概要
鞍。立管に差し込んだサドル支柱に取付けて、ペダルを漕ぐためにすわる座。
基本的には、サドルは坐骨を支持するようになっており、サドルで坐骨の左右の突起を支持する。坐骨を十分支持できる後部幅と股をこすらないための前部細さが必要。
種類
シティ車用、ロードバイク用、マウンテンバイク用及び
トライアスロンサドルなどがある。
サドルのない自転車としては、イリプティカルバイク などがある。
構造
上皮(トップ、カバー)、基盤(ベース、シェル)、上皮と基盤の間に入れる詰物(弾性体)および基盤の下部に付く2本のレールによって構成されている。
シティ車のサドルは、さらにレールと基盤の間にコイルばねが付く。
会陰を圧迫しない意図の下に、中央の長さ方向に溝又はへこみを設けたサドル(カットアウトサドル又はアナトミックサドル)もある。
サドルノーズのないサドル(シート)もある。
形状
サドルの平面的な外径形状は、基盤の形状でほぼ決まる。上皮の横方向の断面形状としては、平坦な形および円弧状等の曲線を持つ形がある。
この形状の違いによって、坐骨の支持の仕方が少し異なる。上り坂に対応するように後部を少し上げた形がある。
サドル幅
各メーカーのロード車用サドルの寸法をグラフの赤点で示す。赤点の横軸はサドル幅そして縦軸はサドル長を示す。
サドル幅の平均は140mmである。女性は赤ちゃんを産むため骨盤が広くなっており、男性より幅広のサドルを必要とする。女性用のサドルを作っているメーカーもある。長距離のサイクリングおよび旅行などには、幅の狭いサドルは好ましくない。
幅の狭いサドルはサドル痛の原因となることがある。
また、坐骨の間の会陰(えいん)でも支持することとなり好ましくない。
長さは同じで幅が120~150mmの4種の異なるサイズを用意しているメーカーがある。
サドル幅と血流
20人の男性に細幅と広幅のサドルで5分間40rpmでペダルを漕いでもらい会陰の血流を測定したデータによれば、広幅サドルの血流の減少は約6%であったのに対し、細幅サドルの血流の減少は約60%であった。
これは細幅サドルの問題点の一つである。
シティ車のようなより幅広のサドルは坐骨突起の左右の筋肉も支持するので快適であるが、その筋肉はペダルの駆動にも使われる筋肉でもあり、血流を阻害するので競技用には向かない。
サドル長さ
JIS D9431(自転車-サドル)は、サドル長さは350mmを超えてはならないとしている。UCI規則は、サドル長さは最小240mmそして最大300mmとしている。
各メーカーのサドル長の平均は270mmである。サドル長が大きいとサドルレール長も大きく、サドルの前後位置の調整範囲が広がる傾向にある。
レール寸法
サドルレール寸法を記載しているメーカーは少ない。その限られたデータを右図に示す。レールの直線部の長さは45~90mmである。レールに目盛を付けているメーカーもある。
レールの直径は6.5~8mm。断面形状を8mmx7mm及び9mmx7mmの楕円としているものもある。
調整範囲
サドルのサドル支柱に対する前後の調節範囲 a は、レールの直線部長さ l およびサドル支柱のクランプ幅 w で決まり、次式で求められる。
a = l - w |
レールとサドルクランプの組合せによっては、調整範囲が10mm以下となるものもある。なお、式の記号 l は英文字のエル。
上皮材質
サドル座面(上皮)の材質は、ナイロンなどの合成樹脂、革、合成皮革および炭素繊維強化樹脂など。
滑りを少なくした特殊な合成皮革を使ったものもある。
革サドルは汗をかかず、かつ着衣との摩擦係数が小さい。
詰物材質
詰物(弾性体)の材質は、発砲ウレタンまたは高分子ジェルなど。
基盤材質
基盤の材質は、硬質合成樹脂または炭素繊維強化樹脂など。
レール材質
レールの材質は、炭素鋼、クロモリ鋼、チタン合金および炭素繊維強化樹脂(俗に言うカーボン)など。軽量化のために管(中空棒)を使っているものもある。
色
各種の色に着色したカラーサドルがある。
ボトルケージ
サドル後部にボトルケージ用の取付具を設けた形がある(右図)。
工場
右端図はSelle Italiaのサドル組立工場の一部。
その下の図はfi'zi:kの切断機。
質量
サドル質量を右グラフの赤点(ロードバイク用)および黒点(マウンテンバイク用)で示す。ロードバイク用のサドルの質量は、座がCFRPのものは約100g、パッドなしの細幅のものは約160g、パッド入りの細幅のものは約200gそしてパッド入りの広幅のものは約280gとなっている。
