ペダルの足位置
足をペダルに載せる位置は、足指の付け根のふくらみ部がペダルの中央(ペダル軸上)に来る位置とする。
このようにすると、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)の力がペダルに伝達されて、ペダルにより大きな力を加えることが出来る。これは次のようにして実感できる。椅子に腰を掛け、足指の根元で床を押してふくらはぎにさわると、筋肉に力が働いているのが分かる。
実地においては、坂道で効果が実感できる。足の中央(土踏まず)でペダルを踏んだ場合と、足指の根元でペダルを踏んだ場合を比較すると、後者の場合が坂をより長距離登ることが出来る。平地においてはより軽くペダルを漕ぐ事ができる。
ペダル行程
ペダル行程について分析することは、ペダルを効率的に漕ぐ助けになるかも知れない。
クランク及びペダルの位置は1回転(360°)に渡って変わるため、ペダルに効率的に力を加える方向も変わる。ペダルの向きにかかわらず、クランクと垂直方向に力を加えるのが理想的。その点に着目して、360°を行程として分割したものをペダル行程(ペダルストローク)と呼ぶ。
最も単純な分割は、行き行程(0°→180°)および戻り行程(180°→360°)の2分割。行きと戻りでは力を加える方向が逆になる。
表1にペダリング効率(後記)および出力を重視したペダル行程の実際的な分割を示す。同表においては、押下げ、後方引き、引上げ及び前方押しの4行程に分割してある。
表2にそれぞれの行程のおよその回転角度、およその動力割合及び使用筋肉を示す。動力割合は一例で、個人差がある。使用筋肉が多いことはより大きな動力を出せることを示している。
(表が見切れる場合は横にスクロールできます)
行程名 | 説明 |
---|---|
押下げ(踏み足) | ペダルを下方へ押す。この動作は踏み足と呼ばれる。厳密には力の向きがクランクに垂直になるよう、行程の前半では前方下方に押し、後半では後方下方に押す。 |
後方引き | 靴底に付いた泥をすり落とす要領で、ペダルを後方に引く。 |
引上げ(引き足) | ペダルを引上げる。この動作は引き足と呼ばれる。厳密には力の向きがクランクと垂直になるよう、行程の前半では後方上方に引き、後半では前方上方に引く。 |
前方押し | 靴底に付いた泥をすり落とす要領でペダルを前方へ押す。 |
これらの4行程の動作は結合ペダルの使用を前提としているが、使わなくとも有効。引上げ行程では積極的に力を加えることは出来ないが、引上げ動作により、他方の足がペダルを押す動力が減少する。後方引きおよび前方押しは靴底とペダルの摩擦力によって十分ではないが可能。
行程名 | クランク角 (時計目盛) | 動力割合[%] | 使用筋肉 |
---|---|---|---|
押下げ | 30°→150°(1時~5時) | 50 | 大殿筋、大腿四頭筋 |
後方引き | 150°→210°(5時~7時) | 10 | 腓腹筋、前脛骨筋 |
引上げ | 210°→330°(7時~11時) | 30 | 大腿二頭筋、腸腰筋 |
前方押し | 330°→ 30°(11時~1時) | 10 | 腸腰筋、大殿筋 |
全行程 | 0°→360° | 100 |
使用筋肉
(図がありません)
ペダル行程における使用筋肉を図に示す。右図の筋肉の色A~Fと左図のクランク角に示す筋肉使用範囲の色が対応している。例えば、大殿筋Aはクランク角0°~105°の間で働いている。ペダル行程360°にわたって筋肉を使うと、効率よく走ることができる。
記号
A : 大殿筋(だいでんきん)
B : 大腿四頭筋
C : 下腿三頭筋
D : 前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
E : 大腿二頭筋
F : 腸腰筋(ちょうようきん)
練習方法
ペダル軸をクランク軸の周りに回すように、一口で言えば、円を描くように回せば良いが、この表現だけで練習するのは難しい。
1つの練習方法は、ペダル最小回転数(最大ギア比)にして、片足だけでペダルを漕ぐこと(片足ペダリングと言う)。他方の足は宙ぶらりんとするか又は単にペダルに乗せておく。
これは時間(低速回転)および部分(片足)に集中した練習方法。他方の足の助けがなくなるので、足の使い方が良く分かる。常用回転数および両足での練習は、意識が分散して難しい。身に付けば、常用回転数で片足毎の練習をする。
具体的には例えば、両足で10~20分ウオームアップをする。その後、3~5分間隔で左右の足を切り替えて練習する。 左右の片足毎の練習で感覚が分かり身に付くと、両足でも同じように漕ぐことができる。トレーナーを使う場合は、他方の足は椅子などに置くのもよい。
ペダリング効率
ペダリング効率は、ペダリングにおいて、筋肉が出した動力のうち、ペダル(クランク)の有効動力となった割合。式で表すと、
ペダリング効率 [%] = 100 x (クランク動力)/(筋肉動力)
ペダリング効率が70~90%であれば、非常に効率の良い部類に入る。上記の練習によってペダリング効率および動力を大きくすることが出来る。
登坂
登坂においては押下げ行程のみに力を入れがちとなるが、全行程(360°)に渡って円滑にペダルを回すことにより、平地走行だけでなく登坂も容易となる。登坂において体が左右に揺れているとすれば、それはペダル回転が円滑でない証。
丘下り
丘下りにおいてペダルを漕がない時は、クランクを進行方向(90°及び270°)に向けると、上下(0°及び180°)に向けるよりも、クランクの空気抵抗は減る。
バイオメカニックス
骨格系に対する外力および内力の作用に関する研究。生態力学及び生物機械学とも言う。
ペダリングに関するバイオメカニックスの研究がある。