動力計 自転車探険!

動力計とは 動力とは 動力計 ひずみゲージ 試験機
動力と心拍数の関係 動力計算器 乗車姿勢 FTP  
 
  動力計とは

  動力計(パワーメーター)は人がペダルによって自転車に与えた動力を表示する計器。
時間および距離と共に変化する動力は計器に記憶されるので、パソコンに取り込んで分析することができる。左右の脚の動力の違いを分析することもできる。
主に、プロの競技者のパワー訓練の道具として使われる。訓練目標値の設定および効果を評価する尺度などとしても使われる。競技で使われることもある。
最初に動力計を使った選手はGreg LeMondであると言われる。
  動力(パワー)と心拍数は相関関係があるが、心拍数は内的条件(体調、睡眠、ケイデンスなど)および外的条件(気温、湿度、坂、風など)の影響を受けるのに対し、
動力計は条件にかかわらず動力を瞬時に正確に表す。心拍計は動力の表示が遅れ、かつ平均化されて表示される。
 
  動力とは

  動力は単位時間にする仕事。式にすると、
動力=仕事/時間
  仕事の単位をNm(ニュートン・メートル)そして時間を s(秒)とすると動力の単位はW(ワット)となる。
W=Nm/s
  ペダルで動力を伝達する場合は、
動力[W]=2π x トルク[Nm] x 回転数[rpm]/60
または、
動力[W]=0.105 x トルク[Nm] x 回転数[rpm]
この式を見ると、ペダルに加える回転力(トルク)が大きく、かつ回転数が大きいと、動力は大きくなる。
  ランス・アームストロングは回転力が大きい上に、回転数を大きくして動力を出している。
 
  動力計

  動力はトルクと回転数の積または力と速度の積であるから、これらをセンサーで検出してハンドルに付けたコンピューター(CPU)に伝送し計算して表示する。
動力そのものの測定はしていない。
 
自転車用動力計の比較 (1/3)
商標 SRM
(Schoberer Rad
Messtechnik)
Power Tap
( Saris Cycling Group )
Ergomo ®
(SG Sensortecknik)
Polar
(Polar Electro)
測定部 クランク 後輪ハブ ボトムブラケット チェーン
力の
測定
クランクのスパイダーアーム部に埋めた歪みゲージで力を測る。
ひずみの大きさは力に比例する。
ひずみゲージの数はAmateurが2箇所そしてProが4箇所。
駆動力による後輪ハブのひずみをハブシェルの円周上4箇所に付けたひずみゲージで測る。
ひずみの大きさは力(トルク)に比例する。
信号はチェーンスティに付けた受信器で受け、電線でハンドルのコンピュータへ送る。
ボトムブラケットにおいて、ペダル力によるクランク軸の捩れを左右の非接触の光学センサーで測る。
捩れ角はトルクに比例する。
捩れ角は最小0.0025°まで測定可能。
チェーンスティに付けたセンサーでチェーンの上下運動の振動数を測定し、次式で張力Fに変換する。
 F = 4f22/m  (脚注1
ここに、
F:チェーン張力
f:チェーン振動数
L:チェーン支点間距離(入力する)
m:チェーン単位長質量(入力する)

動力[W] = チェーン張力[N]
        x  チェーン速度[m/s]
精度 Amateur:±5%
 Pro:±2%
±1.5% ±0.5% ±10%
(50~1,000W)
測定
範囲
0~1,000W 0~1,000W0~2,500W 0~1,000W
伝送 無線 無線(2.4GHz)
有線
有線 無線(2.4GHz)
プロトコール ANT+ ANT+    
電池  寿命は1,600~3,000h      
記事 1986年に最初に世に出した。
クランクの交換が必要。
クランクはシマノ(オクタリンク)
及びカンパニョロと互換。
クランク長は165、170、172.5、175及び180mm。
Dura Aceのクランクに組み込んで軽量化したものもある(外観写真)。
ロード用、マウンテンバイク用及びトラック用がある。
1998年に2番目に世に出た。
チェーンの伝動損失(1~2%)は動力に含まれない。
後輪ハブの交換が必要。
OLDは130及び135mm。スポーク穴数は24、28及び32穴。
シマノのフリーハブボディを使った形もある。
シマノ及びカンパニョーロの32穴ハブと互換。
2001年に世に出た。BBの交換が必要。
クランク軸はISO四角テーパ。
 下の外観はBBの軸方向断面を示している。
ニューイングランドの開発者がPolorに特許を売り、2001年に世に出た。
部品(クランク、後輪ハブ又はBB)の交換が不要。
チェーン速度のセンサーは後ディレイラーのプーリに付ける(写真)。
下欄の測定部外観はチェーンスティに付けたセンサー。
表示部は心拍計及び速度計等と一体となっている。
測定部
外観

