概要
前変速機のこと。変速のために、クランクスプロケット間でチェーンを移動させる。
構造
チェーンを移動させるための前ディレイラーケージ およびそのケージをスプロケットに対して平行移動させるための平行四辺形のリンク機構で構成されている。
ケージの形状は、それが必要とするスプロケット歯数のレンジ(キャパシティ)によって異なる。そのため、ロード2段用、ロード3段用およびマウンテンバイク用では形状が異なる。
ロード2段用(キャパシティ15T)はケージ内板は外板に対してやや下がっているが、ロード3段用およびMTB用(キャパシティ23T、22T)はケージ内板が外板よりかなり下がっており、また長さも長い。
チェーン切りをしなくともチェーンを外せるようにケージねじが付いている。リベットで内外のプレートを連結している形はチェーン切りをしないとチェーンが外せない。
動作
ダウンシフトのときは外プレートでチェーンを左に押して内側のスプロケットに落とす。アップシフトのときは内プレートでチェーンを右に押して外側のスプロケットへ押付け、そのスプロケットの歯がチェーンを引き上げる。
スプロケット側面のピックアップピンで引き上げる形もある。
種類
ボトムスイングおよびトップスイングの2種類がある。ボトムスイングは従来の方式で、ケージ位置がクランプ位置より低い。
逆に、トップスイングはケージ位置がクランプ位置より高い。なお、ロード用は伝統的なボトムスイングしかない。平行四辺形リンク機構のばねの作動方向によって、高ノーマルおよび低ノーマルがある。
キャパシティ
正常な変速のために、前ディレイラーの公称キャパシティは、クランクスプロケットのキャパシティより大きくなければならない。
チェーンステイ角
チェーンステイが立管となす角度(立管-チェーンステイ角度)を、シマノの前ディレイラーの仕様においては、チェーンステイ角と呼んでいる。
チェーンはチェーンステイに沿って走るため、立管に固定する前ディレイラーのケージとチェーンの位置関係が適切となるチェーンステイ角のディレイラーを選ぶ。
チェーンステイ角はロードバイク用では61°~66°そしてマウンテンバイク用では63°~66°および66°~69°がある。
取付
フレームへの取付方法としては、ロードバイク用にはバンド式および直付け式があり、マウンテンバイク用にはバンド式およびEタイプがある。
直付け式をバンド式に変換するには、
アダプターを使う。バンド径は28.6mm(1-1/8 inch)および31.8mm(1-1/4 inch)の2種類がある。
マウンテンバイク用には、その上に34.9mm(1-3/8 inch)もある。
バンド径は前ディレイラーを取り付ける立管(シート管)の外径に対応する。バンド径が立管径よりも大きいときは、ディレイラーシムを使う。
ロープ張力調整
シフターでチェーンをクランクの大スプロケットおよび後輪最大スプロケットに移す。次に、チェーンを次に大きいクランクスプロケットに移し、内ケージとチェーンのすき間を調べる。最大で約0.5mmのすき間があること。
シフターのケーブルアジャスターを左に回すとケージは内側に動き、右に回すとケージは外側へ動く。
ロー調整
チェーンをクランクスプロケットの最小スプロケットそして後輪スプロケットの最大スプロケットに移した状態で、ロー(L)調整ねじを回して
内プレートとチェーンのすき間を0~0.5mmに設定することにより、チェーンが最小スプロケットから外へ外れないようにする。
トップ調整
チェーンをクランクスプロケットの最大スプロケットそして後輪スプロケットの最小スプロケットに移した状態で、トップ(H)調整ねじを回し
て外プレートとチェーンのすき間を0~0.5mmに設定することにより、チェーンが最大スプロケットから外へ外れないようにする。
保守
スムースに動くように、可動部に注油することが望ましい。周りに付いた潤滑油に粉塵などが付着しないように、拭取る。
メーカー
シマノ 、Acros Sport 、AD-? Engineering、Campagnolo 、Sampson Sports 、SRAM 、SR Suntour 、Sun Race 、Tiso 、など。