アーム比
レバーとキャリパーのアーム比の適合
アーム比計算器
アーム比
アーム比
アーム比(メカニカル アドバンテッジ)によってブレーキシュー(パッド)の移動距離が変わる。一例として、下図のVブレーキのキャリパーに関し次のように記号を定義する。他の形式のブレーキのレバーおよびキャリパーに関しても同様に定義できる。
a: 支点とロープの距離
b: 支点とシューの距離
Pa: ロープが引く力
Pb: シューが押す力
Da: ロープの移動距離
Db: シューの移動距離
これらの数値の間には次の関係がある。力Pと距離Dの積は仕事であり、ロープの仕事とシューの仕事は等しいから次式(1)が成り立つ。
Pa x Da = Pb x Db ... (1)
直角三角形の幾何学から、a と b の比は Da と Db の比に等しい。a と b の比 a/b はアーム比またはメカニカル アドバンテッジと呼ばれる。
アーム比 = a/b = Da/Db ... (2)
シュー移動距離
アーム比 a/b が決まれば、ロープとシューの移動距離の比 Da/Db も決まる。
例えば、アーム比 a/b = 4 なら、式(1)より Da/Db = 4 または変形して Da = 4 x Db となる。すなわち、ロープはシューのアーム比倍(この例では4倍)の距離を動く。 距離Dbは、パッド隙間(右図)に対応する。
極端な例として、パッド隙間を4mmに設定したとすると、ロープは 4mm x 4倍 = 16mm 引く必要がある。ブレーキレバーのアーム比が2倍であるとすると、ブレーキレバーは 16mm x 2倍 = 32mm 引く必要がある。パッド隙間をVブレーキ標準の 1mm とすれば、1mm x 4倍 x 2倍(左右) = 8mm 引けばよい。これが、アーム比の大きいVブレーキはパッド隙間を 1mm のような小さい値にしなければならない理由である。
シューが押す力
機械利得(メカニカル アドバンテッジ)を求めるために、式(1)を変形すると、
Pb/Pa = Da/Db ... (3)
式(2)の関係を式(3)に代入すると、
Pb/Pa = a/b ... (4)
式(4)の力の比 Pb/Pa はアーム比、メカニカル アドバンティッジ(機械利得)またはてこ比(レバレッジ)と呼ばれる。Vブレーキのアーム比が4とすれば、ロープを引く力の4倍の力をパッドに与えることができる。これが、Vブレーキの利きが良い理由である。 パッド隙間を小さくするという犠牲を払って、利きを良くしている。
ブレーキレバーとブレーキの適合
ブレーキレバーとブレーキアームはロープでつながっているために、レバーがロープを引く距離は、ロープがブレーキのアームを引く距離に等しい。ブレーキレバーおよびブレーキにおいてロープの動く距離はアーム比で決まるから、レバーおよびブレーキのアーム比は釣り合っていなければならない。 ブレーキのアーム比(距離比でもある)はブレーキの種類によって決まるから、それに適合するアーム比のレバーを必要とする。
アーム比の大きいレバーはロープの動きが小さく、アーム比の大きいブレーキはロープの動きが大きいので、アーム比の大きいレバーとアーム比の大きいブレーキを組み合わせることはできない。 一般のドロップハンドルのレバーはアーム比が大きいので、アーム比の大きいVブレーキには使えない。
ドロップハンドルのレバーでVブレーキが使えるようにする方法は次の通り。
(1) トラベルエージェントを使い、引き距離を大きくする(STIが使える)。
(2) アーム比の大きくない(引き距離の大きい)ブレーキレバー(例えば、ダイヤコンペ287V)を使い、シフターはバーエンドシフターを使う。
(3) アーム比の大きくないミニVブレーキを使う(STIが使える)。ただし、アーム比が大きくないから、制動力は低下する。
アーム比計算器
ブレーキのレバーおよびキャリパーのアーム比を使って、ブレーキシステムの総合アーム比を求める計算器を次に示す。
ブレーキのレバーおよびキャリパーのアーム比を半角数字で入れて、[計算]を押して下さい。ブレーキシステムの総合アーム比が計算てきます。
- 計算例
- Vブレーキにおいてレバーのアーム比=2.2そしてキャリパーのアーム比=3.8のとき、総合アーム比は8.4である。すなわち、レバーを引いた力の8.4倍の力でブレーキパッドがリムを押す。レバーを引く力の大きさが250Nなら、8.4x250N=2,100Nの力でパッドがリムを押す。