振動数センサーはチェーンステイに取付
速度センサーは下プーリに取付
質量 325g  
表示部
外観
価格約28万円(Dura Ace)約13万円約17万円約7万円
  (脚注1:  張力と振動数の関係式)  張力が大きいと振動数も大きいという関係は良く知られており、ギターなどの弦楽器に利用されている。
  弦を強く張る(張力を大きくする)と高い音(振動数が大きい)が出る。
  (脚注2)  測定範囲が大きすぎると、W(ワット)で表した測定精度は悪くなる。
 
自転車用動力計の比較 (2/3)
商標 CatEye
(株式会社
キャットアイ)
Quarq
(Quarq Technology)
iBike
(Velocomp)
Vector
(MetriGear)
測定部 ボトムブラケット クランク 表示部 ペダル
力の
測定
クランク軸に埋め込んだ磁歪(じわい)センサーで力を測定する。 現在使っているクランクの5腕スパイダーを10個の歪みゲージを埋め込んだスパイダーアーム(下図)と交換し、力を測る。
測定データは無線でハンドルのコンピュータ(言語はLinux)へ送る。
スパイダーに電池が必要。
初期入力データ並びに速度、加速度、道路勾配および風速の測定値を使って搭載のコンピュータで計算する。
初期入力としては、人体および自転車の質量並びにタイヤ周長がある。
CdA及び転がり抵抗の初期入力のために、規定速度Aからペダルを漕がずに規定速度Bまで自走する距離を入力する。
4個のひずみゲージをSpeedplay社の左右の中空ペダル軸に差込んでペダル軸の変位を測る。

精度 ±4%  ±2%  不明 ±1.5%
測定
範囲
0~9,999W
 (脚注2
  不明 不明
伝送 有線 無線
(2.4GHz)
無線 無線
プロトコール   ANT+ ANT+ ANT+
電池   CR2032、寿命は約300h。    
記事 BBはカンパニョロ社用のJISサイズとイタリアンサイズがある。
シマノのBBとは互換性がない。
SRMの特許が2007年に切れたので、それを応用したもの。
スパイダーが独立の既存の複数社のクランクセットに付けられるように設計されている。
スパイダーとクランクが一体の型には使えない。
2011年にSRAMに買収された。
乗車姿勢及び服装が変わっても、初期入力したCdAに基づく動力が表示される。
路面の状態及びタイヤ空気圧が変わっても、初期入力した転がり抵抗に基づく動力が表示される。
左右のペダルに加えられた力およびその方向を測定する。
ペダルを交換することにより、複数の自転車に使うことができる。
測定部
外観
表示部と同じ
ペダル中空軸に差込むセンサーおよび電気回路。
質量        
表示部
外観

Garmin社の
GPSコンピュータ
価格生産中止約17万円約8万円約15万円

 
自転車用動力計の比較 (3/3)
商標 Look
(Look Cycle)
StageONE
(Stages Cycling)
Pioneer
(パイオニア株式会社)
測定部 ペダル クランク クランク
力の
測定
左右のペダル軸にそれぞれ差込んだ8個のひずみゲージで左右のペダル軸の変位を独立に測る。

