderne Tech 、NC-17 、Neuvation Cycling 、Nuke Proof 、Octane One 、Origin8 、Original Bike Engineering 、Oval Concepts 、Paul Component Engineering 、Pedal Force 、Pro 、Profile Design 、Pro-Lite 、
PZ Racing 、Race Face 、
Ragley Bikes 、Ratio Bike Design 、Ravx 、Real Design 、Ritchey Design 、Rotor Bike Components 、Sampson Sports 、Schmolke Carbon 、Scott Sports 、Selcof 、Sette 、Seven Cycles 、Sibex Sports 、Speed Defies Gravity 、SRAM(Truvativ) 、Starley Bikes 、Stella Azzurra 、Storck Bicycle 、Syncros 、Syntace 、Syntek Carbon Fiber Technology 、Titec 、Token products 、Trigon Bicycles 、
Trigon Exotic Material Technology 、True Temper Sports 、
Twofortythree Components 、Ultimate Sports Engineering(USE) 、Van Nicholas Bicycles 、
VCRC Bike 、 Velocite Tech 、VSI Products(SINZ) 、Williams Cycling 、Winwood 、Woodman Components 、Xi’an Changda Titanium Products 、Zipp Speed Weaponry 、
など。
参考資料
「サドル支柱」