サドル幅を狭くし、かつ詰物を減らすことによって軽くすることができるが、
快適さが失われサドル痛および血流の低下などの問題が生じることがあるので、幅の狭いサドルは競技用以外の用途には向かない。
リコール
Trek Bicycleは2011年に販売した約27,000台のFX型自転車のサドルクランプボルトが破損することがあるとしてリコールした。
サドルカバー
サドルにクッション性を与えるため、または日光、雨およびほこりを防ぐためにサドルに被せるカバーとして、
サドルカバーがある。
この形状の違いによって、坐骨の支持の仕方が少し異なる。
シャミークリーム
長距離走行のペダル漕ぎによってお尻と着衣の間で擦られないように又はサドル痛を起こさないように、
潤滑剤としてショーツなどがサドルと接触する部分の内側又はお尻に塗るシャミークリーム。
チューブ入り、容器入り及びスティックがある。
本来は薄い皮(シャミー)を柔らかくするために塗るクリームのこと。
バッグ
サドルに付けるバッグとして、サドルバッグ がある。予備品及び工具等を入れる。
メーカー
24 bicycles 、Acumen(Vetta) 、Ambrosio 、Arte selle 、Avocet 、AX-Lightness 、BBB 、BikeHard 、Bicycle Seat 、Bontrager Wheelworks & Components 、Brooks 、
Bycycle 、Charge Bikes 、Chromag Bikes 、Cinelli 、Cionlli Industrial 、Clif Bar & Company 、Cobb Cycling 、Kontact Bicycle Components 、Control Tech 、Corima 、Crankbrothers 、Da Bomb 、Dash Cycles 、
Deity 、Derri Air 、DMR Bikes 、Enigma Titanium 、Ergo 、Ergon 、FireEye Bikes、
Fyxation 、fi’zi:k 、Flybikes 、Forza 、Fuji 、Funn 、Gass Project 、Hobson Associates 、
Hostettler(ixs) 、Infinity Cycling 、ISM Seat 、Kontact Bicycle Components 、Koobi 、Kore Bicycle Components 、Kuota 、Leaf Cycles 、Louis Garneau 、Luna Sport 、Marwi 、Neuvation Cycling 、New Concepts Development Group 、Nukeproof 、Octane One 、
Planet Bike 、Pro 、
Profile Design 、Pro-Lite 、Prologo 、PZ Racing 、Ragley Bikes 、Raleigh 、Ravx 、RealSeat 、Rido Sport 、Ritchey Design 、Rivet Cycleworks 、Rotor Bike Components 、
Sampson Sports 、Schwinn(Pacific Cycle) 、Scott Sports 、SDG Components 、
Selcof 、Selle Italia 、Selle Royal 、Selle San Marco 、
Selle SMP 、 Serfas 、Sette 、Spank Bike 、Speed Defies Gravity 、Specialized Bicycle Components 、Spongy Wonder 、Sport Manie 、SQ-lab 、Storck Bicycle 、Sunlite 、Syncros 、
Terry Precision Cycling 、The Industries 、Tioga 、Time Ssport 、Titec 、Token Products 、Topeak 、Trigon Bicycles 、UN~ Saddle 、Vavert 、Velo Enterprise 、
Velocite Tech 、Wethepeople bike 、Williams Cycling 、WTB 、Zimbale 、など。
参考資料 「サドル」