左クランク内側にひずみゲージを付ける。
センサー及び外気の温度を測り温度補正をする。
左右のクランク内側にそれぞれ2個直角に付けたひずみゲージで左右の力を独立に測定する。
クランク回転角30°毎に測定する。
どの角度で力が弱いか分かる。
精度 ±2%  ±2% ±2%
測定
範囲
  0~1,999W 不明
伝送 伝送器はPolar社製。
クランク取付。
無線 (2.4GHz)
無線 無線
伝送器は左スパイダー間に取り付け。
プロトコール WIND
(Polar)
ANT+及び
Bluetooth
ANT+
電池   CR2032、寿命は約200h。 CR2032、寿命は約200h。
記事 ほとんどのメーカーのクランクに取付できる。
左右の動力を独立に測る。
2011年発売予定であったが、2012年に発売。
2013年発売。
シマノなどのアルミ合金性で幅広のクランクに取付できる。
カーボンクランクには使えない。
左クランクを測り2倍する。
厚さ約10mm。
2013年発売。
シマノのデュラエースのクランクに取付る。
左右のクランクを独立に測る。
測定部
外観
質量   20g 70g
表示部
外観

Polar社の上位の
サイクルコンピュータ
一般のサイクルコンピュータ表示部
及びi Phone

パイオニア製のサイクルコンピュータに表示。
価格約19万円約9万円約22万円(クランク含まず)
 
  ひずみゲージ

  ひずみを測定するセンサー。
測定する部品に貼り付けるなどして部品が力で微小な変形をすると、ゲージも同じように変形して電気抵抗などが変るので、それを測ってひずみに換算する。
自転車の動力計のひずみゲージの大きさは4mm x 2mm程度。
   
  試験機

  右図はSRMの試験機。
チェーンホイールに掛けたチェーンに所定の質量の重りを吊るしている。















  動力と心拍数の関係

    図2 心拍数 %-動力 %
      図1 心拍数 bpm-動力 W
  動力と心拍数の関係の一例を図1のグラフに示す。
動力と心拍数は直線的に比例している。縦軸の単位のbpmは毎分鼓動数。
動力は零から始まるが、心拍数は安静心拍数から始まる。
安静心拍数、動力増に対する心拍数増(グラフの直線の傾き)および最大心拍数は個人差があるので、グラフの直線の上下位置及び傾きは人によって変わる。 動力と心拍数の関係に影響する要因は、性別、年齢、体重及び訓練の程度など。
  図1の単位を%に換算したグラフを図2に示す。このグラフは心拍数の%は動力の%とは同一でない事を例示するためのもの。
例えば、心拍数の70%は動力の70%ではなく59%であることを示している。 この%の関係は図1のグラフが変われば変わるが傾向は同じである。心拍数80%で走ることは、動力80%で走ることと同じではないことに注意する。
 
  動力計算器

  心拍数などから動力を計算する計算器です。心拍数は心拍計で測定する。
ペダルを漕いだ動力によって増大する心拍数は、その人の性別及び年齢などに応じて異なる。この計算器は計測した心拍数などから動力を逆算する。

動力 計算器
男性   女性 
 心拍数    bpm 
 体重   kg 
 年齢   才 
 動力    W
  

  性別を選定後、心拍数、体重および年齢を半角数字で入れて、[計算]を押して下さい
     およその動力が出ます。
    性別を選定するには、性別の前に付いている丸印の中央を押す。

[ 計算例 ]
  30才、体重65kgの男性がサイクリングに出て、心拍数が140bpm(毎分鼓動数)の時
     動力は215Wである。
 
  乗車姿勢

  ハンドル高さ、サドル高さ及びサドル位置などを変えることにより、乗車姿勢を変えて所定距離を競技ペースで走り動力を比較する。
 
  FTP

  この用語を作ったDr. Andrew Cogganは、次のように定義している。「ライダーが1時間の間、疲労せずに作り出すことのできるベストな平均動力」
青年の男性に関しては、初心者はFTP=200~230W、中級者はFTP=280~350Wそして上級者はFTP=400W~。
20分間最速で走ったときの平均動力の95%は、FTPの近似値となる。